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少年野球で【肩・肘を壊す】原因 子供と大人の骨の違い

少年野球で【肩・肘を壊す】原因 子供と大人の骨の違い

野球特有の表現に「ひじをこわす」「肩をこわす」という言葉があります。「壊す」という恐ろしい言葉は、ほかのスポーツではあまり使いません。残念なことに「壊す」という言葉は野球では一般化していますが、これは野球によるケガの多さや重症化しやすいことを表しています。【解説】山本智章(新潟リハビリテーション病院院長)


「ひじを壊す」とは?

 野球特有の表現に、「ひじをこわす」「肩をこわす」という言葉があります。「こわす」などという恐ろしい言葉は、ほかのスポーツではあまり使いません。残念なことに「こわす」という言葉は野球では一般化していますが、これは野球によるケガの多さや重症化しやすいことを表しているのではないでしょうか。

 こわさないまでも、ひじを痛める小・中学生は少なくありません。野球ひじが子供に多いのは、そもそも大人と子供では体のつくりが違うからです。それは体の大小の違いではなく、体の内側の、目には見えない部分で起こっています。まずは小・中学生の体の特徴を理解しておきましょう。

小学5年生の肘関節のX線写真

 小・中学生の時期の子供は、成長期にあたります。とくに、この時期は骨が縦方向に伸び、身長がどんどん高くなります。
 写真①は成長期にあたる小学5年生(男子)の正常なひじ関節のX線写真です。骨には、両端の骨端と、骨端ではさまれた骨幹の部分がありますが、X線写真には骨端部分に亀裂のような線が入っています。これは骨端線と呼ばれる軟骨層で、成長期の子供だけに見られるものです。

 骨端線の部分には骨端核があり、ここから骨端軟骨(成長軟骨)がつくりだされて、時間とともに硬い骨に変わり、これが積み重なって骨が成長します。骨端線や骨端核は、いわば骨の製造工場で、そこから最初につくりだされる軟骨は、骨端に骨端核をとりあえずくっつけている接着剤のようなものです。

中学2年生の肘関節のX線写真

 成長期を過ぎると成長軟骨はつくられなくなり、それまでにつくられた成長軟骨は硬い骨になります。最終的に骨端と骨幹がいっしょになって1本の骨になると、骨端線も閉じてなくなります。これを骨端線閉鎖といい、骨端線閉鎖をもって大人の骨が完成します。

 一方、写真②は、中学2年生になる野球部員のひじのX線写真です。写真①の小学5年生の選手の骨には骨端線も骨端核もハッキリ確認でき、まさしく子供の骨の状態なのに対し、写真②には骨端核も骨端線もハッキリと写っていません。こちらの選手の場合、大人の骨に近づいています。

 骨端線が閉鎖する年齢には個人差があり、中学校高学年で大人の骨になる子もいれば、高校生になっても骨が成長を続けるケースもあります。骨端線閉鎖は、だいたい12〜24歳くらいの間に起こります。ちなみに、現在(*掲載時)、北海道日本ハムファイターズで活躍中の大谷翔平選手は高校生になっても成長し続け、高校入学時に186センチだった身長が、卒業時には193センチと7センチも伸びたそうです。

 骨が成長を続けるうち、すなわち、成長軟骨がつくられている時期は、軟骨部分は柔軟性に富むと同時に、とても弱くてデリケートです。物と物の間にぬった接着剤が、乾いて硬くなる前の状態を想像してください。このように、ほとんどの小学生は、まだデリケートな軟骨がある子供の骨のまま野球をしているのです。

小中学生は、骨と筋肉の成長速度がアンバランス

 一方、成長期には筋肉も成長しますが、骨ほどの勢いはまだありません。筋肉がより大きく、より強くなるのは、高校生くらいになってからです。身長の差はあれ、小・中学生がヒョロッとしているのは、筋肉よりも骨の成長を優先的に行っているからです。

 自然のこととはいえ、実は、この骨と筋肉の成長速度のアンバランスがちょっとやっかいです。というのは、骨が筋肉以上のスピードで成長するため、筋肉が骨を引っぱるような状態になるからです。

 しかも、筋肉は骨端に付着しています。骨端が引っぱられると、同時に軟骨も引っぱられます。これは、接着剤で仮止めしてある物をはがそうとする力が働いている、とイメージするとわかりやすいでしょう。

 この軟骨をはがそうとする力は、骨の成長と筋肉の成長のバランスがとれるまで常に働いています。たとえば、すねや太ももの骨では、歩いたり座ったりするだけでもこの力が強くなり、運動をすることでさらに強い力が働きます。

成長期の子供の体はデリケート

 骨端と骨幹の硬い骨は、このような力がかかってもびくともしません。その代わり、すべての力が弱くてデリケートな軟骨にかかってきます。その負荷がいわゆる成長痛につながり、軟骨が負荷に耐えきれなくなったときに痛みや炎症が生じます。

 ちなみに、大人の場合は骨端と骨幹がくっついて1本の強い骨になっているので、骨より強度の低い靱帯(骨と骨をつないでいる弾力性のある線維)や筋肉そのものに負荷がかかり、靱帯を痛めたり肉離れを起こしたりします。

 このように、成長期の子供の体はとてもデリケートな状態にあります。子供の体の状態を考えるときには、「子供の体は大人のミニチュア版ではない」と理解することが大切です。大人並みの身長の子でも、体自体はまだ子供のままなのです。身長だけを見て「大人になったなあ」と考えるのは大きな誤解です。

解説者のプロフィール

山本智章(やまもと・のりあき)
1959年、長野市生まれ。76年、長野県屋代高校入学と同時に野球班に所属。79年、新潟大学医学部入学。準硬式野球部に入部。85年、新潟大学整形外科入局。93年、米国ユタ大学骨代謝研究室。2001年、新潟リハビリテーション病院整形外科勤務。10年、同病院院長。日本体育協会公認スポーツドクター、新潟アルビレックスベースボールクラブチームドクター、新潟市野球連盟副会長、新潟市少年硬式野球連盟医事顧問、野球障害ケア新潟ネットワーク代表。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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