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自分の血を用いる毛髪再生治療「PRP療法」その効果と治療の流れ

自分の血を用いる毛髪再生治療「PRP療法」その効果と治療の流れ

脱毛や薄毛には、さまざまな原因がありますが、自分の血液から抽出した成分を用いることで、脱毛症の種類や性別を問わずに効果が得られる可能性があるという「毛髪再生治療」が注目を集めています。従来の治療で改善の見られなかった女性の脱毛症にも有効なケースが多いのです。【解説】瀧川恵美(新東京病院 形成外科・美容外科部長)


脱毛や薄毛には、さまざまな原因があります。
男性型脱毛症(AGA)には近年、新たな薬「プロペシア」や「ザガーロ」が登場し、治療が劇的に変わりました。

しかし、その他の脱毛症には、いまだ決定打となる治療法がありません。
特に女性の脱毛症は従来、治療の選択肢も少なく、改善効果が得られずに治療難民化してしまう患者さんも多かったようです。

そうした中、自分の血液から抽出した成分を用いることで、脱毛症の種類や性別を問わずに効果が得られる可能性があるという「毛髪再生治療」が注目を集めています。
この治療を実施している、新東京病院の瀧川恵美先生にお話を伺いました。

【取材・文】山本太郎(医療ジャーナリスト)

解説者のプロフィール

瀧川恵美
新東京病院 形成外科・美容外科部長。2001 年、防衛医科大学校卒業、形成外科入局。2012年、防衛医科大学校医学研究科(大学院)卒業。2014 年、新東京病院形成外科・美容外科に入職、2015 年より現職。新東京クリニック美容医療・レーザー治療センターセンター長兼任。医学博士。日本形成外科学会専門医、皮膚腫瘍外科分野指導医、日本美容外科学会専門医、日本抗加齢医学専門医ほか。

●新東京病院
http://www.shin-tokyohospital.or.jp/

整形外科や歯科では以前から使用されている方法

──こちらで行われている毛髪再生治療とは、どのようなものなのでしょうか?

「PRP療法」といって、自分の血液成分を使った再生医療の一種です。
まずPRP(自己多血小板血漿)についてお話ししましょう。

「血小板」は、皆さんも聞いたことがあると思います。
血液中に含まれる細胞成分で、出血したときに血を止める働きがあります。

それだけでなく、血小板はさまざまな「成長因子」を出して、傷ついた組織を修復したり、細胞の増殖を促したりする働きがあります。
この働きが再生医療で注目されているのです。

PRPは遠心分離機という機器を用いて、血小板を高濃度に濃縮した血漿(血液の液体成分)です。
健康な成人では、血液1立方ミリメートル中に平均で20万個程度(検査の基準値は13万個~34.9万個)の血小板が含まれますが、PRPにはその通常量の数倍の血小板が含まれています。

PRPに組織の再生を促す作用があるとの報告は、1998年に米国マイアミ大学のロバート・マークス教授らが初めて行いました。
マークス教授らは顎の骨の再建治療(骨移植)にPRPを併用したところ、骨を単独で移植した場合と比較して、明らかに骨量の増大が見られると報告しています。

以来、PRPが注目を集め、さまざまな分野で臨床への応用が進んでいます。
例えば、形成外科や整形外科の分野では、通常の治療ではなかなか治らない創傷(ケガ)、ひじやアキレス腱の痛みなどに用いられています。

歯科の分野ではインプラント(抜けた歯の代わりに人工歯根を埋め込む治療)の定着がよくなると報告されています。
美容外科では、シワやたるみの改善にも用いられています。

私は防衛医科大学校大学院に在籍時からPRPを研究しており、動物実験の結果から発毛効果があると感じていました。
ちょうど同じころ、米国の医学誌で「植毛にPRPを併用すると定着率が上がる」との報告が発表されました。

そこから、PRPを頭皮に直接投与すれば発毛に役立つのではないかと着想したのです。

本数と断面積両方に効果があった

──具体的には、どんな効果があるのですか?

私たちは2009年から、薄毛を気にする人を対象にしたPRPの臨床試験を実施しました。
このさい、PRPに含まれる成長因子の効果を高めるため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)を併用しました。

DDSとは、薬を患部に送り届けたり、長く作用させたりするための技術のことです。
私たちは、ダルテパリンとプロタミンという薬を混合したDDSを用いています。

これを使うことでPRPの成分がゆっくり放出され、同じ投与量でより長く作用し、効果を高められるのです。
試験の結果、毛髪の平均本数が少し増え、さらに毛髪の断面積が倍以上にもなる効果が確認されました(下のグラフ参照)。

これはすなわち、毛髪が太くなったということ。
つまり、毛髪の成長が促進されているということです。

以後、PRPの投与方法などに改良を加えながら、2年ほど前から当院で自由診療にて実施しています。
その結果、多くの患者さんに満足していただける効果が現れています。

特に、従来の治療で改善の見られなかった女性の脱毛症にも有効なケースが多いことは特筆すべきでしょう。

【症例】原因不明の脱毛症が、1年ほどで頭皮全体に髪が生えた

下の写真は、23歳の女性患者Aさんです。
Aさんは小学生の頃から原因不明の脱毛症に悩んでいました。

過去にステロイド剤の投与で、一時的によくなったことがあったものの、副作用で継続できなかったそうです。
その後もさまざまな治療を試みるも、まったく改善の兆しはなく、抜け毛が進行していきました。

当院にいらしたときは、ほぼ全頭脱毛状態で、日常生活ではカツラを装用していました。
Aさんに最初は2週間に1回、3回目以降は1ヵ月に1回、5回目以降は1~2ヵ月に1回のペースでPRP療法を実施しました。

3回目あたりから少しずつ毛が生え始め、1年ほどたつと頭皮全体に髪が生えてきました。
このまま安定した状態が続けば、カツラも手放せるのではないかと喜ばれています。

また、35歳の男性Bさんは円形脱毛症に悩まれていました。
数回のステロイド剤の局所注射で効果がなく、PRP療法を行ったところ、2回の投与で発毛が見られ、7回でご本人の満足いくレベルまで改善しました。

治療を終了して1年以上経過していますが、脱毛の再発もありません。
Bさんは「すっかり元の状態に戻った」と喜ばれていました。

ほかにも、女性に多い髪の分け目から薄くなってくる脱毛が改善して、カツラが不要になったケースなど、さまざまな脱毛症に満足のいく効果が得られています。

脱毛症には、男性ホルモンの影響で髪の毛が十分成長する前に抜け落ちてしまう「男性型」、皮脂の過剰分泌で毛穴が詰まってしまう「脂漏性」、女性型とも呼ばれる頭の毛全体が薄くなる「びまん性」、頭皮アレルギーなどが原因でフケが増えて起こる「粃糠性」などがありますが、さまざまなタイプの脱毛に改善が見られています。

毛根さえ残っていれば、PRP療法はすべてのタイプの脱毛に有効ではないかと、私は考えています。

副作用がなくほかの治療と並行できる

──女性にも有効なのは、心強いですね。
なぜPRPを用いることで発毛効果が得られるのでしょうか?


髪の毛には、生えて抜け落ち、また生える……という周期(ヘアサイクル)があります。
毛母細胞が活発に分裂して、毛が太くなりながら伸びていく「成長期」が平均4~6年、成長が止まる「退行期」が数週間、毛が抜け落ちて次の成長期まで休んでいる状態の「休止期」が数ヵ月です。

1本1本の髪の毛で周期が異なり、毛が抜ける時期がずれるため、通常は一度にまとめて抜けることはありません。
ところが、毛が十分に太く成長する前に抜けてしまったり、なんらかの原因で髪の毛の休止期がそろったりすると、毛が薄くなってくるわけです。

休止期は、脂肪細胞や線維芽細胞、毛包幹細胞といった発毛にかかわる細胞が休眠状態に保たれています。
PRPを投与すると、休止期にある細胞が成長期に入り、また、成長期にある細胞はその期間が維持され、毛髪の成長が促進されるのです。

PRPには、毛母細胞の増殖と分裂を促し、たるんだ頭皮に新しい角質細胞を作るKGF(ケラチノサイト成長因子)や、血管を生成して傷を治すbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)など、さまざまな成長因子が含まれています。

これらが複合的に作用して、発毛を促すと考えられます。
自分の血液を使うPRP療法は、薬と違って副作用の心配がなく、他の治療法と併用できる点もメリットです。

男性型脱毛症には現在、プロペシアやザガーロ、ミノキシジルなどの治療薬がありますが、PRPを併用すれば発毛効果をより高めることができるでしょう。

一方、女性の脱毛症にはまだ特効薬と呼べるものがないのが現状ですが、これまでの症例からPRP療法は女性にも一定の効果が期待できると考えています。

1回の治療は2時間程度

──実際の治療の流れや費用について教えてください。

まず採血を行い、当日許可を受けた場所でPRPを作成します。
投与したいPRPの量にもよりますが、採血量はだいたい20~40㎖くらいです。

生成したPRPを前述したDDSと混合して、頭皮に注射で投与します。
なお、頭皮への注射はけっこう痛いので、事前に軽い局所麻酔をしてから行います。

以前は、脱毛の目立つ箇所のみに注射していましたが、最近、同時に複数箇所に薬を注入できる注射器を採用して、頭皮全体にまんべんなく投与したところ、そのほうが治療効果が現れやすいという実感があります。

治療は、採血から始まり、全体で2時間くらいで終了します。
基本的には、どんなタイプの脱毛症にも適応可能ですが、体質的に血小板が少なかったり、血小板そのものに異常があったりする人は、有効なPRPが作成できないため、非適応です。

糖尿病があり、血糖値のコントロールがよくない人も同様です。
また、該当するケースはまれですが、投与部位の付近に腫瘍がある人も行えません。

これは、PRPの投与によって腫瘍の成長が促進されてしまう恐れがあるためです。
PRP療法は自由診療で、当院では1回12万円からです。

発毛効果は個人差がありますが、平均3~4回、期間にして3ヵ月くらいで毛が増えてくることが多いものです。
なお、脱毛症は起こり始めてから時間がたつほど、治りにくくなってしまいます。

ですから、なるべく早期に治療を開始したほうがよいのですが、当院では、発症から10年以上経過した男性型脱毛症の患者さんに、5回の投与で毛が生えてきた例もありました。

発症から何年も経過し、もうあきらめているという人も、希望が持てるかもしれませんね。

PRP療法の流れ

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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