糖尿病とメタボの発症を激減させるミネラル
毎日しっかりとっていると、糖尿病(2型)の発症リスクが最大47%、メタボリック症候群の発症リスクが31%減ると最近の研究で判明した、漢字で「鎂」と表す栄養素はなんでしょう。
答えは「マグネシウム」。
必ず食事から摂取しなくてはならない必須・主要ミネラルの一つです。
体内では骨や歯の構成成分になるほか、350種以上の酵素(体内での化学反応を促す物質)の働きを助けるなど、さまざまな役割を担っています。
日本では、総糖尿病患者が300万人を超え、特に70歳以上では男性の4人に1人、女性の6人に1人が糖尿病といわれます。
糖尿病は、マグネシウム不足の戦後の食習慣が引き起こす生活習慣病でもあります。
膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの、分泌と働きの両面で、マグネシウムが大きく関与しているからです。
食後、血液中の糖は、インスリンの働きによって筋肉などの細胞に取り込まれ、エネルギーとして消費されます。
このインスリンの分泌が不足したり、インスリンが分泌されているのに細胞が反応せず、糖を取り込みにくくなったりした状態(インスリン抵抗性と呼ぶ)のアンバランスが糖尿病を引き起こします。
マグネシウムは、膵臓がインスリンを作りだす過程に必須の成分です。
さらに、酵素を活性化し、細胞がブドウ糖を取り込む反応を助けています。
つまり、マグネシウムが不足すると、インスリンの分泌不足とインスリン抵抗性増加の両面で、糖尿病を悪化させてしまうということです。
マグネシウムを1400mg含む青ノリ
糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防・改善には、普段の食事で意識してマグネシウムをとる必要があります。
そこでご紹介したいのが、マグネシウムが豊富な青ノリと黒ゴマを使ったスープです。
青ノリ、黒ゴマ、オクラ、豆腐、ショウガ、コショウは、マグネシウムが豊富な食材の代表格です。
青ノリには1400㎎、黒ゴマには360㎎、オクラには51㎎、木綿豆腐には130㎎、ショウガには27㎎、黒コショウには150㎎(各100g当たり)のマグネシウムが含まれています。
また、マグネシウムは加熱には強いのですが、水に溶けだしやすいという性質があります。
そのため、下ゆでしたり煮汁を捨てたりする調理では、せっかくのマグネシウムが無駄になってしまいがちです。
汁ごと飲むスープであれば、調理によるロスがなく、余さずとれるのもメリットです。
そもそも現代の日本人は、圧倒的にマグネシウム不足です。
マグネシウムの推奨摂取量は1日290㎎(成人女性)~370㎎(成人男性)。
通常の食品からの摂取上限はありません。
それに対し、平均摂取量は7割程度にとどまり、80㎎(女性)~130㎎(男性)ほど不足していると考えられます。
1杯でマグネシウム100mgがとれる!糖尿病を防ぐ!青ノリとゴマのスープ

【作り方】
❶オクラはがくの固い部分を取り除き、3等分に切る。
豆腐は2cm角に切る。
ショウガは太めのせん切りにする。
❷鍋に水、鶏ガラスープの素、ショウガを入れ火にかける。
沸騰したらオクラ、豆腐を入れてひと煮する。

❸青ノリ、すりゴマ、コショウを加え、しょうゆで味を調える。

出来上がり!
このスープ1杯でほぼマグネシウム不足が解消
糖尿病の発症とマグネシウムの摂取量に深い関係があるという証拠は、近年、さまざまな研究報告によって続々と積み重ねられてきています。
マグネシウムの摂取量が増加すると糖尿病の発症リスクが、37%低下(福岡県久山町住民1999人を対象にした16年間の追跡調査)、最大47%低下(海外の研究)女性の糖尿病発症リスクが50%低下(岐阜県の高山市住民13525人を対象にした10年間の調査)、など、多数の調査結果が出ています。
また、マグネシウムの摂取量が1日当たり100㎎増えるごとに、糖尿病のリスクが14%、メタボリック症候群のリスクが17%低下するという臨床疫学研究も発表されています。
青ノリとゴマのスープ1杯で、100㎎以上のマグネシウムがとれますから、マグネシウムの不足分をほぼ補うことができます。
糖尿病の予防と改善に、ぜひこのスープを役立ててください。


横田邦信
1978年、東京慈恵会医科大学卒業。1984年、同大学大学院卒業、医学博士。2017年、東京慈恵会医科大学教授を退任後、現職。『マグネシウム健康読本』(現代書林)、『糖尿病ならすぐに「これ」を食べなさい!』『糖尿病ならすぐに「これ」を食べなさい!レシピ』(ともに主婦の友社)など著書多数。
【材料】(2人分)
オクラ……8本
木綿豆腐……100g
ショウガ……1/2かけ(約10g)
水……400ml
鶏ガラスープの素(顆粒)……小さじ1/2
青ノリ……小さじ2
すり黒ゴマ……大さじ1
コショウ……少々
濃口しょうゆ……小さじ1/2