ブドウは目と関係の深い肝の働きを強化する
私は以前から、目の症状を訴えるかたがたに
「干しブドウ酒」を勧めてきました。
実際に、干しブドウ酒を試したかたがたからは、
「目が疲れにくくなった」
「目の痛みが取れた」
「見えやすくなった」
「かすみ目が改善した」など、
さまざまな声をいただいています。
私自身も、目が疲れたときは、
干しブドウ酒を飲んで、目をいたわっています。
干しブドウが目によいのは、
栄養学的にいえば、ブドウのビタミンやミネラルが目に補給されるからでしょう。
しかし漢方では、まったく違う見方をします。
漢方では、
人体を五臓(肝、心、脾、肺、腎)と
六腑(胆嚢、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)に分けて考えます。
その中で、目は特に肝と関係が深いとされ、
肝の気(生命エネルギー)がスムーズに流れていれば、
目の機能もよく働くと考えられています。
ブドウは、中国の書物には、「腎液を滋養し、肝の陰を益す」とあります。
これは、簡単に言えば、
腎のエネルギーを養うことによって、
肝の気の流れをスムーズにする、ということです。
腎と肝は兄弟のような関係で、
ロウソクに例えると、炎が肝、ロウが腎です。
ブドウには腎を強化して、
肝の働きを高める作用があるのです。
有効成分が溶け出した干しブドウ酒
干しブドウは、ブドウを天日に干すことで薬効が凝縮され、
有効成分が酒に溶け出しやすくなっています。
ですから、干しブドウをお酒に漬ける干しブドウ酒は、
非常に効率的に、ブドウの薬効を体内に巡らすことができるのです。
干しブドウ酒は、
アルコール度数35度の焼酎(ホワイトリカー)に干しブドウを漬けて作り、
10倍のぬるま湯で割って飲みます。
とても飲み口がよくおいしいですが、
お酒ですから飲めない人もいるでしょう。
またいつでも飲めるわけではなく、
朝や運転前などは飲めません。
そんなときにお勧めなのが、「干しブドウ酢」です。
干しブドウ酒の作り方
【用意するもの】
・干しブドウ……100g
・アルコール度数35度の焼酎(ホワイトリカー)……1L
・熱に強い広口瓶(梅酒などを作る容器)……1つ
・広口瓶が入る大きめの鍋……1つ

②①に焼酎を注ぐ。

③②の瓶ごと鍋に入れ、水をはる。
瓶のフタは開けたままにする。

④鍋の水が沸騰するまで火にかける。
沸騰したら、火を消してそのまま1~2時間置く。

⑤瓶を鍋から取り出し、ふたを閉める。
冷暗所で一晩寝かせたら出来上がり。
【飲み方】
干しブドウ酒10~20mlを、10倍のぬるま湯(100~200ml)で割って飲む。
1日1~2回、夕食前や就寝前に飲むのがよい。
【保存のしかた】
冷暗所に保存し、干しブドウと焼酎がよく混ざるように、1日1回瓶を揺らす。
水などが入らないように注意して、3ヵ月程度で飲みきるようにする。
夏を越さないようにする。
1ヵ月ほど保存すると、干しブドウの表面のぬめりが溶け出し、カスのようになり、干しブドウ酒の上に浮いたり、容器の底にたまったりすることがある。
体に悪いものではないが、コーヒー用の紙フィルターや、2~3枚重ねたガーゼでこし、別の容器に移すと飲みやすい。
こした後に残った干しブドウは、冷蔵庫で保管し、少しずつ食べてもよい。
「干しブドウ酢」も目の機能を高める
干しブドウ酒は、とても飲み口がよくおいしいですが、
お酒ですから飲めない人もいるでしょう。
またいつでも飲めるわけではなく、
朝や運転前などは飲めません。
そんなときにお勧めなのが、「干しブドウ酢」です。
干しブドウ酢は、干しブドウをリンゴ酢とハチミツに漬けて作ります。
これも干しブドウ酒と同様、
干しブドウの持つ薬効が、肝と腎を元気にして、目の機能を高めてくれます。
酢とハチミツ、ブドウは最高の組み合わせ
これに、酢やハチミツの効能が加わります。
酢は、ご存じのように疲労物質を分解して、
疲れを取る作用があります。
これは、酢が体内に入ってクエン酸サイクル(体内でエネルギーを生み出す回路)を回し、
疲労物質の乳酸や体脂肪などを分解し、エネルギーに変えるからです。
したがって、酢をとると、疲れが取れるだけでなく、
体脂肪の燃焼効果や、血液サラサラ効果も期待できます。
また、ハチミツには、異なるものを調和させる作用があります。
たとえば干しブドウは、
漢方では肝の血を補う作用があり、
補(足りないものを補ったり、合成したりする作用)の性質を持っています。
一方、酢は、瀉(不要なものを外に出したり、分解したりする作用)の性質を持っています。
この、正反対の性質を持つ
二つの食品を調和させるのが、ハチミツです。
干しブドウと酢は、ハチミツがあるから一つにまとまり、
バランスが取れるのです。
この三つの組み合わせは、非常に優れていると言えるでしょう。
「干しブドウ酒」と「干しブドウ酢」を使い分けるとよい
干しブドウ酒と干しブドウ酢は、
目に対しては同じような効果を持ちますが、酒と酢で、若干の違いがあります。
酒には補の性質があり、
足りないものを補う作用が主となります。
ですから、同じ疲れを取る作用でも、
体をゆるめて血流をよくし、ぐっすり眠ることで疲れを回復させます。
それに対して酢は、分解作用によって、疲労を回復させます。
こうした性質の違いを見極めて、
干しブドウ酒と干しブドウ酢を使い分けてもいいでしょう。
朝や日中は体を元気にする干しブドウ酢を食べ、
夜は体をゆるめる干しブドウ酒を飲む。
そうすると、両方のよさを取り入れることができます。

干しブドウ酢は「太り気味で疲れが取れにくく、眼精疲労がある」人にお勧め
私が干しブドウ酢をお勧めしたいと思うのは、
太り気味で疲れが取れにくく、眼精疲労のある人です。
干しブドウ酢は酢の分解作用によって、
ダイエット効果も期待できるのです。
さらに、太りぎみの男性不妊のかたにもいいと思います。
男性の場合、食べすぎや運動不足で肥満ぎみだと、
精子の運動効率が悪くなり、不妊の原因になることがありますが、
干しブドウ酢には、生殖機能をつかさどる腎を元気にする作用があります。
ただし、干しブドウ酢は酢に漬けてあるので、
胃の弱い人、胃潰瘍、逆流性食道炎、胃酸過多傾向の人は、
酢の量を少なめにして作るか、食後に食べるようにしてください。
また、甘味が強いので、糖尿病の人は食べすぎに注意してください。
干しブドウ酒も干しブドウ酢も、
続けることで効果が上がります。
それぞれの味を楽しみながら、目の養生に役立ててください。
解説者のプロフィール

木暮医院漢方相談室薬剤師
井上正文(いのうえ・まさふみ)
●木暮医院
群馬県前橋市清野町104-1
TEL 027-251-9101
http://www.kogure-iin.com/
①干しブドウを広口瓶に入れる。