【お悩み】
足の爪が、白く厚くなってきています。
若い頃にきつい靴をはいていたからと思っていたのですが、
先日、一緒に温泉に行った友人から
「それってもしかして、爪の水虫では?」と言われました。
特に痛い、かゆいなどの症状はないのですが、
放置しておくのはよくないでしょうか……。
(60代女性)
放置すると重症化するケースが多々ある
ご相談の症状は、ご指摘どおり、
爪の水虫(爪白癬)と思われます。
爪白癬は、中高年を中心に
日本人の10人に1人はかかるポピュラーな病気です。
単独で生じることもありますが、多くは足の水虫と合併します。
水虫は、白癬菌というカビ(真菌)が原因で起こる感染症です。
白癬菌は皮膚の角層や爪などを作っている
ケラチンというたんぱく質をエサにしています。
足の角質層(皮膚の最も外側の部位)に寄生した白癬菌が、
爪にも寄生して爪白癬が発症します。
初期には爪の色が白や黄色に濁るなど変色が見られ、
進行するにつれて爪が厚くなる、変形する、
もろくなってボロボロ崩れるなどの症状が生じます。
爪の水虫は、痛みやかゆみなどの自覚症状がほとんどありません。
そのため放置して、重症化するケースも多々あります。
爪が分厚くなってくると、靴に当たって痛くなったり、
歩きにくくなったりします。
爪の変形が進み、巻き爪(爪の端が内側に巻いてしまう変形)になると、
爪が皮膚に食い込んで、痛みが出ます。
爪の病気は、爪白癬以外にもあります。
ですから、まずは原因が爪白癬にあるのかどうか、
突きとめることが大切です。
爪の変色や変形、足の皮膚がボロボロむけるなどの症状があったら、
皮膚科で検査を受けましょう。
皮膚科への受診が第一
ご相談者も、そのまま放置せずになるべく早めに皮膚科を受診してください。
顕微鏡で足の皮膚や爪を調べると、
3分ほどで白癬菌に感染しているかどうかがわかります。
治療は、抗真菌薬を用いた薬物療法になります。
抗真菌薬には、飲み薬とぬり薬があります。
完全に治癒する率は、飲み薬(ラミシール、イトリゾール)が5割程度、
ぬり薬(クレナフィン、ルコナック)が2割程度です。
この数字を見るとわかるように、飲み薬のほうが効くのですが、
飲み薬は肝機能障害を起こすことがあるので、
服薬開始後3ヵ月ほどは毎月の血液検査が必要になります。
そのため、定期的に検査に通うのがめんどうな人や、
肝臓への負担を避けたい人、
腎臓の機能が落ちている高齢者などは、ぬり薬が第一選択になります。
一方で、水虫が進行して爪が分厚くなると、
ぬり薬が爪の奥まで浸透せず効果が得にくくなります。
そのようなケースでは、
患者さんの状態や様子を見つつ、飲み薬を使います。
治療には最低でも半年、途中で治療をやめないことが大事
爪が伸びて完全に生え変わるまでには、6ヵ月を要します。
そのため、薬物療法は、
最低でも半年ほど続ける必要があります。
水虫の薬物治療全般にいえることですが、
症状が一見よくなったように見えても、自己判断で薬をやめると再発します。
薬をやめる時期は、医師の指示に従いましょう。
爪白癬は治療には時間がかかります。
先にお話ししたように、
足白癬があって爪白癬に移行することが大半ですから、
足が水虫になったら速やかに治療に取り組み、
爪白癬に移行させないことが大切です。
市販のぬり薬はかぶれを起こすリスクが処方薬より高いので、
あまりお勧めできません。
爪白癬のセルフケア
治療の基本は薬物治療になりますが、
爪白癬のセルフケアとして行えることもあります。
まず、無理のない範囲で爪の表面を爪やすりで削ります。
爪が薄くなると、ぬり薬が浸透しやすく、効果が出やすくなります。
また、周囲への感染を防ぐことも重要です。
家族に移さないためには、スリッパ、サンダル、バスマットは別にしましょう。
また、室内を裸足で歩くと床に白癬菌をばらまくことになるので、
靴下か自分専用のスリッパをはいてください。
24時間以内に洗えば感染は防げる
家族に水虫の人がいない場も、安心はできません。
温泉や銭湯、スポーツジムなどの足ふきマットには、
ほぼ100%白癬菌がいると思ってください。
マットを使えば、足に白癬菌が付着します。
長時間、白癬菌が足に付着すると水虫になり、
そこから爪白癬になる可能性もあります。
白癬菌が角質層に定着するのには24時間以上かかります。
外で足ふきマットを使ったら、
帰宅後に足をきれいに洗いましょう。
こすりすぎると足に傷がつき、
逆に感染を起こしやすくなるので要注意です。
白癬菌は、高温多湿な環境で繁殖します。
気温と湿度が上がる今の時期は、
通気性のいい靴下をはくなどして、
足の風通しをよくしましょう。
爪白癬になってしまったら

解説者のプロフィール

野田真史(のだ・しんじ)
●池袋駅前のだ皮膚科
東京都豊島区南池袋2-27-5共和ビル3階B
TEL 03-5950-4112
https://tokyoderm.com
池袋駅前のだ皮膚科 院長。
東京大学医学部卒業。
東京大学医学部附属病院を中心に7年間皮膚科医として診療に携わり、日本皮膚科学会専門医と医学博士(PhD)を取得後に渡米。
2014年からニューヨークのロックフェラー大学皮膚科で湿疹、乾癬、円形脱毛症の研究を行う。
現在は渋谷駅前おおしま皮膚科をはじめ、日本の医療機関で皮膚科疾患の治療に当たる。
2018年、池袋駅前のだ皮膚科を開院。