垣根や風よけとして一般的な常緑樹
「ネズミモチを飲まない人は、もぐりの会員ね」。
冗談でそう言い合うくらい、私が世話役を務める薬草会では、ネズミモチを愛飲しています。
変わった名前ですが、モクセイ科の常緑樹で、垣根や風よけとしてよく植えられている、とても身近な薬草です。
紫がかった黒い実がネズミのフンに、葉はモチノキに似ているところからこの名がつきました。
ネズミモチは簡単に手に入る上に薬効がすばらしく、薄毛や白髪にとても効果的。
薬草会でも、「髪が黒くなった」「毛が生えた」という人が、後を絶ちません。
髪の毛は、漢方では「血余」と呼びます。
「血の余り」の字のごとく、食べた物が消化、吸収されて血液になり、全身を巡って、余った血液が髪になるのです。
若い頃に髪が黒々、フサフサしているのは、美しい髪を作る血液のゆとりがあるから。
ところが年齢を重ねるとともに、内臓は少しずつ衰えていき、食べたものが十分に吸収できなくなります。
こうなると髪の毛までいく血が足りなくなり、ポツポツと白髪が出てきます。
髪の毛も細くなり、抜け毛も増えて薄毛になってしまうのです。
白髪、薄毛を根本的に治すには、衰えた内臓を整えなければなりません。
そして内臓を整えるには、数ある薬草の中でも滋養強壮効果が非常に高い、ネズミモチが一番です。

じわじわと体調がよくなる
ネズミモチの効果効能は多岐にわたり、健胃、虚弱、うつ、不眠、やつれ、ひざ痛、腰痛、肝臓病、ドライアイ、耳鳴り、白髪など。
中国最古の薬物学の書である『神農本草経』には、ネズミモチについて「補中を司り、五臓を安んじ、精神を養ひ、百病を除く」と記されています。
「中」とはまさに内臓のことです。
ただし、今日飲んだから明日毛が生えるというものではありません。
じわじわと体調がよくなって、ごはんがおいしく感じられたり、ぐっすり眠れるようになったりといった変化がまずは現れます。
それから高血圧やドライアイ、耳鳴りなどの不調がなくなっていき、最後に髪の毛にいって、細い髪が太く、白い髪が黒くなるという具合です。
ですから、少なくとも半年以上は、飲み続けたほうがいいでしょう。
髪の毛は健康になった後の「おまけ」のようなものだと考えてください。
実も葉も枝もすべて使える
ネズミモチの摂取方法は、さまざまありますが、ここではお茶(粉末)とネズミモチコーヒーを紹介します。
実、葉、枝、すべてに薬効がありますが、実は冬にしか採れません。
これから作るなら、一年中採取できる葉を使ったお茶がお勧めです。
葉を洗って水気を取ったら、ベランダなどで天日干しにして乾燥させます。
これを粉末にして、煮出せば出来上がりです。
なお、煮出すさいに麦茶のティーバックを入れると、おいしく飲めます。
詳しい作り方は次項にあります。
分量は1日分です。作り置きはせずに、その日のうちに飲みきるようにしてください。
冬になったら、実を使ったネズミモチコーヒーがお勧めです。
ネズミモチは、冬に1㎝くらいの細長い実をつけます。
中国から入ったトウネズミモチは5㎜くらいの丸い実ですが、薬効は変わらないので、どちらでも作れます。
コツは必ず成熟してから採取すること。
九州なら12月中旬、本州なら12月後半~1月上旬くらいが収穫時期の目安です。
残念ながら、東北など寒いところではネズミモチはあまり育たないようです。
採った実はほぐして水できれいに洗い、1ヵ月から数ヵ月干してカラカラに乾燥させます。
それを鍋やフライパンで焙煎し、コーヒーミルや粉砕器でひいて出来上がり。
コーヒーフィルターに3g入れ、湯を注ぎドリップして飲みます。
ネズミモチをはじめ、薬草の持つパワーをお伝えするのは、私のライフワーク。
私自身、子どもの頃から体が弱く、30代までは「明日の朝、生きとるやろか」というほどの虚弱体質でした。
それが薬草の世界に入り、どんどん体が丈夫になってきて、75歳の今でもバリバリ元気に働いています。
健康と髪の毛のために、ぜひネズミモチを飲んでみてください。
ネズミモチ茶とネズミモチコーヒーの作り方

解説者のプロフィール
平田眞知子(ひらた・まちこ)
薬草コンサルタント。九州薬草趣味の会連絡協議会理事。
身近にある薬草を使った薬草酒や化粧水の作り方や、病気予防の方法を長年研究。市民講座などで講演多数。