解説者のプロフィール

石垣英俊(いしがき・ひでとし)
●神楽坂ホリスティック・クーラ
東京都新宿区横寺町68 唐澤ビル2階
TEL 03-3269-8785
http://holistic-cura.net/
静岡県出身。
神楽坂ホリスティック・クーラ代表・鍼灸師。
臨床家の父に鍼灸治療を師事。
2004年に開業し、体の痛みや不調に悩んでいる人々へ、よりよい施術、環境、アドバイスを提供すべく研鑽を積んでいる。
日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ教師。
東西の知恵を独自に融合させた新メソッド「アラウンドセラピーR」を主宰。
著書に『肝臓の気もち。』(BABJAPAN)、『背骨の実学』『腰痛の実学』『コリと痛みの地図帳』(池田書店)、『背骨から自律神経を整える』(清流出版)が好評発売中。
肝臓は実は“おしゃべり”な臓器
「肝臓は沈黙の臓器」
再生力が強く、病気になっても症状が現れにくい肝臓は、西洋医学においてはそのように表現されます。
しかし中医学では、むしろおしゃべりな臓器として捉えられています。
中医学では、肝臓を「肝」という消化器系グループのキーマンとしてとらえ、その根本的な働きは、「気(生命エネルギー)の流れを促すこと」であり、自律神経や筋肉、ホルモン、目にも深くかかわっていると考えられています。そのため、肝の調子が悪くなると「おしゃべり」といえるほど多くの症状が現れます。
たとえば、イライラ、腰痛、筋肉の引きつれ、爪の異常、月経トラブルや更年期障害、目のトラブルなどは、すべて肝の不調と関連します。
肝臓の不調が目に表れる
また、生気のない目つきや充血した目、眉間のシワ、ツヤのない肌、青緑の肌などは、肝の疲れがかかわっていると考えます。
特に目は、肝との関係が深い部位とされており、中医学では、「目は、肝の状態が見える窓」といわれています。
実際に、肝が不調になると、目のかすみ、充血、眼精疲労(重い疲れ目)、ドライアイ、涙目、目のかゆみ、視力低下など、さまざまな目のトラブルが現れます。

肝の不調が外見にも顕著に現れる
精神的な不安定さも肝の不調が原因
同様に、肝の不調から起こりやすいのが、精神面のトラブルです。
「肝が据わる」「肝に銘じる」などとあるように、肝は心と連動しています。
そのため、肝が不調になると、イライラ、怒りっぽい、情緒不安定、抑うつなどの症状が現れるのです。
余談になりますが、臨床家だった父は生前「今後はさらにストレス社会になり、原因不明の目のトラブルや精神的な不調など、肝にかかわる病気が増えるだろう」と言っていました。
実際、年々そういった患者さんは増えていると感じています。
横隔膜を刺激して肝臓を元気にする
そこで今回ご紹介するのが、肝を元気にして、肝にまつわる症状を一掃する「背骨ねじり」という体操です。
背骨ねじりのやり方は、イスに座って上体を後ろにねじるだけです。
上体をひねると、胸郭とともに横隔膜が刺激されます。
横隔膜は、胸部と腹部の間にある筋肉で、肝臓がすぐ下にピッタリとくっついています。
つまり、上体をひねると、横隔膜が刺激され、それに伴って肝臓もマッサージされるような効果が期待できるのです。
また、横隔膜は肺の動きと連動しています。
ストレスの多い人は呼吸が浅くなりがちですが、背骨ねじりを続けることで、横隔膜がスムーズに動きやすくなり、自然と深い呼吸ができるようになります。
深い呼吸はそれ自体が、大きなリラックス効果をもたらします。
背骨ねじりのやり方

背骨ねじりのポイント
背骨ねじりのポイントは、いったん上体を後ろにひねった後、顔だけを前に戻すことです。そうすることで肩甲骨(背中の上部左右にある一対の骨)の間を刺激し、凝り固まった背中の緊張をゆるめることになります。
顔を前に向けた後、深く3回呼吸することも要重です。
これによって、肝臓へのマッサージ効果がさらに高まります。
背骨ねじりは、左右交互に2回ずつ行います。
時間はいつでもいいので、1日2回、行ってください。
仕事や家事の合間など、疲れがたまったとき、集中できないと感じたときなどに行うのもよいでしょう。
【症例】パソコンによる疲れ目が楽になった!
当院の患者さんでも、肝の不調による目のトラブルを抱えている人には、セルフケアとして自宅やオフィスで背骨ねじりを行うよう勧めています。
40代の男性Mさんは、仕事でパソコンを長時間使うため、目を酷使していました。
あまりの眼精疲労で老眼も進行していたため、背骨ねじりを指導したところ、疲れ目がらくになって、イライラすることも減ったと報告してくれました。
続ければ、老眼の進行も治まるでしょう。
最後になりますが、肝臓が元気になると、すべての臓器が元気になると私は考えています。
元気に生きることと、疲れながら生きることは、大きく違います。
背骨ねじりは、元気に生きるための一助になるでしょう。ぜひお試しください。