
料理に使うとコクが出て砂糖や塩を控えても美味
我が家で天然酵母を作り始めたのは、2002年のことです。グラフィックデザイナーである父が、天然酵母パンの書籍の編集に携わったことがきっかけでした。出版後、全国の読者から、自家製の天然酵母パンが続々と送られてきたのです。
そのパンのおいしさに感激した私たちは、すぐに天然酵母を作り始めました。リンゴから始まり、イチゴ、ミカンなどの果物や、トマトやタマネギ、ニンジンなどの野菜、そしてコンブを使って、天然酵母を作っています。
私たちは、瓶の中で育てた物を、COBOと呼んでいます。瓶の中には、酵母だけでなく、乳酸菌やそのほかの微生物が含まれているからです。ただ、この記事中では便宜上、瓶の中で育てた物を酵母と表記します。
なかでも、失敗が少なく、活用方法が多彩なのが、「コンブ酵母」です。
コンブの場合、糖分が少なく発酵速度が緩やかなので、ほかの食材のように泡が立ったり、音が聞こえたり、においが変わったりすることはありません。ですから、「ほんとうに発酵しているの?」と疑問に思うかたも多いようです。
コンブ酵母が発酵していることは、微生物の専門家である山下 昭先生が確認してくださっています。
コンブを鍋に入れて水に漬けておくだけだと、2~3日で傷んでしまいます。
ところが、コンブをたっぷりの水といっしょに瓶に入れ、空気に触れないように密閉し、冷蔵庫に入れておくと、1ヵ月持つのです。これは、コンブに付着していた乳酸菌が増え、雑菌の繁殖を抑えるためです。酵母も多少増えるので、コンブだしより旨みが濃くなります。
コンブ酵母には、乳酸菌と酵母が共生しています。酵母だけでなく、乳酸菌も含んでいるのです。
また、酵母というと、パンが膨らんだりビールが泡立ったりする様子を思い浮かべるかたが多いかもしれません。一方の乳酸菌は、ヨーグルトやキムチのような酸っぱいイメージが強いのではないでしょうか。
コンブの場合、いずれの菌もそこまでは増えず、見た目や味の変化はあまりありませんが、海藻臭さが抑えられ、旨みが増します。そのままでも飲みやすく、料理に使うとコクが出て、砂糖や塩などの調味料を控えても、おいしく仕上がります。

野菜ジュースに入れても美味
10年以上苦しんだひどい生理痛から解放
ウエダ家では長年、手作り酵母を食生活に利用しています。コンブ酵母は、そのまま飲んだり、野菜ジュースに混ぜたりして飲んでいます。
そのほかにも、お吸い物やみそ汁はもちろん、洋風のスープに使ったり、煮物や炒め物、珍しいところではパスタソースにすることもあります。数々のレシピを紹介しているので、ご覧ください。
コンブ酵母をはじめとした手作り酵母をとるようになって、私たち家族の体調に変化が現れました。
まず、父は自然に体重が6㎏も減って、ズボンがぶかぶかになりました。
母と妹は、肌の調子がよくなったといっています。ざらつきが減って、キメが細かくツルツルになったそうです。
私自身、手作り酵母を食生活に取り入れて、体質が劇的に変わりました。
私は高校時代から10年以上、のたうち回るほどの生理痛に苦しんでいました。病院を何軒も回り、子宮内膜症と卵巣嚢腫の診断を受けました。
ある医師からは「このままでは、子供を産めませんよ」とまでいわれ、結婚もあきらめかけていたのです。鍼灸や整体に通い、少し楽になったものの、やはり生理になると鎮痛剤を飲まなければ動けません。
それが、コンブ酵母などの手作り酵母を、そのまま飲んだり、料理に使ったりしているうちに、だんだん体調がよくなっていきました。
体調が悪く、食欲がないときでも、コンブ酵母で作ったスープなら、スーッとのどを通ります。そして次の日には、体調が復活しているのです。
そんな生活を続けて2年ほど経ったころ、婦人科検診を受けました。すると、医師が「とてもきれいな子宮ですよ」というのです。卵巣嚢腫もかなり縮小していました。
確かにそのころには、生理痛も軽減し、十数年ぶりに鎮痛剤なしで過ごしていました。
その後、私は結婚し、子宝にも恵まれました。つわりの時期も酵母に助けられ、離乳食にも酵母を活用しました。自分も子供も、酵母によって心と体を養っているという実感を得ることができました。
今はウエダ家の企画・広報担当として、手作り酵母の情報発信に努めています。
手作り酵母のなかでも、コンブ酵母は失敗が少ないので、初心者にはお勧めです。ぜひ、生活に取り入れてください。

ウエダ家の皆さん。左から、父・夏雄さん、長男・遊さん、長女・亜弥さん、次女・好さん