解説者のプロフィール

長島寿恵(ながしま・ひさえ)
薬剤師。健康増進コンサルタント。
●健康増進コンサルティング株式会社
TEL 03-6206-4634
http://hisae-style.co.jp/
薬剤師、健康運動指導士。
健康増進コンサルティング株式会社代表講師。
青森県生まれ。東京薬科大学薬学部薬学科卒業。
両親は港町で薬局を営み、整体を学ぶ父より姿勢を重んじる教育を受けて幼少期を過ごす。
大学在学中、エアロビクスのインストラクターとしてTV番組に出演。調剤薬局に18年勤務の後、現職。
「お薬だけに頼らない薬剤師」として、健康をテーマにした講演活動を全国で行い、受講者数は8万人を超える。
自ら作詞・作曲を手がけた『生活習慣病のうた』もリリース。
高血圧対策には「ダイコンおろし」
私は、日常の中で楽しくできる運動や、食事のちょっとした工夫で、さまざまな生活習慣病を予防・改善する方法を考案し、みなさんにお伝えしています。
その中で、高血圧対策としてよくお勧めするのが「大根おろし」です。
大根おろしは、手軽にとれるうえ、さまざまな成分による働きが、血管や血液に作用して、高血圧にもよい影響を及ぼすからです。
その理由を、以下にお話ししましょう。

消化をすみやかにして動脈硬化を予防する
大根の最大の特長は、食物の消化を助ける消化酵素を豊富に含むことです。
最も多いのは、でんぷんの分解を助けるジアスターゼ(アミラーゼ)ですが、たんぱく質の分解酵素や、脂質の分解酵素も含まれています。
酵素は熱に弱いため、消化酵素をとるには、大根は生で食べるほうがよいのです。
また、大根を細かく破砕することで、細胞内の酵素が出るので、大根おろしにすると、酵素をより効率よくとることができます。
消化酵素は、私たちの体内でも作られていますが、食べすぎたりすると、たくさんの消化酵素が使われてしまうことになります。
そんなとき、大根で消化酵素を補えば、食物を効率よく消化でき、消化器官の負担を軽くすることができます。
消化酵素がしっかり働くほど、当然、消化・吸収がスムーズになり、胃が空になる時間が早くなります。
これは、健康を保つために重要です。
善玉ホルモンとして知られるアディポネクチンの分泌や、長寿遺伝子のサーチュイン遺伝子の活性化は、空腹時に促されるからです。
特に、アディポネクチンには、血管を修復して動脈硬化を予防するほか、余分な塩分の排泄を促したり、血管を広げたりして、高すぎる血圧を下げる働きがあります。
大根おろしには、ビタミンCやイソチオシアネートなどの抗酸化物質も豊富です。
これらが、動脈硬化を防いでしなやかな血管を保つとともに、血液をサラサラにしてくれます。
つまり、血管と血液の両面から血流をよくするのです。
このことも高血圧の改善に役立ちます。
漢方の観点から見ても「大根おろし」は高血圧に効果的
一方、漢方の観点から見ても、大根おろしは高血圧に効果的な食品です。
気(生命エネルギー)が上昇し、流れに異常を生じた状態を、漢方では「気逆」といいます。
これによって、高血圧のときの症状である、のぼせ、イライラ、頭痛などが起こることがあります。
大根おろしに含まれるイソチオシアネートは辛味成分ですが、漢方では、辛味は体の熱を発散して、気や血のめぐりをよくするとされます。
それにより、気逆の正常化に役立つので、その意味でも、高血圧の人にお勧めしたい食品です。
高血圧を予防する摂取量の目安

では、高血圧対策として役立てるには、どのように大根おろしをとればよいでしょうか。
食品ですので、とる量に決まりはありませんが、一般には、1回に小鉢1杯程度が目安になるでしょう。
1日1回でもいいですし、好きなかたは2〜3回とってもかまいません。
これはあくまでも目安で、おいしくとれて体調がいいのが、その人に合う量です。
無理のない量とペースで続けてください。
少量のしょうゆをかけて食べるほか、カツオ節、ナメコ、納豆などと混ぜるのもよい方法です。
肉料理や焼き魚に添えて一緒に食べれば、さっぱりして食べやすくなり、消化も促されるので好都合です。
オムレツに大根おろしをのせて、酢じょうゆをかけるのもお勧めです。
丈夫で弾力性に富む血管を保つには、たんぱく質をしっかりとることも大切です。
ですから、こういったたんぱく質の豊富な食事に、大根おろしを添えれば、よりいっそう若々しい血管作りに役立ちます。

「大根おろし」は朝にとると体を冷やしにくい
ひとつ注意したいのが、「大根おろしには体を冷やす作用がある」ということです。
ですから、食べすぎなどで胃に熱を持っている人には、大根おろしはとてもよいのですが、その一方で、胃弱の人や冷え症の人には負担になる場合があります。
大根おろしをそのままとると冷えや胃痛を感じる人は、肉や魚などの温かい料理に乗せたり、少し冷ましたみそ汁に加えたりするとよいでしょう。
また、夜は体を冷やしすぎないほうがいいので、食べるタイミングは、朝や日中がお勧めです。
私は、朝、野菜サラダに大根おろしをかけ、みそと梅干しを添えて食べています。
黒ゴマやゆで卵を添えることもあります。
栄養豊富でおいしいので、ぜひお試しください。
高血圧以外にも、大根おろしは、二日酔い、口内炎、便秘、血糖値の改善、ダイエットのサポート、美肌づくりなどに効果的です。
積極的にとって、健康の維持・増進にお役立てください。