解説者のプロフィール

平柳要(ひらやなぎ・かなめ)
●食品医学研究所
http://h-and-w.jp/
食品医学研究所所長。
東京大学大学院医学研究科修了。
ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学客員研究員、日本大学医学部准教授などを経て、食品医学研究所を設立。
科学的根拠に基づいた健康食品の研究、開発に携わる。
干しブドウと酢、それぞれの効能

いろいろな果物で作られるドライフルーツですが、なかでも手軽に食べられるのが干しブドウでしょう。
それを酢に漬けた「干しブドウ酢」は、ほどよい酸味が加わっておいしくなるうえ、さまざまな健康効果が期待できます。
まずは、干しブドウと酢、それぞれの主な健康効果を挙げてみましょう。
「干しブドウ」は糖尿病や高血圧改善に効果

干しブドウは、強い抗酸化作用(有害な活性酸素を消去する作用)を持つアントシアニンやレスベラトロールといったポリフェノールを豊富に含んでいます。
ポリフェノールは、血糖値の急な上昇を抑えたり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの「効き」をよくしたりする作用があります。
干しブドウの作用を調べた研究論文では、「干しブドウは、2型糖尿病(糖尿病の大部分を占めるタイプ)の人の血糖値を下げる。また、食後の血糖値を上げにくくする」と報告されており、糖尿病の改善や予防に効果があるということです。
干しブドウには濃厚な甘味があるので、「糖尿病にはよくないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、干しブドウには、その名前に反して、ブドウ糖はあまり含まれず、代わりに果糖が含まれています。
果糖は、ブドウ糖のように直接的に血糖値を上げないので、糖尿病の人でも比較的安心してとれます。
1日に干しブドウを10〜20粒とる程度なら問題ないでしょう。
また、干しブドウが血圧の改善効果をもたらすという研究結果もあります。
これは、血圧を下げる成分であるカリウムが、干しブドウに豊富に含まれているからです。
このほか、干しブドウには、便秘解消に役立つ食物繊維や、貧血の対策に有効な鉄分なども多く含まれています。
インスリンの効きをよくする「酢」の効果
一方、酢にも多彩な健康効果があります。
その中には、干しブドウと同じく、食後の血糖値の上昇を抑える効果や、インスリンの「効き」をよくする作用が含まれます。
2015年のギリシャ国立研究センターの研究論文では、2型糖尿病の人の筋肉細胞に対するインスリンの作用が改善され、ブドウ糖の取り込み方が上昇したと報告されています。
そもそも血糖値が高くなるのは、筋肉などの細胞の中にブドウ糖がうまく取り込めないからですが、酢はその取り込みをよくしてくれるのです。
また、2010年にミツカングループによって、酢には「血流をよくする作用がある」という論文が発表されました。
酢をとると、血管の内皮細胞から出ているNO(一酸化窒素)が増えます。
NOは血管の拡張作用を持つので、血流が促される効果があり、血流がよくなれば、高血圧の改善が期待できます。
この点も干しブドウと酢で共通しており、実際「干しブドウ酢を常食して高血圧が改善された」という声が多いようです。
これは、干しブドウと酢の相乗効果によるものでしょう。
便秘解消や疲労回復に優れた効果をもたらす「干しブドウ酢」
干しブドウ酢で、便秘が解消できたという声も非常に多く聞かれますが、これは干しブドウに豊富に含まれる食物繊維が便通をよくし、さらにポリフェノールと、酢の作用もかかわっていると思われます。
干しブドウのポリフェノールは、腸の中で酸を発生させます。
また、酢の主成分である酢酸も酸性なので、腸内のpH(酸・アルカリ度)は酸性寄りになります。
腸の中が酸性寄りになると、ビフィズス菌などの善玉菌がすみやすい環境となるのです。
干しブドウと酢が合わされば、豊富な食物繊維を含むうえ、腸内環境も酸性となり、整腸作用が活発化して、便秘の解消に大きな効果を発揮するというわけです。
また、酢はクエン酸の作用によって、優れた疲労回復効果をもたらします。
一方、干しブドウにも、速やかにエネルギー源になる果糖が多く含まれるので、干しブドウ酢をとることにより、素早い疲労回復をもたらしてくれるでしょう。
中性脂肪値の高い人は1日10粒が目安
さまざまな健康効果を持つ干しブドウ酢ですが、注意点もあります。
干しブドウには果糖が多いので、とりすぎると中性脂肪値を上げる危険性があります。
酢には中性脂肪値を下げる働きがあって中和されますが、そうはいっても中性脂肪値の高い人は干しブドウ酢をとりすぎないように、1日10粒程度にとどめるとよいでしょう。
「干しブドウ酢」の作り方は次の記事をご参照ください。