熱中症はいつ起こりやすいのでしょうか?
大澤:
気温が高くなる7月8月の日中に最も多く見られます。
最高気温が30度以上の真夏日や猛暑日(35度以上)になると、とたんに救急搬送患者数が増加します。
また、熱帯夜が続くようなときには、夜間でも多くなります。
注意したいのが、梅雨の時期です。
5月6月にも気温が上がる日が多く、蒸し暑い日があります。通常は汗が気化するときに体温が下がりますが、湿度が高くなると皮膚の表面上の水分が気化しにくくなり、体温調整がうまくできなくなります。
風がないときも同様です。
また、本格的な夏に入る前の時期はまだ、体が暑さに慣れてないため、急に温度が上がると、体温調節が上手くできないので熱中症になってしまうことがあります。

熱中症はどんな人に起こりやすいのですか?
大澤:
平成29年の総務省の発表では、6月から9月まで全国における熱中症の救急搬送数は約5万3000人とされています。
炎天下で活動するような屋外労働者や、スポーツをする人は熱中症を起こしやすいということはご存知の方も多いと思いますが、実は、熱中症は、体温調節機能が未熟な乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。
なかでも高齢者は重症化する場合が多く、発症率は年々増加しています。
高齢者が熱中症を引き起こしやすい理由をいくつか挙げてみましょう。
①体内の水分量が少ない
筋肉量が減少しているので、体内の水分量が若い年代より少なくなっています。
②体の熱を放出しにくい、汗をかきにくい
動脈硬化が進んでいることや自律神経の低下により、汗をかきにくく、体にこもった熱を放出しにくくなります。
③暑さや喉の渇きを感じにくい
感覚神経や運動神経の低下により、水分補給や避暑行動をとるのが遅くなってしまいます。
他にも、トイレの回数を減らすため水分摂取量を控えたり、エアコンを嫌うといった高齢者に見られる傾向も熱中症を引き起こす要因になっています。
他に、熱中症のリスクが高い人はどのような人ですか?

大澤:
服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。
たとえば、以下のような方も注意が必要です。
・服薬をしている方
自律神経の働きに影響を与える薬(抗てんかん薬、抗うつ薬、睡眠薬など)には体温調節や、発汗を抑制する作用があります。それによって熱が体にこもりやすくなってしまいます。
・持病のある方
高血圧・腎不全などで塩分制限をしていると、脱水などを起こしやすくなります。
また、前日のアルコールの摂取や、下痢や睡眠不足などの体調不良も、熱中症リスクを高めてしまいます。
熱中症はどんな場所で起こりますか

大澤:
工事現場や運動場、公園など暑い屋外での作業やスポーツ中に起こるイメージをお持ちでないでしょうか。
熱中症は、
①気温が高く、湿度が高いところ
②風が弱い・日差しが強い
で起こることが多く、炎天下の屋外だけでなく、屋内でも熱中症は起こります。
救急搬送の割合から見ると、屋内での発症が30パーセントを占めています。
実は家の中でじっとしていても、体内からは1日1,000ccの水分が失われており、さらに高温多湿になるお風呂場やトイレ、直射日光が当たる高層マンションの最上階などでは熱中症を引き起こす条件がそろっているので注意しましょう。
大澤直人
2011年高知大学医学部卒業。
高知大学医学部附属病院老年病・循環器内科医師。
PADIスキューバダイビングインストラクター。
高知スクーバ・ダイビング安全対策協議会理事。