解説者のプロフィール

遠藤拓郎(えんどう・たくろう)
慶應義塾大学医学部特任教授・スリープクリニック調布院長。
1963年、東京都生まれ。東京慈恵会医科大学卒業、医学博士。祖父と父も睡眠研究の分野で活躍し、3代で90年以上、睡眠医療に携わる。睡眠医療の専門家として、テレビなどへの出演も多い。著書に『4時間半熟睡法』(フォレスト出版)、『合格を勝ち取る睡眠法』(PHP研究所)など多数。
●スリープクリニック調布
東京都調布市小島町2-53-1
TEL 0424-900-700
https://www.sleepmedicine-tokyo.com/
Q1 眠ろうとしたら、こむら返りが起きて、痛みで目が覚めてしまいました。防ぐ方法はありますか?
A1
寝入りばなに突然、こむら返りが起きて、眠気がどこかへ行ってしまった経験があるかたは多いと思います。
こむら返りは、ふくらはぎの筋肉のけいれんです。俗に言う「足がつった」状態です。
発生する原因としては、主に次の3つが考えられます。
❶疲労…スポーツの試合中にこむら返りがときどき見られるように、足の筋肉が疲労すると起きやすくなります。足をよく動かしたときは、じゅうぶんな水分補給やマッサージをしてください。ビタミン類やアミノ酸など、疲労回復に有効な成分のサプリメントを取るのもよいでしょう。
❷加齢…年を取ると、こむら返りが多くなりますが、この場合は疲労とは反対に、運動不足によるものと考えられます。ウォーキングなど、軽めの運動を心がけましょう。
❸ムズムズ脚症候群…この病気の症状の1つに、こむら返りがあります。就寝時に足のムズムズ感やほてりが気になり、こむら返りも頻発する場合は、この病気の可能性がありますから、一度、睡眠専門医に相談することをお勧めします。
Q2 悪夢を見て、夜中に目が覚めることがあります。どうすればよいでしょうか?
A2
睡眠には、主に体を休ませるレム睡眠と、脳を休ませるノンレム睡眠の2種類があり、眠っている間はこの2つが交互に訪れます。
夢というのは、レム睡眠中に脳が活動し、記憶を呼び起こして脳内で映像化したものと考えられています。
ストレス過多の状態で眠りにつくと、このレム睡眠が通常よりも強くなり、その終わりに目が覚めやすくなることがあります。
すると、起きる直前まで見ていた夢の印象が強く残って、もう一度眠るのが難しくなるのです。
就寝前に不安なことについて考えすぎないようにしたり、適度に体を動かしてストレスを解消したりするとよいでしょう。
お酒も悪夢の原因になることがあります。
アルコールには、レム睡眠を抑える働きがありますが、日常的に飲酒していると、そのうちに抑えきれなくなり、通常よりも強くレム睡眠が出て、悪夢を見ることがあるのです。
飲まない日を決めて、レム睡眠への抑圧をこまめにゆるめると、悪夢のリスクを減らせます。

Q3 ときどき、就寝時に金しばりにあいます。体に異常があるのでしょうか?
A3
俗に金しばりと呼ばれる現象は、医学的には睡眠麻痺と言います。
意識はあるのに、体は動かせず、声も出せない状態です。
これは、レム睡眠の状態から急に覚醒すると起きる現象です。
レム睡眠中は、脳は活動している一方で体は眠っています。その状態からすぐに切り替わらず、脳の指令が筋肉に届かないのです。
過労やストレス、不規則な生活、飲酒、喫煙などが、金しばりが起こりやすくなる原因と言われます。
頻繁に起こるのでなければ、それほど心配はいりません。
ただし、1カ月に何度も起こる場合は、ナルコレプシー(ナルコレプシー…時間、場所を選ばず、発作的な強い眠気に襲われる病気)の疑いがありますから、医師の診察を受けてください。
Q4 自分の歯ぎしりで目が覚めます。よい対処法はありますか?
A4
睡眠中に歯ぎしりをしている人はとても多く、特に若い女性によく見られます。
強い食いしばりをともなうため、歯が欠ける、歯ぐきから出血する、あごの関節が痛むなど、さまざまな問題につながります。
実は、歯ぎしりが発生するメカニズムはいまだに不明です。
そのため、原因を取り除いて全く起きなくする方法は、残念ながら現状ではありません。
歯の損傷などを抑える対症療法としては、専用のマウスピースを就寝時に装着する方法などがあります。
Q5 よく眠れる本や音楽はありますか?

あなたが落ち着いた気分になれる本があれば、それを読むとよいでしょう。
子どもの頃、寝る前に読んでいた絵本などもよいかもしれません。
音楽は基本的に、脳の中で思考などをつかさどる大脳皮質を目覚めさせる方向に働きかけます。
ただし、穏やかで比較的単調な刺激が続くと、人間の脳はしだいに慣れていき、反応が小さくなる性質を持っています。
ですから、例えば波の音などが繰り返されるのを聴き続けていると、眠気を誘うことがあります。
また、そうした音を聴いていると、外界の雑音や、聴覚以外からの刺激に意識が向きづらくなりますから、雑音が入眠の妨げになりにくくなることも期待できるでしょう。