解説者のプロフィール

板倉弘重(いたくら・ひろしげ)
●品川イーストワンメディカルクリニック
東京都港区港南2丁目16-1 品川イーストワンタワー3階
03-6718-2898
品川イーストワンメディカルクリニック理事長・医師。医学博士。
東京大学医学部卒。カリフォルニア大学サンフランシスコ心臓血管研究所に留学後、東京大学第三内科講師を経て茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授に就任。退職後、現職。主な研究分野は脂質代謝、動脈硬化。テレビなどメディア出演も精力的に行っている。『認知症の人がズボラに食習慣を変えただけでみるみる回復する!』(青萠堂)、『マンガでわかる コレステロール・中性脂肪を下げる方法』(主婦の友社・監修)など、著書多数。
コーヒーは最大級のポリフェノール源
私は長年にわたってさまざまなポリフェノールの長寿健康効果を研究してきました。
ポリフェノールとは、植物の果実や種子、果皮などに含まれる抗酸化物質の1つです。
植物が害虫などから自らを守るために備わった成分で、体内を酸化させて病気や老化を引き起こす「活性酸素」を除去する抗酸化作用のほか、抗菌作用も持ち合わせています。
数あるポリフェノールの中で、非常に重要な役割を果たしているのがコーヒーに含まれるポリフェノールの「クロロゲン酸」です。
コーヒー100mlにつき、15~20mg程度含まれています。
2010年、首都圏の主婦109人に食事と飲料からのポリフェノール摂取量を調査したところ、ポリフェノール摂取量の47%がコーヒーによるものでした(下参照)。
コーヒーは緑茶や紅茶の約2倍、トマトジュースの約3倍のポリフェノールを含むことからも、コーヒーが最大級のポリフェノール源であることは間違いありません。
コーヒーのクロロゲン酸については、世界的に臨床試験が行われていて、糖尿病や動脈硬化、心臓病、認知症、ガンの予防にいいという研究結果が多数あります。
クロロゲン酸は、強い抗酸化作用により、体内の炎症を抑え、血管壁の内皮細胞を保護し、血管をしなやかに保つので、血圧を下げる働きもあります。
ほかにも、強い紫外線やパソコン、スマホなどのブルーライトによって、目の網膜に集中して入ってくる活性酸素を抑制する働きがあるので、眼精疲労を防ぎ、近視や老眼対策にもなります。
さらに肝臓での脂質の代謝が活発になるので、脂肪を燃焼しやすい体になることも見逃せません。
また、コーヒーに含まれるカフェインには、脂肪を分解して、脂肪燃焼とエネルギー消費を高める働きがあります。
クロロゲン酸とカフェインの2つの効果で、肥満を抑制する働きが期待できます。

2~3時間おきに飲むのが理想
一方のレモンには、エリオシトリン、ヘスペリジン、ナリルチンなど多様なポリフェノールが含まれます。
エリオシトリンは、それらの中でも特に抗酸化作用の顕著な成分です。
また、腸からの中性脂肪吸収を抑制し、中性脂肪を減らします。
ヘスペリジンは、強い抗酸化作用により、血流を改善するなどの働きがあり、動脈硬化を代表とした血管系の疾患を予防します。
レモンコーヒーに用いるレモンは、瓶入りのレモン果汁でも、きれいに洗ったレモンの薄切りでもかまいません。
レモンスライスの皮まで食べれば、健康に役立つ成分をより効果的に摂取できます。
レモンコーヒーは、ポリフェノールの玉手箱。
飲むことで、コーヒーとレモンのポリフェノールが併せて取れるので、よりいっそう健康効果が高まるでしょう。
なお、ポリフェノールの作用が持続する時間は、一度飲んでから2~3時間程度です。
食事のときや、10時、3時のお茶の時間に、1日3~4杯程度、レモンコーヒーを加えると、さまざまな健康効果が期待できるでしょう。
