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リハビリの専門医が勧める筋力アップ体操 「超スロー・スクワット」 とは

リハビリの専門医が勧める筋力アップ体操 「超スロー・スクワット」 とは

「老化は足から」とよく言われますが、私は長年の診療経験から、太ももは生命力の源であり、長寿のバロメーターと言っても過言ではないと思っています。ひざに痛みがある人は、大腿四頭筋が衰えていることが多いので、普段から太ももを動かし、鍛えておくことがたいせつです。【解説】林泰史(原宿リハビリテーション病院名誉院長)


解説者のプロフィール

林泰史(はやし・やすふみ)
原宿リハビリテーション病院名誉院長。
高齢者医療・骨研究・リハビリテーション医療の第一人者。
京都府立医科大学卒業。
1999年、東京都多摩老人医療センター院長、2002年、東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)院長、東京都老人総合研究所所長兼任。
06年、東京都リハビリテーション病院院長、15年、一般社団法人巨樹の会 原宿リハビリテーション病院名誉院長。著書に『100歳まで歩ける脚づくり』(メディカルトリビューン)、『リハビリ病院の名医が教える 太ももを鍛えれば骨は超強くなる』(三笠書房)など多数。

太ももは長寿のバラメーター

私は主に高齢者の整形外科、リハビリテーションの専門の医師として五十余年、10万人を超える患者さんを診てきました。

「老化は足から」とよく言われますが、私は長年の診療経験から、太ももは生命力の源であり、長寿のバロメーターと言っても過言ではないと思っています。
患者さんの太ももを見れば、その人の寿命がだいたいわかります。

筋肉がしっかりと付いている、太くて立派な太ももであれば、元気に長生きできます。
特に太ももの前面にある大腿四頭筋は、体の中でいちばん大きくて分厚い筋肉です。

大腿四頭筋の4つの大きな筋肉が操り人形の吊り糸のように、ひざ関節をバランスよく支えながら動かし、コントロールしています。
大腿四頭筋の働きによって、立つ、座る、歩くなどの日常のさまざまな動作が円滑に行えるというわけです。

太ももの前面に付いている太い筋肉が「大腿四頭筋」

ひざ痛がある人は大腿四頭筋が衰えていることが多い

大腿四頭筋が衰えると、ひざが曲がって伸びなくなり、速く歩けなくなったり、足の運びも悪くなったりします。
歩くときもつまずいたり、ふらついたりして、転倒しやすくなるのです。

高齢者にとっての転倒は、寝たきりを招く由々しき事態です。
太ももが衰えれば、足が重く感じたり、歩くのがおっくうになったりするなど、疲れやすくなります。

また、ひざに痛みがある人は、大腿四頭筋が衰えていることが多いので、普段から太ももを動かし、鍛えておくことがたいせつです。
大腿四頭筋を鍛えると、足の運びがよくなって、歩きやすくなるほか、ひざ関節が揺れずに安定するので、ひざの痛みなどの不調も消えていきます。

足と脳は関係がある

さらに、さまざまな調査や研究により、足と脳には非常に深い関係があることがわかってきました。

足の機能や筋力が衰えると、脳の働きも比例するように衰えてしまいます。
反対に、足の機能や筋力が向上すれば、血流がよくなって、脳細胞への血流量も増えるので、脳の働きも活性化するのです。

ですから、太ももを鍛えることによって、転倒や認知症、骨粗鬆症などのさまざまな「老年症候群(※)」をくい止め、老化を遅らせることができるのです。
※ 老年症候群とは、加齢に伴い高齢者に多くみられる、医師の診察や介護・看護を必要とする症状・徴候の総称のこと

70代の足の筋力は20代の半分以下

これほど重要な太ももの筋肉ですが、実は手の筋肉に比べると、足の筋肉が衰えるスピードは2倍以上。
60~70代の人なら、足の筋力は20代のときの50%以下に減ってしまいます。
つまり、太ももは常日頃から努めて鍛えておかなければいけない部位と言えるでしょう。

理想は、おなかと両太ももの横幅が同じくらいであること。
もし、太ももが棒のように細かったり、太っていておなかのほうが大きかったりすれば、要注意です。
体やひざを支えるために、相応の大腿四頭筋を増強する必要があります。

大腿四頭筋を強化するのに、もっとも手軽で効果的な方法が、今回ご紹介する「超スロー・スクワット」です。

太ももの老化度をチェック

「超スロースクワット」で10歳若返ったように歩きやすくなった

私が勤めているリハビリ病院には、主に骨折や脳卒中、人工関節の置換手術をして、歩行が困難になった患者さんが来られます。
そういった患者さんたちに、退院後の自宅でのリハビリで必ず取り組んでもらうのが大腿四頭筋の強化、つまり超スロー・スクワットなのです。

超スロー・スクワットをすると、足腰が弱って、歩いているときにつまずいたり、ふらついたりするかたや、歩きにくくなったかた、ひざに痛みや違和感があるかたも皆さん、総じてよくなられます。

患者さんからは、「10歳若返ったように歩きやすくなった」「半日くらいデパートを歩き回れるようになった」「立っていられないほどのひざの痛みがなくなった」「安心して外出できるようになった」など、喜びの声を多数いただいています。

私自身も今78歳ですが、毎朝の通勤時、バス停でバスを待つ合間に、10~20回程度、超スロー・スクワットを行っています。

また、身近にある階段や坂道は「薬」と思って、努めて昇り降りし、1日1万1千歩は歩くようにしています。こうした健脚を保っていられるのも、毎朝の超スロー・スクワットで大腿四頭筋を鍛えているおかげです。

超スロー・スクワットをする林先生。通勤時のバスを待つ間に、10~20回実践している

ひざが悪い人もできる安全なスクワットのコツ

超スロー・スクワットの詳しいやり方は下の説明をご覧ください。

これは、足が弱っている人や、ひざに痛みを抱える人でも安全にできるように、いすや壁などに軽くつかまって行います。

動作は次のように行います。

①3秒かけてしゃがむ

②5秒間そのままの姿勢でキープ

③2秒かけて立ち上がる


コツは、体重を足裏のかかとにかけて、動作を「ゆ~っくり」行うことです。
「超」がつくくらいですから、「ゆっくり」よりも、さらにゆっくり行う「ゆ~っくり、ゆ~っくり」です。
そうすることで、太ももの前面の筋肉に効いている感覚がつかめるでしょう。

超スロー・スクワットは、ひざ関節を30~40度までしか曲げないので、ひざへの負担が軽いスクワットです。
ひざが悪い人でも試してみてください。

超高齢化社会で、これから「人生100年時代」を迎える日本は、今後、要介護者が増加する可能性があります。
寝たきりや要介護を回避するためにも、足腰の筋力強化は必須です。

私の50歳の頃の夢は、寝たきりになった人を立ち上がらせることでした。
今では寝たきりの状態から室内を歩けるまでよくなったり、介護が必要ないレベルまで回復できたりするケースも増えてきました。
私たちの体は、何歳であっても動かすことで、強くたくましくなっていきます。

若返りの一助に、また100歳まで元気で歩ける足をつくるために、超スロー・スクワットを日々の生活の中にぜひ取り入れてみてください。

100歳まで歩ける「超スロースクワット」のやり方

安全に行うために、いすや壁などで軽く支えて行ってください。

・両足を肩幅に開いて立つ。姿勢はまっすぐ
・息を吐きながら3秒かけて、ゆ~っくりと腰を下ろす

・ひざを30~40度曲げたまま、5秒間キープする
・このとき、ひざ頭はつま先より前に出さないようにする

・息を吐きながら2秒かけて、ゆ~っくりとひざを伸ばして、元の姿勢に戻る

■ポイント■
・体重は、足裏のかかとにのせる
・ひざを曲げた状態で5秒間静止すること
・ゆ~っくり ゆ~っくり行う
・数えるときには、「1、2、3」だと実際の1秒より短くなりがちなので、「101、102、103」のようにカウントすると、ちょうど1秒になる

※壁やドアに手をついてやってもいい

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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