解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。
不自然に小さいと要注意!
みなさんは、ご自分の足の小指をじっくりとご覧になったことがありますか?
爪を切るときには見るものの、それほど注意を払っていない人が多いのではないでしょうか。
実は、足の小指の爪は、体のバランスや状態を知る、よいバロメーターになります。
まずは、ご自分の足の小指の爪に、次のような兆候がないかチェックしてみてください。
①爪が小さい
②白っぽい
③分厚い
④ザラザラしている
⑤ほかの指より爪が伸びにくい
足の小指は、ほかの指より小さいので、爪もほかの指より小さいのは当然です。
しかし、ここで言う「爪が小さい」は、本来の伸びやかな爪ではなく、不自然に小さく縮こまっているという意味です。
そういう爪は、たいてい、②〜⑤の症状もあわせ持っています。
そして、①および②〜⑤のいずれかに当てはまる場合は、要注意です。
というのは、いくつかの病気の危険性が高まっていると考えられるからです。
その病気とは、尿もれ、腰痛、女性の場合は骨盤臓器脱などです。
骨盤臓器脱とは、膀胱、子宮、腸の一部などが、腟内や腟の外に落ちてくるものです。
他に、お年寄りの場合は、筋肉が極端に減るサルコペニアや、筋肉が減って心身が虚弱になる、フレイルに陥る危険性も高くなります。
体重が正しく乗らず体幹の筋肉が衰える
ではなぜ、足の小指の爪が小さいと、これらの病気の危険性が増すのでしょうか。
足の小指の爪が小さくなる代表的な理由は、足の外側に重心がかかっていること(外側荷重)です。
いわゆるがに股や、ひざが外を向いたO脚だと、外側荷重になります。
すると、足の小指が絶えず圧迫されるので、爪が小さくなります。
足の爪は、真下から均等に圧がかかったとき、きれいで伸びやかな形状になります。
外側荷重で小指の側面から圧がかかると、爪は伸びにくく、厚くなって小さく縮こまりやすいのです。
外側荷重の人は、当然、歩くときにも小指側に体重が乗ります。
また、小指で靴底を握りしめるようにして歩く傾向もみられます。
これらが、さらに小指の爪を小さくしてしまいます。
外側荷重の人は、背筋・腹筋といった体幹(胴体)の筋肉をバランスよく使うことができません。
そのため、腰痛が起こりやすくなります。
骨盤の下で臓器を支えている骨盤底筋群という筋肉は、体幹の筋肉と連動しているため、これもしっかり使えません。
それで、骨盤臓器脱の危険性が高まるのです。
さらに、尿の出口で尿もれを防いでいる括約筋は骨盤底筋群の一部なので、その働きが悪いと、尿もれも起こしやすくなるのです。
また、体幹部の筋肉がうまく使えないことで、お年寄りの場合はサルコペニアやフレイルになる危険性も高まるのです。
なお、足の小指の爪は、先の細い靴やハイヒールなどを長時間はくことによっても、圧迫されて小さくなります。
この場合も、足の小指がしっかり使えず、筋肉のバランスをくずすので、やはり腰痛や尿もれなどの病気のリスクが高まります。
では、そのリスクに気づいたとき、どうすれば腰痛や尿もれなどの病気の発症や悪化を防げるのでしょうか。
お勧めしたいのが、下の画像でご紹介している足上げトレーニングと、足首回しです。
足上げトレーニングは、足の内ももの筋肉と、体を支える腹筋・背筋を効率よく鍛えることができます。
それによって体の筋肉のバランスが整い、外側荷重を矯正するのに役立ちます。
また、外側荷重の人は、もれなく足首も硬くなっています。
それを解消するのにお勧めなのが、足首回しです。
足の指と手の指を組んだ状態で回すことで、足首だけでなく、足の指や甲の腱などをほぐす効果も得られます。
それに加えて、靴で足に負担をかけないことも大切です。
パンプスなどのつま先の細い靴や、ヒールの高い靴をはく必要があるときは、最低限の時間にとどめましょう。
外側重心を改善する「足上げトレーニング」のやり方

そして、帰宅後は足の指をよく洗い、保湿クリームを塗ってケアをしてください。
このとき、小指の爪の生えぎわをマッサージするようにクリームを塗ると、より効果的です。
これらのトレーニングと足のケアを続けていれば、縮こまっていた足の小指の爪も、徐々に本来の健やかな状態に近づいていきます。
それに伴って、病気のリスクも減っていきますから、ぜひ今日から始めてみてください。
