
オリーブオイルやMCTオイルなどの油、キノコや海藻などの食物繊維 、キウイやリンゴなどの果物
食後血糖値の上昇を緩やかにし、腹持ちもよくしてダイエットに役立つ「糖質の足し算食べ」。別記事では、油を足して糖質を味方にする例を挙げましたが、ほかにも、
・卵・チーズなどのたんぱく質
・キノコ・海藻などの食物繊維
・キウイ・リンゴなどの果物
などの足し算食べが効果的です。
また、何かを足すわけではありませんが、同じ内容の食事でも、先におかずを食べた後にご飯を食べる「糖質の後食べ」が極めて効果的です。
私たちは、足し算食べで血糖値の上がり方がどう違ってくるか、実験で調べました(下のグラフ参照)。

血糖値が正常な女性8人(30~60歳)が、次のような食事を取った場合の食後血糖値の変化を比較しました。なお、食べたのは600㎉に抑えた食事(コントロール食)です。
①最初からご飯を普通に食べる
ご飯、おかず、汁物と、順番にくり返し食べていきます(三角食べ)。最初のほうでご飯が口に入ります。
②ご飯の後食べ+キウイ
食事の開始から15分ほどはおかずだけを食べ、その後ご飯とおかずを食べます(後食べ)。食後にキウイ1個を食べます。
③ご飯の後食べ+油+キウイ
②と同じく後食べしますが、オリーブ油15gをおかずに加えます。食後のキウイは同じ。
④ご飯の後食べ+油+食物繊維+キウイ
③と同じくし、野菜やキノコなど、食物繊維量として7g以上を足します。食後のキウイは同じ。
その結果、①は食事の直後に、血糖値が一気に上がりました。
それに対して②③④は、いずれも血糖値の上がり方が抑えられました。最も数値がよかったのは④です。
このことは、炭水化物の後食べをした上で、足し算によって、血糖値の急激な上昇を防げることを示しています。油や食物繊維・果物などを足すほど、上がり方が緩やかになることがわかります。
つまり、足し算食べをするほど、糖尿病などの予防や改善にも役立つわけです。同時に、体に脂肪を蓄積させるインスリンの分泌が抑えられるので、太りにくくやせやすい体になります。その結果、高血圧や動脈硬化の予防にも効果的です。
カロリーだけにとらわれていると、油や果物を足すと「カロリーが高くなる→太る」と思いがちですが、そうではありません。糖質だけを取るから太るのであり、足し算すればやせやすくなるのです。
なお、この実験では、コントロール食にたんぱく質が含まれていたので、たんぱく質の足し算食べは入っていません。しかし、普段、糖質だけの食事(おにぎり、ラーメン、ざるそばなど)を取ろうとするときには、たんぱく質を足すことによっても血糖値の上昇が抑えられます。
「足し算食べ」の基本のコツ
何の苦労もなく糖質制限ができる人はいいのですが、大部分の人はそうではありません。「糖質が食べたい」と思いながら、無理に我慢することになります。
この「我慢」はクセモノであり、危険です。無理な我慢を重ねるほど、それが続かなくなったときには、糖質のドカ食いをしがちだからです。
重要なのは、口からどれだけ入れたかではなく、小腸でどのように吸収されるかです。足し算食べをすれば、糖質を楽しんでも、油やたんぱく質や食物繊維などが、小腸からの糖質の吸収を阻害してくれます。
ここで、足し算食べの基本のコツを、改めてまとめておきます。
1.糖質に「油」をプラスする
特に、体によい脂肪酸を含むオリーブ油、エゴマ油、ココナツ油、MCT(ココナツなどを原料にしたオイル)を活用するとよいでしょう。
2.糖質に「たんぱく質」をプラスする
チーズ、卵、乳製品、納豆、ツナ缶など、手軽に足せるたんぱく源を活用しましょう。
3.糖質に「食物繊維」をプラスする
食物繊維は、サプリメントやドリンクではなく、基本的には、緑黄色野菜、キノコや海藻などの食品で取りましょう。かみ応えのある食品で取るほうが、血糖値の上昇を抑える効果が高いからです。マイタケ、パプリカ、シュンギク、ホウレンソウなどは食物繊維が豊富です。
4.糖質に「果物」をプラスする
果物は、吸収のよい単糖である果糖が多いので、ダイエットや血糖値管理のためには「控えるべき」という専門家もいます。しかし、果糖は、砂糖に含まれるブドウ糖のように血糖値を急激に上げません。果物は食物繊維やビタミン・ミネラルも豊富なので、おおいに足し算食べに活用したい食品です。特に、キウイやリンゴ、ナシ、イチゴなどは、お勧めです。
5.糖質の「後食べ」
まずおかずをおなかに入れてから糖質を食べると、血糖値の急激な上昇を防げます。といっても、先におかずを食べてしまうとご飯を食べるときに味気ないので、私は、「おかずを3分の2食べた後、ご飯を食べる」という方法を勧めています。

解説者のプロフィール

足立香代子(あだち・かよこ)
一般社団法人臨床栄養実践協会理事長。管理栄養士。せんぽ東京高輪病院名誉栄養管理室長。1968年、中京短期大学家政科食物栄養専攻卒業後、医療法人病院を経て、1985年からせんぽ東京高輪病院に勤務し、2014年より現職。医療現場で過剰栄養に対する栄養指導や入院患者への栄養管理を実践した経験をもとに、食事に経腸栄養、静脈栄養を含めたトータルコーディネートができる人材育成にあたっている。日本臨床栄養学会理事協会評議員、日本静脈経腸栄養学会名誉会員。著書に『太らない間食』(文嚮社)、『ズルイ食べ方ー人生を守る「足し算食べ」SEST100』(ワニブックス)ほか多数。