
不適切な糖質の食べ方は老化と病気を招く
私は血糖値ダイアリーをつけています。
というのも以前の私は、食後に頭がぼんやりしたり、だるくなったり、仕事の合間に仮眠をとることもしょっちゅうでした。
食後の倦怠感があまりにひどいので、食後高血糖を疑い、食後の血糖値を測ってみました。すると、健康診断では全く問題ないと言われていたにもかかわらず、300mg/dlを超えることもあるなど、重度の糖尿病並みの数値でした(※)。また、糖化年齢を調べたところ、実年齢は30代にもかかわらず、65歳と判明しました。糖化年齢とは、血管の炎症度合を表す数値です。
糖化の主な原因の1つには、不適切な糖質の食べ方による食後高血糖が挙げられます。糖化が進むと、全身の血管が炎症を起こし、見た目の老化が進むのはもちろん、糖尿病や動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、認知症などさまざまな病気を招きます。
老化と万病のもとである糖化から体を守るには、糖質の摂取量を減らしたり、糖質の食べ方を工夫したりして、食後の血糖値を上げないことが不可欠です。
65歳というショッキングな糖化年齢を知って以来、健康管理のため、血糖値をこまめに測るようになりました。
※食後血糖値の正常値は140mg/dl以下
小麦で上がった血糖値は下がりにくいと発見!
実際に測ってみると、
○夕食におなかいっぱいお寿司を食べても食後血糖値は上がらない
○甘いすき焼きをたったひと口食べただけで、食後血糖値が200mg/dlを超えた
○サンドイッチやアップルパイを昼食に食べたら、急騰した食後血糖値がなかなか下がらなかった(小麦で上がった血糖値は下がりにくい傾向がある)
○独りで短時間で済ませる昼食は、何を食べても血糖値は上がりがち
○血糖値コントロールの敵と考えられているジャガイモやニンジンは、意外と血糖値を上げない
○サツマイモをひと口食べたら食後血糖値が250mg/dlを超えた
○糖類が使われているジュースは言うまでもないが、野菜汁・果汁100%のジュースや甘さ控えめのスムージーも血糖値を急騰させる
など多くの発見があり、血糖値の日記をつけるようになりました。
最初は、指に針を刺して血糖値を測定していました。でも痛みがあるし、出血するので外で測るのが恥ずかしいしで、だんだんめんどうに。今は「FreeStyleリブレ」という腕にセンサーを貼るだけの測定器を使い、24時間の血糖値の変化をグラフで確認しています。
測定を習慣にしてから、血糖値が上がらない食事パターンを徐々に把握できるようになり、体調は大改善しました。日中の眠さやだるさが嘘のように消え、疲れ知らずで働けるように。ちょっとしたことでイライラするのも治まりました。

松宮医師の血糖値の日内変化を示すグラフの例。80~140mg/dl(①)が健康とされる値。早食いになりがちな昼食後は数値が大きく上昇(②)。夕食後は、上がりはするものの許容範囲内(③)。

松宮医師が使用中の「FreeStyleリブレ」。センサー(左)を腕の内側に貼るだけで測定できる。糖尿病のかたなら保険適応になることも
野菜を食べるより先に出汁を飲むべき
血糖値を測ってみて、「これは血糖値コントロールに効果的だ」と感じたことの1つに、「出汁ファースト」が挙げられます。
血糖値を気にして、食事の最初に野菜を食べるかたも多いでしょう。しかしいろいろな食べ方で血糖値を測定した結果、どうやら、野菜より先にたんぱく質を食べるほうが血糖値が上がりにくいようでした。
ただ、胃酸がまだ出ていない状態でひと口目から魚や肉をもりもり食べると消化不良を起こす可能性があります。そこで私がお勧めするのは、食事の最初に出汁を飲む「出汁ファースト」です。
特ににぼし、かつお、昆布でとった出汁は、アミノ酸の一種のグルタミンが含まれます。グルタミンは胃の運動を抑制し、消化吸収を遅らせたり、インスリンの分泌を促進するので、食後血糖値対策にはいっそう効果的です。
なお出汁は、市販の出汁パックでとったものでかまいません。そのまま飲んでも、味噌汁やポタージュにアレンジしても美味です。出汁に豆や骨付き肉を加えると、たんぱく質がさらに豊富なスープになります。

食事の最初に出汁を飲む「出汁ファースト」は特にお勧めの血糖値コントロール術。市販のパックで出汁をたっぷり取り、冷蔵庫にストックしておく習慣を。
おかずを食べてからご飯をよそう
野菜・たんぱく質・脂質をたっぷり取る食事は、病気や老化を防ぐ最強の習慣です。よほど運動量が多い人でない限り、糖質は控えめでだいじょうぶです。
食事の際は、まずおかずを8~9割食べ終えてからご飯をよそうといいでしょう。そうすれば、ご飯の消化吸収の速度が遅まります。それに、おかずでおなかが満たされているので、たとえ半膳のご飯でも満足できるはずです。
ご飯は「おかずの付け合わせ」。食事にご飯やパン、麺類が不可欠と感じるのは、単なる思い込みです。
日中の倦怠感、頭痛、眠気、イライラなどの不調に悩むかたは、まずは2週間、食生活を変えてみてはいかがでしょうか。
無理なく食後高血糖を防ぐ知恵

解説者のプロフィール

松宮詩衣
天現寺ソラリアクリニック院長。
1979年、東京都生まれ。2006年、昭和大学医学部卒業。昭和大学リハビリテーション科助教、新横浜リハビリテーション病院等を経て、2017年より現職。日本形成外科学会認定専門医。日本リハビリテーション科学会認定専門医。日本抗加齢学会認定専門医。ピラティスインストラクター。
●天現寺ソラリアクリニック
https://tengenji-solaria.com/