
甘いお菓子だけでなく穀物やイモも糖質
ここ数年、「糖質制限」や「糖質オフ」といった、糖質を減らす健康法が注目されています。
私の専門の1つは、栄養面から生活習慣病や慢性病に働きかける、栄養療法です。栄養療法から見ても、食事から取る糖質を適切に減らすことは、健康であり続けるために重要です。
その理由をお話しする前に、そもそも糖質とは何かについて、整理しておきましょう。
糖質は、糖類、多糖類の、2つに分けられます。
糖類には、体を動かすエネルギーになるブドウ糖や、果物に多い果糖などがあります。多糖類は、ブドウ糖などが多く組み合わさったものです。多糖類の代表は、穀物やイモに多く含まれるデンプンです。
甘いお菓子やジュースだけでなく、ご飯やパン、パスタなどにも、デンプンの形で、糖質が含まれています。例えば、ご飯1杯(150g)に含まれる糖質は55gですが、これは角砂糖17個と同量です。
ちなみに、炭水化物とは、糖質と食物繊維が組み合わさったもの。炭水化物から食物繊維を抜いたのが、糖質です。
血糖値は常に一定に保たれている
食事から取った糖質は、体内でブドウ糖に変わり、血液中に入ります。
血液に入ったブドウ糖を「血糖」と言います。血糖値が上がるとは、血液中のブドウ糖が増えるという意味です。
ブドウ糖は、すべての細胞が使うことができるエネルギー源です。そのため、いつでもブドウ糖が血液に乗って体じゅうに届けられるよう、血糖値は、常に一定になるように調節されています。
血糖値を一定に保つ働きをしているのが、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。
インスリンは、常に少しずつ分泌されていて、血糖を細胞に取り込ませています。こうして、血糖値が一定に保たれているのです。
糖質の取りすぎは血管を傷つけ老化を促進
糖質の中でも、砂糖、白米、食パンなど、「精製された糖質」は、消化吸収が早いので、取りすぎると食後に血糖値が急激に上がります。
血糖値の高い状態が続くと、すい臓からインスリンが追加で分泌されて、細胞に糖を取り込ませます。
しかし、普段から甘いものや精製された糖質を取りすぎるなど、血糖値が高い状態が続いていると、インスリンが追加で分泌されただけでは血糖値がうまく下がらない、という事態が起こります。
すると、体は「もっとインスリンを分泌しなければ」となり、遅れて大量のインスリンが分泌されます。
遅れて分泌された、大量のインスリンによって、今度は血糖値が急激に下がります。血糖値が乱高下しているような状態(血糖値スパイク)です。
血糖値の乱高下は、体に損傷を与えることがわかっています。具体的には、血管を傷つけ、動脈硬化の危険を高めたり、老化やガンの原因になる活性酸素を作り出したりします。
また、インスリンが追加で分泌されると、血糖が細胞に取り込まれますが、エネルギーとして使い切れなかった糖は、体内で脂肪に変えられます。これが太る原因で、インスリンが「肥満ホルモン」と言われる理由です。
さらに、血糖値が高い状態が続くと、「糖化」が起きやすくなります。
糖化とは、過剰な血糖と、体内のたんぱく質が反応して、「終末糖化産物(AGEs)」という物質を作ることです。AGEsは、動脈硬化を悪化させる、肌の透明感や弾力を奪うなど、老化を進める物質です。
糖質を食べても食後の高血糖を防げばOK
糖質そのものが悪いというより、血管を傷つける急激な血糖値の上昇や、AGEsを作る高血糖を、できるだけ避けることがたいせつです。
血糖値の上昇がゆるやかなら、体への大きなダメージはありません。
自分が、食後の高血糖を起こしているか、簡単に確かめる方法があります。それは食後の眠気です。
食後に眠くなるのは、食後の高血糖を処理するために、たくさんのインスリンが分泌されて、血糖値が急激に下がり、脳細胞にエネルギーが行き届かなくなるからです。
また、血糖値が急激に下がると、自律神経のうち、交感神経が興奮します。すると、イライラするなど精神的に不安定になったり、血管が縮まり血流が悪くなるので、手足が冷えたりします。
こうした症状に心あたりがあるかたは、糖質を取りすぎて、食後の高血糖を起こしている可能性があります。
まずは、最大の糖質源である主食を3分の1だけ減らすなど、糖質の量を減らし、食後の高血糖を防ぎましょう。
ただし、ある程度の糖質は体に必要ですから、極端に制限する必要はありません。
1食あたり40gの糖質なら体に負担がかからない
健康な人であれば、糖質の摂取量を1日120g、1食あたり40gにすれば、食後の高血糖を防ぎながら、体に負担をかけることなく、必要な糖質を補うことができます。
糖質40gは、白米では、約100gに含まれます。茶わん一膳分のご飯が、約150gですから、まずはご飯を3分の1だけ減らす「糖質チョイ減らし」から始めるとよいでしょう。
また、1食あたり糖質40gという目安は、体に負担をかけないために、ぜひ取ってもらいたい糖質の量でもあります。
人体には、中性脂肪や、筋肉を構成しているたんぱく質(アミノ酸)をもとに、体内で糖質を作り出す「糖新生」というしくみが備わっています。
糖質を食べなくても、糖新生のおかげで、体内で糖質を作ることができるので、常に血糖値を一定に保てます。ですから、理論的には糖質を取らなくても、人間は生きていけると考えられています。
とはいえ、体に必要な糖質をすべて糖新生でまかなうのは、体に負担がかかります。
特に負担がかかるのが、筋肉です。糖新生の90%に、筋肉中のアミノ酸が使われるからです。そのため、糖質をいっさい取らないと筋肉が減ってしまいます。
筋肉が減ると、基礎代謝量が落ちるので、逆にやせにくくなってしまいます。筋肉の減少を避けるためには、1食あたり40gという糖質量を守ってください。
さらに、糖新生によって筋肉が減るのを防ぐために、たんぱく質をしっかり取りましょう。
食後高血糖にならない程度に、食事から糖質を減らせば、インスリンの過剰な分泌が起こらなくなります。
そうなれば、糖尿病の予防や改善、ダイエット効果のほか、肌の若返り、精神的な安定など、多くの健康効果を期待できます。
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解説者のプロフィール

斎藤糧三(さいとう・りょうぞう)
医師。日本医科大学を卒業後、産婦人科医に。日本機能性医学研究所所長、一般社団法人日本ファンクショナルダイエット協会副理事長、サーモセルクリニック院長。食物過敏症検査(通称:遅延型フードアレルギー検査)をいち早く導入し、腸内環境の再生によってアレルギーなどの慢性疾患を根治に導く次世代型医療・機能性医学を日本に紹介、日本人として初めての認定医になる。