解説者のプロフィール

松岡佳余子
1948年、和歌山県生まれ。
アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師。
電気鍼による治療、良導絡の開発者中谷義雄博士(医師)宅の住み込み弟子として、鍼灸修行をスタート。
中国各地の中医薬大学、中医学院にて研修を行う。
鍼灸をさらに発展させた手指鍼で、高い効果を上げる。
さらに、それを応用した「手のひらバンド」を使うダイエットや、「足の裏バンド」を使った熟睡術など、独自の新療法の研究と後進の指導に専念している。
多くの人の尿トラブルが改善
私は鍼灸師で、一般的な鍼灸治療のほかに、手や指にあるツボを鍼などで刺激する「手指鍼」を治療に取り入れています。そうした治療と並行して、一般の人が自宅で手軽にできる、セルフケアの研究にも取り組んでいます。
今回ご紹介する「指切りげんまん療法」も、その一つです。これは、指切りげんまんをするときのように両手の小指をからめて、小指を刺激する健康法です。一般向けの講習会などで指導し、多くの人に試していただいた結果、「前立腺肥大による頻尿が改善しました」(72歳・男性)「高齢出産後の頻尿がよくなりました」(50代・女性)など、排尿トラブルが改善した人が続出したのです。
なぜ、この療法が排尿トラブルの改善に効果的なのか、簡単にご説明しましょう。
手は、いわば「全身の縮図」です。手と指には、14本の経絡(気と呼ばれる一種の生命エネルギーの通り道)が走っており、その流れに沿って、全身の臓器に対応するツボが345個も存在しています。また、手と指の各部分は、それぞれ全身の特定の部位に対応します。
体に不調があると、対応する手指の部分にも異変が現れます。そして、体の悪い箇所に対応する手指の箇所やツボを刺激すると、その刺激が脳に伝わり、病気や不調を改善する方向に働きます。
私たち治療家は、こうした理論に基づいて、診断や治療を行うわけです。
指切りげんまん療法のやり方

泌尿器と小指には深い関連がある
排尿トラブルなど、泌尿器系疾患の診断・治療において、小指は非常に重要です。
泌尿器系の疾患がある人は、小指の付け根の膨らみ部分に縦ジワが現れます。また、小指には、腎臓や泌尿器と深い関係のある経絡が走っており、小指の第1関節や第2関節には、泌尿器系疾患の治療に欠かせないツボがあります。
指切りげんまん療法は、こうした小指の治療ポイントを刺激するので、尿もれや頻尿の改善に効果をもたらすと考えられます。
加えて、小指をからめて強い力で引っ張る動作により、小指の筋肉が全体的に鍛えられて、血流も促されます。私は、この小指の筋力・血流アップ効果も非常に重要だと考えています。
小指は、体でいうと股関節からつま先までの足の部分に対応します。また、小指には、心臓の働きに関係する経絡も走っています。つまり、小指を鍛えることは、全身の血行促進、心肺機能や下半身の筋力の強化も同時に期待できるのです。
小指を立てて残り4本の指で握りこぶしを作ると、物を握る力が弱くなることからわかるとおり、小指は握力を大きく左右します。握力と健康には深い関係があり、最近の研究では、握力が低下すると心臓発作や脳卒中、早期死亡リスクが高まるとの報告も出ています。
指切りげんまん療法は、指の中で最も筋力が弱く、血流も悪い小指のパワーアップができるので、排尿トラブルに悩む人はもちろん、体力の衰えを感じる人にもお勧めです。
両手の小指をからませて刺激するとき、強い痛みがある場合は無理をせず、回数を減らしてください。痛くなければ10回くらいを目安に行います。
指切りげんまん療法は、1日に何回でも、いつでも行って構いませんが、指が疲れない程度にしておきましょう。
治療ポイントを正しく刺激すると、その日のうちに効果が出ますが、小指同士の力の入れ具合や、指を引っ張る方向などによっても変わってくるので、コツがつかめるまで、1週間くらい続けてみてください。