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【名医が解説・脊柱管狭窄症とは】治療、薬、手術の適切な進め方

【名医が解説・脊柱管狭窄症とは】治療、薬、手術の適切な進め方

脊柱管狭窄症の症状に悩む患者さんのなかには、「どうせ手術するなら、早いうちにやってしまったほうがいい」と考え、安易に手術に踏み切る人もいるようです。しかし、脊柱管狭窄症の場合、早く手術をすればいい、というものではないのです。【解説】小森博達(横浜市立みなと赤十字病院副院長・整形外科部長)

解説者のプロフィール

小森博達
横浜市立みなと赤十字病院副院長・整形外科部長。
東京医科歯科大学医学部卒。日本整形外科学会整形外科専門医。
日本整形外科学会脊椎脊髄病医。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医。
専門分野は、脊椎・脊髄疾患、腰部椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、頸髄症、脊髄腫瘍。

●横浜市立みなと赤十字病院
整形外科(整形・脊椎外科、整形・関節外科、手外科・上肢外傷整形外科)
http://www.yokohama.jrc.or.jp/medical_part/medical_view.html?belong_code=8

脊柱管狭窄症の最も特徴的な症状は、間欠性跛行

 脊柱管狭窄症は、神経の通り道である脊柱管が狭くなって起こる病気です。50代以降、加齢とともに増えていきます。
 ただし、脊柱管狭窄症は、ガンのように、このステージだとこの治療、というような、わかりやすい目安はありません。症状が進行すれば手術が必要になるケースはありますが、絶対的な基準がないため、いつ手術すべきか、判断に迷う人も少なくありません。

 私自身は、「手術はいろいろ試してからの最終手段」という考え方を持っています。患者さんのなかには、「どうせ手術するなら、早いうちにやってしまったほうがいい」と考え、安易に手術に踏み切る人もいるようです。

 しかし、脊柱管狭窄症の場合、早く手術をすればいいというものではないのです。
 最近でも、「医師にいわれるまま手術をしたのに、ちっとも症状が改善しない」と私たちの病院を訪ねてくる患者さんがたくさんおられます。
 こうした場合、そもそも最初の診断が間違っていて、脊柱管狭窄症ではないのに切ってしまったケース、手術自体はうまくいったものの痛みやしびれが消えないケースなど、さまざまな状況が想定されます。

 脊柱管狭窄症の最も特徴的な症状は、間欠性跛行でしょう。これは、歩いたり立ち続けていたりすると、足腰に痛みやしびれが出て、立っていられなくなり、イスに座って少し休むと、回復するというものです。

 脊柱管狭窄症の手術は、脊柱管が狭くなって、神経を圧迫しているところを広げます。そうすれば、間欠性跛行はよくなります。しかし、安静時に感じていたしびれは、手術をしても取れないケースがしばしばあるのです。

 また、手術の際は、背中の腰の部分を切るのでダメージが残ります。これがきっかけで、腰痛が起こることもあります。
 もちろん、早めに切って手術がうまくいく場合もあります。しかし、ここまでお話ししてきたようなケースも数多くあるので、慌てて手術を行うことについては、私は決して賛成できません。

脊柱管狭窄症に効果的とされる薬「プロスタグランジン」

 では、脊柱管狭窄症の治療や手術はどのように進めるのがいいのでしょうか。

 第一に、患者さんが、この病気についてよく理解することが肝心です。実は、ほとんどの患者さんは、脊柱管狭窄症がどういう病気かわかっておられません。また、ご自身の症状も曖昧にしか認識していないのです。「間欠性跛行は、どれくらい歩くと出ますか?」と聞いてみても、そういう観点から自分の症状を見たことがないため、初診の患者さんで答えられる人は、ほとんどいらっしゃいません。

 脊柱管狭窄症が、どういう病気なのか、ある程度理解してもらったら、私は次に、毎日一定の距離を歩くことをお勧めします。公園でもスーパーでもどこでもけっこう。間欠性跛行が出るまでにどれくらいの距離を歩けるか、ご自分の今のレベルを把握してもらうのです。

 それとともに、脊柱管狭窄症に効果的とされる薬を処方します。この薬は、狭窄部分を治す薬ではありません。プロスタグランジンといって、末梢の血行をよくする薬です(胃腸障害、出血しやすくなるなどの副作用が出る場合があります)。
 脊柱管が狭まると、神経に栄養を送っている末梢血管が圧迫されます。こうして血行障害が起こると神経が酸欠となり、痛みやしびれが出てくるのです。薬で末梢の血流をよくしてやれば、酸欠だった神経にも酸素や栄養が行き届き、症状が回復します。

 この薬は、およそ6割のかたに効果があります。飲み始めて1週間から10日ほどで効果が現れ始めます。10分しか歩けなくなっていた人が30分歩けるようになることもあります。

 しかし、数ヵ月間服用していくと、それ以上よくならない時期がやってきます。薬の効果にも限度があるのです。薬のおかげである程度動けるようになり、その現状に患者さんが満足できるなら、手術は回避できるでしょう。

 逆に、この状態で満足できず、日常生活にも支障を来すということなら、手術を考えることになります。手術をするかしないかを決めるのは、医者ではなく患者さん自身。年齢、家庭や住居の環境、趣味などいろいろな要素を考慮して決断する必要があるのです。

 特に、これからの人生をどう過ごしたいのか、それに合わせて手術を選ぶかどうかを考えていただきたいと思います。
 以前、90歳のご婦人が手術を希望されたことがありました。たいてい、これくらいのご高齢になれば手術は勧めません。しかし、そのかたの生きがいは旅行とのことでした。間欠性跛行があると、ほかの人に迷惑をかけるため、団体旅行に参加できません。「旅行に参加できないくらいなら死んだほうがまし」とまでおっしゃり、手術を選択したのです。

 このように、趣味や仕事など自分の生き方、生活環境などと照らし合わせて、納得ずくで手術を選択することが大事なのです。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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