解説者のプロフィール

野村喜重郎
野村消化器内科院長。
1965年信州大学医学部卒業後、東京大学医学部第2内科へ入局。茅ヶ崎市立病院消化器科部長、東海大学医学部講師を経て、2000年、神奈川県茅ヶ崎市に「野村消化器内科」を開業し、現在に至る。専門分野は肝臓疾患、胃腸疾患、生活習慣病予防。著書多数で『ゆる糖質オフ!やせる主食レシピ』『肝臓を強化する食べ物、食べ方、生活法』『肝臓を食べ物、食べ方、生活法で強くする本』(いずれも主婦の友社)が好評発売中。
●野村消化器内科
神奈川県茅ケ崎市富士見町15-1 0
TEL 467-84-3987
http://www.nomura-syoukaki.com/
肝臓は体の総合化学工場
現在78歳の私は、消化器内科の医師として、今でも朝から診察や検査を行い、午後も、多いときでは1日2回の手術までこなしています。
ありがたいことに、テレビや雑誌などで私を知った患者さんが全国から訪れてくださいます。
私の元気の秘訣は、肝臓にあります。常に肝臓をいたわることを意識し、できるだけ大切にしています。
なぜなら肝臓は、人体を維持するために、甚大な働きを担っている臓器だからです。
肝臓は、体内で約500種類もの多種多様な機能を担う臓器です。そのため、肝臓はしばしば体のなかの「総合化学工場」といわれています。
たとえば、肝臓は、食事でとりこんだ栄養素を体が使いやすい物質に作り変えたり、それをいざというときのために貯蔵したり、必要な場所へ送ったりもしています。工場としての役割だけでなく、貯蔵庫や流通の役割までも果たしているのです。
また、肝臓は、免疫系や内分泌系といった生命維持に欠かせない機能も担っています。
つまり、若々しくて健康的な体を維持するには、肝臓を大切にする必要があるのです。
そのためには、まずは栄養バランスのとれた食事を心がけることです。
添加物の入っていない新鮮な食材を、毎日、多種類を少量ずつ食べるように意識すれば、それぞれの食材に含まれるさまざまな栄養素が補い合って、結果として栄養バランスのとれた食事となります。
肝臓をおなか側と背中側から温める
また、肝臓が働きやすいように、肝臓の血流をよくすることも大事です。それには、今回ご紹介する「肝臓の温め」が最適です。温めたコンニャクをタオルでくるみ、肝臓のあるおなかの右側に当てます。(詳しいやり方は下の写真参照)。これを生活に合わせて、できるだけ長い時間、行います。
忙しくてコンニャク湿布が作れない場合は、使い捨てカイロを使ったり、肝臓の前側と後ろ側に手のひらを当てて、肝臓を手で挟むようにして温めてもいいでしょう。
大きな臓器である肝臓は、もともと大量の血液を必要としています。温めて血流をよくしてやれば、酸素や栄養素を含んだ血液が肝臓へ大量に行き渡り、活性化します。また、働きすぎて弱った肝臓も、血流がよくなれば、速やかに回復します。
そのほか、肝臓を温めることはダイエットにも有効です。肝臓の基礎代謝(安静時の消費エネルギー)は、全体の3分の1を担っているといわれています。肝臓の機能がよくなれば、基礎代謝が上がり、体はやせやすい体質へと変わります。
肝臓を温める「コンニャク湿布」のやり方

肝臓に栄養を集めることが大事
食後のゴロ寝も、肝臓の機能の維持・向上に役立ちます。
子どもの頃、「ご飯を食べてすぐ横になると牛になる」とたしなめられた経験のある人は多いでしょう。しかし、食後のゴロ寝が、肝臓をいたわり、ダイエットにもつながるのです。
食後、小腸で吸収された栄養素は血液中に入ります。この栄養素の豊富な血液は、門脈という血管を通って肝臓へと送られます。
ただ、門脈は静脈の一種です。動脈と比べると血液を送り流す力(血圧)が低いため、血液の流れは重力の影響を受けてしまいます。
しかし、ゴロ寝をすると、重力の影響はさほど受けません。さらに、クッションなどを使って頭と足を20~30㎝ほど高くして、体のいちばん底辺に肝臓がくるようにすれば、食後の栄養豊富な血液を肝臓へスムーズに送ることができるのです。
食後15分のゴロ寝のやり方

ちなみに、肝臓へ送られる血液量は、横になっているときを100とした場合、座った姿勢では70、歩行時では50ほどになります。
肝臓をいたわるためには、食後の15分ほどのゴロ寝がお勧めです。ただし、30分以上ゴロ寝を行うと、食事中の糖が脂肪となって体に蓄積されて肥満の原因となるため要注意です。
肝臓の温めと食後15分のゴロ寝を続けていると、だるさや食欲不振、むくみ、カゼが治りにくいといった病気とはいえないような不調も、改善していくことでしょう。
ぜひ、日々の健康のためにも、肝臓の温めと食後15分のゴロ寝をお試しください。
