「閉塞隅角緑内障」と「開放隅角緑内障」の違い
緑内障は、眼圧(眼球内の圧力)が高くなって視神経を傷つけ、
視野が欠損していく病気です。
失明原因の第1位と恐れられていますが、
早期発見・早期治療を行えば、
ほとんどの場合、失明は免れます。
眼圧を上げる原因に、
房水の滞りがあります。
房水は目の中を循環して組織に栄養を運ぶ液体で、
毛様体という組織で作られ、
隅角にあるシュレム管から排出されます。

緑内障は、この隅角が狭くなって房水の流れが悪くなる「閉塞隅角緑内障」と、
隅角は開いているのに目詰まりを起こしている「開放隅角緑内障」に大きく分かれます。
日本人の場合、閉塞隅角型は2割しかいません。
残りの約8割は開放隅角型で、そのほとんどは正常眼圧緑内障です。
眼圧は正常域(10〜21㎜Hg)なのに、なぜ視神経が壊れて視野狭窄が進行していくのか、
ほんとうの原因はわかっていません。
眼圧を上げない習慣を身につけることが大事
しかし、正常眼圧緑内障でも、
眼圧を下げると進行が抑えられるので、
眼圧を下げる治療は非常に重要です。
緑内障は、定期的に検査を受け、
点眼薬で眼圧が上がらないようにすれば、決して悪い状態にはなりません。
今はいい薬があるので、眼圧をコントロールしやすくなりました。
しかし、緑内障は自覚症状がないので、
途中で薬をやめてしまう人が後を絶ちません。
治療をやめれば、必ず緑内障は悪化します。
緑内障と診断されたら、
眼圧を16㎜Hgまで下げることを目標に、治療を継続してください。
ところで眼圧は、日々変動しますし、
日常の姿勢や生活でも、大きく変わってきます。
ですから、なるべく眼圧を上げない習慣を身につけることが大事です。
眼球の圧迫、目にいく血流の循環不全、低酸素などを避けることがポイントです。
眼圧を上げない生活のポイント
毎日の生活では、
次のようなことに気をつけてください。
❶うつぶせ寝をしない
寝ている体勢は、昼間、体を起こしている体勢より眼圧が高くなります。
それに加えて、
うつぶせ寝をすると、眼球が圧迫されて眼圧が上がるので、避けましょう。
❷枕を高くしない
枕が高いと呼吸がしにくくなり、
首から脳へいく血流も悪くなります。
寝返りを打ちやすい自分に合った高さの枕を選ぶことが大事です。
❸イビキを防ぐ
イビキがひどい人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
睡眠時無呼吸症候群になると、一時的に呼吸が止まり、
酸素が目や脳に供給されにくくなります。
また、目への血流も悪くなり、眼圧を上げる要因になります。
実際、睡眠時無呼吸症候群の人は、
緑内障にかかりやすいというデータもあります。
イビキをかく人は鼻が通りにくく、口呼吸になっている傾向があります。
鼻の通りをよくするには、
鼻腔(鼻の中の空気の通り道)を広げるテープを鼻に貼るといいでしょう。
口呼吸を防ぐには
、医療用テープ(サージカルテープなど)を唇の中央に縦に貼ってください。
鼻呼吸がしやすくなり、目への酸素の供給がよくなります。
❹うつむき姿勢を減らす
パソコンやスマートフォンの操作で
首を下に傾けるうつむき姿勢を続けると、
首から脳へいく血流が悪くなります。
そのため、房水の流れが滞り、眼圧が上がるといわれています。
スマホはなるべく垂直に立て、
顔の正面まで上げて操作してください。
うつむき姿勢が続いた場合、
10分に一度は顔を上げて遠くを見る、
首を回すなどして、首の血流を促しましょう。
❺喫煙しない
喫煙は、目の血管を収縮させて、血流を悪くします。
血流が悪くなれば、眼圧も上昇します。
また、タバコは活性酸素を発生させて、
目の組織を傷める原因にもなるので、緑内障の患者さんはやめるべきです。
過度な高血圧治療は緑内障のリスクを上げる
なお、低血圧は、網膜の血流が悪くなるので、
緑内障のリスク要因になります。
同様に、薬による高血圧治療で、
最大血圧を125㎜Hg以下、最小血圧を50㎜Hg以下に下げると、
血流が悪くなって緑内障のリスクが上がります。
緑内障の人は血圧の調整にも注意が必要です。

解説者のプロフィール

中目黒眼科院長
杉本由佳(すぎもと・ゆか)
●中目黒眼科
東京都目黒区上目黒3-7-7ルネス中目黒ビル1階
TEL 03-3793-0850
http://www.eikoukai.jp/