解説者のプロフィール

篠原裕喜
篠原整骨院「ウオーキング療法」主宰
●篠原整骨院「ウオーキング療法」
大阪府大阪市東成区東今里3-20-16
TEL 06-6971-4406
https://shinohara-seikotsu.com/
かかと重心の姿勢が痛みや不調の原因だった
みなさんは、歩くときに「足の指」を意識していますか? おそらく、ほとんどのかたは何も考えずに、漫然と歩いているのではないでしょうか。
しかし、その普段の歩き方が、実は、さまざまな痛みや不調を引き起こす原因になるのです。
私は、数多くの患者さんへの施術を通して、痛みの大半は、普段の歩き方や立ち方が原因で起こっていることに気づきました。
そこで、患者さんに歩き方や立ち方を指導しては、その結果を施術にフィードバックし、足の指を使って歩くウオーキング療法「足指歩き」を完成させました。
この足指歩きをしてもらうと、腰痛やひざ痛などで「痛くて歩けない」と訴えていた人が、その場ですぐに痛みが和らぎ、5分、10分と続けて歩けます。そして、この歩き方を習慣化するうちに、つえが不要になって、慢性化していた痛みも起こらなくなります。
よくなるのは、痛みだけではありません。頭痛、肩こり、冷え症、内臓の不調、生理痛、尿もれ、下半身太りなども改善します。
さらに、巻き爪、外反母趾、ウオノメ、たこ、かかとのひび割れといった足のトラブルも治ります。
なぜなら、こうした問題の根本の原因は「間違った歩き方」にあるからです。
「よい姿勢で歩いてください」と言われたとき、みなさんはどうしますか。「背すじをまっすぐ伸ばして歩く」よう、意識するのではないでしょうか。
実はそこが間違いのもとです。まっすぐに立とうと意識すると、多くの人は必要以上に胸を張ってしまい、上半身が後ろに反り返った姿勢になりやすいからです。
その姿勢のとき、重心はかかと側にかかります。「かかと側に重心がかかりすぎている姿勢」が、体のあちこちに余計な負担をかけて、慢性的な痛みや不調を引き起こす元凶になるのです。
私たちの背骨はもともと、ゆるやかなS字状の曲線を描いています。この本来の曲線を保って立ち、歩くとき、上半身はほんのわずかに前傾し、重心は足のつま先側にかかります。
このことからもわかるように、足の指を使って立つ・歩くのが、正しい人間本来の姿なのです。
また、足の親指の腹には、脳下垂体や松果体(松果腺)など、脳に対応する反射区(全身の臓器や器官に対応する部位)があります。
松果体は、脳に存在する小さな内分泌器で、西洋医学では、メラトニンというホルモンの生産と分泌を行い、睡眠と覚醒のリズムをコントロールする体内時計の役割をしているといわれます。
詳しいしくみは解明されていませんが、脳下垂体と松果体は互いに影響し合い、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)の働きをよくしたり、血圧をコントロールしたりしているとも考えられています。
ですから、足指歩きで足の親指が刺激されることで、脳が活性化すれば、自律神経の乱れが整い、あらゆる不調の改善につながるのです。
「呼吸が浅い」「体温が低い」「低血圧」といった、女性に多くみられる症状も、足指歩きを習慣化するうちに改善していきます。
呼吸が浅い人は呼吸が深くなり、酸素を多く取り込めるようになります。その結果、血流が改善し、体温が上がります。
さらに、低血圧の人は血圧が正常域まで上がり、反対に血圧が高い人は下がって安定します。
常に足の指に意識を向けて歩く
では、足指歩きを実際にやってみましょう。
まずは、正しい立ち方です。直立して、かかとを少し上げてから着地しましょう。このとき、背中やお尻が後ろに逃げないように気をつけます。
重心はかかとではなく、つま先です。足の指先に少し力を入れて、体をほんの少しだけ前方に傾けます。
背すじを伸ばしてまっすぐ立とうとすると、必要以上に胸を張ってしまうので、上半身が後ろに反らないよう注意しましょう。少しだけ前に傾いている状態です。
この姿勢から、足の指に力を入れて、地面を蹴り出すように意識して歩きます。着地はかかとからではなく、足の指→指のつけ根→かかとの順になるように意識します。
うまくできると、足音が小さくなります。ドタドタ足音がするのは、かかとに重心がかかっている証拠。忍者になったつもりで、足音をなるべく立てず、サッサッと歩きましょう。
また、家の中ではスリッパをはかないようにしましょう。悪い歩き方が助長されます。
長い間の癖がなかなか抜けないかもしれませんが、「指先に重心をかける」「足の指に力を入れて地面を蹴る」の2点を意識して歩いてください。普段よりスムーズに歩けるのではないでしょうか。
足指歩きをすると、太ももの内側の筋肉(内転筋)が疲れることがありますが、正しく歩けている証拠です。
内転筋が鍛えられると、バランスのよい姿勢が取れるようになり、関節の痛みが改善します。また、骨盤や股関節のゆがみが整うことで、下半身太りや尿もれの改善にもつながります。
さまざまな症状に効果を発揮する足指歩きを、ぜひ今日から始めてください。
足指歩きのやり方
