ハチミツは、甘味料として優秀なだけでなく、200種類もの体にいい成分を含んでいるといわれます。
こうしたことから、古くから薬としても珍重されてきました。
疲れたときにひとさじ食べると、気分がほぐれ、活力がわいてくるのが感じられます。
食べてよし、ぬってよし!ハチミツは大自然からの贈り物。
ハチミツが秘めたチカラをご紹介します。

ハチミツの主な健康効果
ハチミツには、体によいとされる成分が200種類も含まれており、期待できる効果・効能も実に多彩です。
その主な健康効果を解説しましょう。

①抗菌・殺菌作用
「ハチミツは腐らない」と言われますが、それは、この抗菌・殺菌作用によるものです。
抗菌・殺菌作用とは、雑菌(病原菌)の増殖を抑えたり、死滅させたりする作用のことです。
したがって、炎症、潰瘍、口臭、ムシ歯や歯周病、ピロリ菌の抑制など、幅広い病気の予防に役立ちます。
②肥満・メタボ防止作用
2008年に、イランで行われた研究では、次のような結果が出ています。
肥満(BMI25以上)の男女55人を二つのグループに分け、一方には砂糖、他方にはハチミツを、毎日70gずつ、30日間取ってもらいました。
すると、砂糖グループは体重も体脂肪も微増しましたが、ハチミツグループはどちらも微減しました。
加えて、中性脂肪値が11.0%、LDLコレステロール値が5.8%、空腹時血糖値が4.2%低下したのです。
これには二つの理由が考えられます。
一つは、ハチミツに含まれる果糖が、中性脂肪ではなくグリコーゲンに素早く変わり、肝臓に貯蔵されること。
さらに、ハチミツには糖代謝を促す亜鉛や銅が含まれるため、中性脂肪値も血糖値も上がりにくいのです。
もう一つは、ハチミツがレプチンなどの食欲調節ホルモンをうまく調整し、食欲を抑えること。
これらの作用で、肥満やメタボの防止に役立つのです。
③胃腸の調子を整える作用
ハチミツには消炎作用があり、胃潰瘍、胃炎、十二指腸潰瘍などの消化器の炎症を抑えます。
また、腸の働きを整え、便秘や下痢を改善する作用もあります。
これは、ハチミツに含まれる有機酸やオリゴ糖が腸内環境を整えるためで、特に下痢には即効性があります。
④アンチエイジング作用
ハチミツには、食べてもぬっても、美肌効果があります。
その第一が、保湿です。
ハチミツの約8割を占める糖分は、吸水性や浸透性に優れています。
ですから、ぬれた肌にハチミツをつけると、皮膚面に水分を閉じ込めて肌にうるおいを与え、有効成分が皮膚に浸透していきます。
食べることでも、ビタミンB群、アミノ酸、ミネラル、ポリフェノールなどの有効成分が働き、シミのもととなるメラニンの蓄積抑制、皮膚の再生促進、吹き出物の抑制など、多様な美肌効果を発揮します。
⑤効率のよいエネルギー補給源
ハチミツの主成分であるブドウ糖と果糖は、糖質の最も小さい単位です。
そのため、体内で分解される必要がなく、速やかにエネルギーに変わります。
ですからハチミツは、体力を早く回復したいときなどに、ぴったりのエネルギー源です。
また、ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源です。
不足すると脳の働きが低下するので、頭を使う仕事をするときは、ハチミツで補うといいでしょう。
また、ハチミツはアルコール代謝を高めるので、お酒を飲んだ後にハチミツを取れば、二日酔い防止にもなります。
ハチミツの摂取量の目安は「1日大さじ1杯」
ハチミツの1日の摂取量は、さまざまな文献から判断すると、15ml(大さじ1杯・約60kcal)が適量のようです。
胃腸が弱っているときは、2~3回に分けて、食事の前に取ります。
それ以外は、一度に取っても構いません。
基本的には、加熱せずに取るのがお勧めです。
風味が損なわれず、加熱で失われる成分も取ることができるからです。
ただ、加熱しても、有効成分がすべて失われるわけではありません。
ミネラル、ポリフェノールなどは、熱で壊れにくいからです。
用途に合わせて使い分けるといいでしょう。
ハチミツは、砂糖より糖度が高いのに低カロリーなので、適量であれば、毎日取っても太る心配はありません。
むしろ、中性脂肪値や血糖値などを下げる方向に作用します。
ですから、脂質異常症や糖尿病の人も問題ないと思いますが、念のため、医師と相談してから取ると、より安心でしょう。
ハチミツを購入するさいの最低限のポイント
ハチミツを購入するさいの最低限のポイントは、ラベルに「はちみつ」「純粋はちみつ」と表示のあるものを選ぶことです。
異常に値段が安いものは、避けたほうが無難です。
できれば国産のハチミツを、信頼できる養蜂園などから買うのがベストです。
私自身は自宅で養蜂をしており、ハチミツも自家製百花蜜です。
それをオリーブ油と一緒に、パンにつけて食べるのが、私と98歳の母の朝食の定番です。
なお、1歳未満の乳児には、ハチミツを与えないでください。
乳児ボツリヌス症を起こすおそれがあります。
解説者のプロフィール

平柳要(ひらやなぎ・かなめ)
●食品医学研究所
http://h-and-w.jp/
食品医学研究所所長。
東京大学大学院医学研究科修了。
ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学客員研究員、日本大学医学部准教授などを経て、食品医学研究所を設立。
科学的根拠に基づいた健康食品の研究、開発に携わる。