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症状別「耳ツボ」の刺激方法 顔面麻痺はココを揉んで改善できた!

症状別「耳ツボ」の刺激方法 顔面麻痺はココを揉んで改善できた!

耳介医学とはフランスの整形外科医・ノジェが発見した耳を刺激して全身の症状を改善する療法です。なぜ、耳を刺激することが、幅広く役立つのでしょうか。私たちの耳は、発生学的に言えば、魚のエラが発達したものです。三叉神経、迷走神経、顔面・舌咽神経はエラから発生した神経だと考えられています。【解説】吉田宗平(関西医療大学学長)

フランス人整形外科医が発見した耳介療法

 私は、神経内科医として、20年近く前から、「耳介医学」を患者さんの痛みや不調の治療に役立てるとともに、その効果とメカニズムを解明するために、研究を重ねてきました。

 耳介医学とは、フランスの整形外科医であるポール・ノジェが1956年に発見し、体系化した療法です。体の部位に対応する耳のポイントを刺激することで、体の症状を改善します。その治療点となるポイントを抽出して、「耳介医学地図」を完成させました。

 このノジェが作成した「耳介医学地図」は、私の臨床経験から見ても、かなり正確なものだと言えます。

 私が耳介医学に注目するきっかけとなったのは、「半側顔面けいれん」の患者さんへの顕著な効果を目の当たりにしたことです。

 これは、顔の片側の筋肉が意思とは無関係に収縮して、ピクピクとけいれんしたり、ひきつったりしてしまう病気です。ひどくなると、目を開けていることも困難になります。

 一般的には、ボツリヌス菌が出す毒素を局部に注射して筋肉をマヒさせるか、顔面神経と血管の癒着をはがす外科手術での治療になります。

 15年ほど前に診察した70代の女性は、すでに発症から7年が経過していて、左目が開けていられない状態でした。

 私は彼女に、けいれんのある左側の耳たぶを1分間もんでもらいました。耳たぶは、ノジェの耳介医学地図で、顔面に対応するポイントなのです。すると、しだいに左目が開いてきて、けいれんも明らかに軽減したのです。その効果は5分ほど続きました。

 そこで鍼灸師の協力を得て、皮内鍼(ごく細く短い鍼をテープなどで固定し、1日から数日おく鍼治療)を耳たぶに打って経過を観察したところ、約半年後から急激に症状が軽快。

 2年半後には症状が消失し、治療当初2㎜しか開けられなかった左目が、8㎜まで開眼できるようになりました。3年で治療終了した後も、再発はしていません。

 この症例以降、何人もの患者さんに耳介治療を試み、半側顔面けいれんはもちろんのこと、両目が開かなくなる眼瞼けいれん、パーキンソン病に伴う腰痛やひざ痛、頭痛、生理痛、肩こり、さらにはダイエットなどにも高い治療効果を上げてきました。

症状別「耳の治療地図」

血圧降下、腰部血流量の増加を確認

 なぜ、耳という局部を刺激することが、全身の症状の改善に幅広く役立つのでしょうか。

 私たちの耳は、発生学的に言えば、魚のエラが発達したものです。脳神経は12本ありますが、そのうちの三叉神経、迷走神経、顔面・舌咽神経という3本は、エラから発生した神経だと考えられています。

 魚類から哺乳類に進化し、エラが耳に変わっても、これら3本の脳神経は耳に通じています。さらに、頸椎から延びる神経も耳に通じています。

 耳に通じるこれらの神経は、全身の各部位や器官から上ってくる神経と脳幹で合流し、大脳につながっています。ですから、耳への刺激が、神経のネットワークを介して全身のさまざまな部位や器官に作用することは、十分考えられるのです。

 実際に私が行った実験で、足の反射区に当たる耳のポイントに鍼を打つと、15分後には明らかに足先の温度が上昇し、20分後には顔や手の温度も上昇するのが、サーモグラフィ(体表の温度変化を測定する機械)を用いて確認できました。

 また、腰に対応する耳のポイントに金属粒をはって刺激を加えると、腰の血流量が増加しただけでなく、服を脱いだときでも体表温度が下がりにくいことも判明しました。

 ほかにも、耳の裏にある血圧のポイントを刺激すると、明らかに血圧が下がりますし、脳出血の後遺症によるマヒが改善して動かせるようになった例などもあります。

ズーンと重たい痛みが響く場所を重点的にもむ

 治療のさいの刺激法は、鍼などを利用することが多いのですが、自己療法としてご自身で刺激されるなら、指先でもみほぐすのが簡便でいいでしょう。

 上の治療地図を見ながら、改善したい症状に対応するポイントの周辺に触れてみて、ズーンと重たい痛みが響く場所や、かたかったりしこりを感じたりする場所を中心にマッサージします。位置を厳密に特定する必要はありません。

 耳の血行がよくなり、ポカポカと温かく、やわらかくなるまで、1~3分ほど行えば十分です。1日に何度行ってもけっこうですが、気持ちよく感じられる範囲で、無理に力を入れ過ぎないようにしましょう。

 また、耳の皮膚は薄く、傷つきやすいので、爪は短くしておき、やり過ぎないように注意してください。耳に傷や湿疹、かぶれ、腫れ、吹き出物など、異常があるときには、刺激を控えましょう。

解説者のプロフィール

吉田宗平
関西医療大学学長。
1973年、和歌山県立医科大学大学院医学研究科卒業。医学博士。日本神経学会認定医・指導医。関西医療大学および大学院教授。同大学院研究科長、附属診療所長、神経病研究センター長を経て、2014年、同大学学長に就任(兼任)。筋委縮性側索硬化症やパーキンソン病などの神経難病の研究・治療が専門。脈診の科学化とノジェらによる耳介療法の治療診断システム構築を目指す。東洋医学(漢方・鍼灸)に加え、欧米で発展してきた耳介医学やメディカルハーブを取り入れた、全人的な統合医療を目指している。

●関西医療大学
https://www.kansai.ac.jp/

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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