力こぶの裏側が降圧の特効ポイント
「冷えは万病のもと」といいますが、実際、体の冷えが健康に及ぼす影響は甚大です。
体が冷えると、内臓や血管などをコントロールする自律神経のうち、活動時に働く交感神経が優位になります。すると、白血球中のリンパ球が減少し、免疫の低下を招くので、さまざまな病気や不快症状が起こりやすくなるのです。
私のクリニックには、複数の医療機関を受診しても病気や症状が改善しなかった人たちが、多く訪れます。こうした患者さんを診察すると、決まって体が冷えています。そこで、私は、どんな病気の患者さんに対しても、まずは体の冷えを取ることを勧めています。
高血圧も、体の冷えと無関係ではありません。体が冷えると、動脈が収縮し、血流が悪くなります。すると、心臓は、血液の循環量をふやそうとして、たくさんの血液を送り出します。収縮した血管に無理やり血液を流すので、結果として血圧が上がってしまうのです。
とはいえ、自分の体が冷えているのかどうか、わからない人もいるでしょう。簡単なチェック法をお教えします。起床時に、わきの下に手を差し込んで温度を確認してください。その後、おなか、おしり、太もも、二の腕に手を当てていきます。それらの部位が、わきの下の温度よりも低いと感じたら、あなたの体は冷えています。
体の冷えを解消するのに、私が患者さんにお勧めしているのが、「湯たんぽ」です。
湯たんぽは、体にふれる面積が大きく、熱エネルギーが高いため、効果的に体を温めることができるからです。湯たんぽで、体の表面から筋肉を温めることが、冷えの解消にいちばん効果的ですし、高血圧の改善にも卓効を示します。
人間の活動を支える熱エネルギーは、食物を消化吸収するときや、筋肉の運動によって生み出され、血液にのって全身に運ばれます。
ところが、筋肉が冷えて働きが弱まると、熱の産生量がへり、血流も停滞します。その結果、体がどんどん冷えてしまいます。要するに、体の冷えとは筋肉の冷えなのです。
高血圧に悩んでいる人は、二の腕を集中的に温めるのが効果的です。湯たんぽの上に、二の腕をのせて、力こぶの裏側辺りを温めましょう。
一般的な血圧の測定方法は、上腕部、つまり二の腕にカフ(袋状のベルト)を巻きつけて、上腕動脈の血圧を測るものです。この際、二の腕が冷たいと上腕動脈が収縮してしまうので、測定結果に影響します。
二の腕の力こぶ側は、腕の曲げ伸ばしで使いますが、反対側は日常的に使われることがありません。ボウリングのボールを投げる際、後ろに振り上げるときくらいです。そのため、この部分の筋肉は冷えやすく、脂肪がたまりがちになります。いわゆる「振りそで」です。ここをしっかり温めて血流をふやすと、血圧降下に高い効果が期待できます。
湯たんぽで腕を温める時間は、2〜3分。「もう少しで汗をかきそう」というくらい温まったら、湯たんぽを外しましょう。くれぐれも、低温ヤケドに注意してください。
湯たんぽでの二の腕の温め方

降圧剤をやめられた!よく眠れると大喜び!
「湯たんぽを持っていない」「時間がない」「職場でできない」という人は、二の腕をマッサージしましょう。湯たんぽと同様の効果が得られます。二の腕をもんで、ポンプのように血液を押し出してあげるのです。左図を参照して、左右の腕に、1日1回行ってください。
痛みを感じない程度の強さで、乳しぼりのように、血液を押し出すイメージで行いましょう。入浴しながら行うのもお勧めです。
シンプルな方法ですが、その効果は絶大です。1回もむだけで、約200mLもの血液が押し出されます。そのため、血流がぐんとよくなり、高血圧が改善されるのです。もちろん、湯たんぽとマッサージを併用してもけっこうです。
実際、私のクリニックの患者さんは、湯たんぽで体を温め、高血圧が改善したケースが多く見られます。一例をご紹介しましょう。
63歳の女性Aさんは、初診時、最大血圧が150mmHgもあり、降圧剤を飲んでいました。診察をしてみると、やはりAさんの体は冷えきっていました。
湯たんぽなどで、積極的に体を温めるようにしたら、2ヵ月後には最大血圧が110mmHg、最小血圧が60mmHgになりました。高いときでも、最大血圧が130mmHg、最小血圧が90mmHgで収まるのです。
さらに、その1ヵ月後には、最大血圧が120mmHg、最小血圧が80mmHgで安定。降圧剤もやめることができ、よく眠れるようになったと喜んでいました。
高血圧で悩んでいるかたは、湯たんぽやマッサージを、ぜひ実行してみてください。
解説者のプロフィール

班目健夫
岩手歯科大学大学院にて、医学博士号取得。
2004年より東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック講師。2011年、青山・まだらめクリニック自律神経免疫治療研究所を開設。
日本自律神経免疫治療研究会理事。
著書に『「首のスジを押す」と超健康になる』(マキノ出版)などがある。
●青山・まだらめクリニック
https://www.dr-madarame.com/