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不安で眠れない時に食べる「干し納豆」の効果 不眠を解消する食べ物

不安で眠れない時に食べる「干し納豆」の効果 不眠を解消する食べ物

胸が熱くなって、なかなか眠れないという不安神経症の患者さんに、干し納豆を勧めたことがありました。不安感が強いときに干し納豆を大さじ1杯ずつ食べてもらったところ、医師に処方されていた不安神経症の薬の服用を減らすことができたのです。また、口臭もなくなったと喜んでいました。【解説】惠木弘(恵心堂漢方研究所所長)

解説者のプロフィール


惠木弘(えぎ・ひろし)
1959年明治薬科大学卒業。薬剤師。1967年に薬局を開設し、1971年香港で中医学を学ぶ。
現在、恵心堂漢方研究所所長、城西国際大学薬学部非常勤講師、日本東洋医学会会員、港九中医師公会永遠名誉会員。全国で医師、薬剤師、一般市民向けの講演活動を行っている。
主な著書に『漢方処方生薬図鑑』(草隆社)、『体がよろこぶ!「効く」漢方の正体』(草隆社)、『実践中医学』(新樹社書林)がある。

急性感染症の救急薬として使われていた

干し納豆は、中国では漢方生薬として使われています。
生薬名を淡豆鼓(たんずし)、または香鼓(こうし)、豆鼓(とうち)とも言い、いずれも煮た大豆(または黒大豆)を麹菌で発酵させて加工したものです。

干し納豆(淡豆鼓)の処方が初めて登場するのは、中国最古の医学書と言われる『傷寒論』です。
これは1800年ほど前の後漢末期から三国時代にかけて、張仲景という人が編纂した書物です。

当時、はやり病だった傷寒(腸チフスのような高熱を伴う急性感染症)で、大勢の人が命を落としました。
張仲景はそういう人々を救いたいと、傷寒に効くとされる救急薬を集めて、傷寒論にまとめたのです。

漢方薬は、慢性病にゆっくり効くというイメージが強いですが、そうではありません。
この傷寒論の話でわかるように、漢方薬は、急性病の救急薬として使われていたのです。

その救急薬の一つが、干し納豆とクチナシの果実を煎じた「梔子鼓湯(しししとう)」です。
この薬は、他の傷寒の薬を飲んでもまだ、「心中懊憹(しんちゅうおうのう)し、虚煩(きょはん)があって眠れない」人に処方されました。

心中懊憹とは、胸の辺りに熱がこもって、悶え苦しむ状態のことです。
当時の急性感染症の治療は、汗を出す汗法、胃の中のものを吐く吐法、下剤で下痢を促す下法が中心でした。

そうやって熱や毒を体の外に出してもなお、胸の辺りに熱が残り、痛みがあったり、不安やイライラや鬱々とした気分で眠れないようなときに、救急薬として使われたのです。

梔子鼓湯は、現代でも心中懊憹のある患者さんに処方します。
ただし、栄養状態がよく、医学の進歩した現代では、昔のような熱性急性感染症が起こることはめったにありません。

ですので、精神的なことで思い煩って、眠れなくなる不安神経症のようなケースや、打撲などで胸を打ち、胸の辺りに熱がこもって痛みが引かないようなケースに使われます。

原因はどうであれ、胸にこもった熱を下げるのが、この薬の主な働きです。

漢方で使用される干し納豆 「淡豆鼓」

干し納豆は神経不安症を和らげる効果が期待できる

心中懊憹をわかりやすく説明すると、胸にガスの口火のような火が一日中ついているような状態です。

健康な人なら、夜になると火は消えて、自然に眠りにつきます。
ところが小さな火がついたままだと、体内では昼の時間がいつまでも続いており、眠れなくなってしまいます。

梔子鼓湯は、その火を消して熱を下げ、体内と脳をクールダウンする作用があるのです。

しかし難点が一つあります。
淡豆鼓を煎じると、なんともいえないにおいが発生するのです。
鼻をつままないと飲めないほどです。

そこで、知り合いの鍼灸師が、クチナシだけを煎じて患者さんに飲んでもらいました。
するとにおいはなく飲みやすくなったものの、熱を下げる効果が出なかったそうです。

このことからも、淡豆鼓(干し納豆)に熱を下げる強い効果のあることがわかります。

梔子鼓湯は、淡豆鼓とクチナシの配合量が細かく決まっており、また、においも強いので、一般のかたが自分で煎じて飲むのは難しいと思います。

しかし、梔子鼓湯ほどの薬効はないとしても、干し納豆を食べるだけでも、胸の辺りの熱を下げ、神経不安症を和らげる効果が期待できます。

干し納豆は不安で眠れない人に効果

以前、胸が熱くなって、なかなか眠れないという不安神経症の患者さんに、干し納豆を勧めたことがありました。

不安感が強いときに干し納豆を大さじ1杯ずつ食べてもらったところ、医師に処方されていた不安神経症の薬の服用を減らすことができたのです。

また、口臭もなくなったと喜んでいました。
口臭は、胸にこもった熱による内臓の機能障害の影響と考えられます。
口臭が消えたということは、胸の熱も下がっていると思われます。

ただ、不眠が治るにはもう少し時間がかかりそうです。

このように、胸の辺りがなんとなく落ち着かない、不安で眠れないという人は、干し納豆約50g(納豆1パック分)を目安に、1日2〜3回に分けて食べるといいでしょう。
ただし、市販の干し納豆は塩分が入っているので、体を温める作用があります。
熱を冷ますには、塩分を使わない手作りの干し納豆がお勧めです。

体質に合っていれば「良薬口に甘し」

「良薬口に苦し」とよく言います。
しかし漢方薬は、「良薬口に甘し」で、現在の体調や、体質に合っていると、薬がおいしく感じられます。
ですから、干し納豆がおいしく感じられれば、体調、体質に合っているということです。

なお、干し納豆には乳汁の分泌を抑制する作用があるので、授乳中のご婦人は、食べるのを控えたほうがよいでしょう。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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