解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。
病気のサインはすべて足に現れる!
2017年4月1日に放送されたテレビ番組『サタデープラス』(毎日放送・TBS系)で、「足からわかる病のリスク」というコーナーに出演したところ、たいへんな反響がありました。
そのコーナーで私は、「足の小指の爪が小さいと腰痛・尿モレの危険性がある」と指摘しました。
「なぜ足の小指の爪と尿モレが関係あるの?」と思うかたもいるでしょう。
後に解説しますが、これは不思議なことではありません。
足は立つときや歩くときに、体の全体重を支えます。
何年も何十年も支え続けるわけです。
体の不調やゆがみなどによって、どこかをかばった立ち方や歩き方をすると、それが足に蓄積され、異常が現れます。
逆のパターンもあり得ます。
ハイヒールやパンプス、合わない靴などを履き続けると、足に異常が現れ、全身の不調につながっていきます。
足の不調、症状から、現在の体の不調や痛み、将来なる危険性のある病気などが読み取れることがあります。
ここでその例を見てみましょう。
足の症状❶
「足の小指の爪が小さい」と「腰痛・尿モレ」の危険性あり
足の小指の爪が小さいのは、足の異常の1つです。
個人差がありますが、薬指の爪に比べて、小指の爪が半分以下の人は、当てはまります。
生まれつき足の小指の爪が小さい、ということはありません。
長年の蓄積で足の爪に異常が出ているのです。
小指の爪だけが小さくなる要因の1つは、体の外側に荷重をかけて歩いている「外側荷重」が原因です。
体の外側に荷重をかけながら歩く人は、小指で靴底を握りしめながら歩く傾向があります。
これが続くと、爪の先端と根本の肉が発達します。
その結果、爪が圧迫され、小さくなっていきます。
外側荷重のクセがつくと、大腿(太もも)の外側の筋肉は使いますが、大腿を内転させる筋肉を日常であまり使わなくなります。
この筋肉は、上半身と下半身をつなぐ骨盤と連動していますので、骨盤を支えている筋肉がゆるんでしまいます。
これが尿モレにつながっていくわけです。
さらに、このような歩き方をする人は、腰を反らせておなかが前に出る、いわゆる骨盤前傾といわれる姿勢になりやすいため、さらに腹筋が弱くなり、腰に負担がかかります。
これが腰痛を引き起こす要因になっています。
足の症状❷
「ウオノメ、たこがある」と「腰痛・ひざ痛」の危険性あり
女性に多く見られるのは、足裏の前方中心部にできるたこやウオノメです。
外反母趾、足のアーチの低下などにともなって、足裏の前方中心部に過度に地面からの圧力を受けるような歩き方になり、発生しやすくなります。
たこ、ウオノメは足のバランスがくずれて、ゆがみが生じているサインです。
ゆがみを放置すると、ひざ痛や腰痛、肩こりなどの原因になることが考えられます。
足の症状❸
「かかとがガサガサしている」と「肥満・生活習慣病」の危険性あり
ガサガサかかとになる原因にはいくつかありますが、大きな要因の1つに「かかと体重」があります。
文字どおり、かかとに体重がかかり過ぎている状態です。
前述した小指の爪が小さくなる機序と関連しています。
正常な状態では、かかと、親指のつけ根、小指のつけ根の3点を結んだ「足のアーチ」で、全身の体重を無理なく支えます。
しかし、運動不足により足の裏の筋肉や足指の関節が衰えている人、肥満傾向にある人などは、かかとに体重がかかり過ぎになる傾向があります。
すると、かかとの皮膚に極端なストレスがかかり、角質が厚く、固くなります。
運動不足、肥満傾向にある人は、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高くなるわけです。
これらの足のトラブルは、癖のある歩き方や履いている靴などの問題から引き起こされますが、歩き方には足の裏や足指の筋肉が大きく関与しています。
この筋肉が衰えると、ふくらはぎ、太もも、お尻、股関節まわりの筋力の低下にもつながり、将来の寝たきり生活をまねきます。
足裏・足指の筋肉を鍛えて病気のサインを消す「足のもみ方」

むくみや冷えの改善、外反母趾の予防に効果的
今回は、足のトレーニングとケアに有効な「足指ほぐし」と「足首ストレッチ」を紹介します(上の写真参照)。
これらは足の筋力をつけるほかに、むくみや冷えの改善、足の変形や外反母趾の予防、足の腱をほぐすなどの効果もあります。
毎日履く靴もたいせつです。
女性の場合、日常的にパンプスを履いている人が多いと思いますが、パンプスはヒールの高低にかかわらず、歩行には向いていません。
また、ヒールの高い靴、つま先が細い靴も足に負担をかけます。
通勤ではウオーキングシューズを履いて、職場で履き替えるなど、足に気を遣った生活を心がけてください。