【野球ひじへの対処法】肘が痛くなったら 早期に治すための対策と予防法はコレ

【野球ひじへの対処法】肘が痛くなったら 早期に治すための対策と予防法はコレ

「病院に行くと、休めって言われる。休むと、試合に出られなくなっちゃう」この会話に、子供たちの気持ちと、彼らを取り巻く環境が如実に現れています。病院が「休め」と言うのは事実です。しかし、医療に携わる人間として、休むことが一番大切な治療だということを知ってほしいのです。【解説】山本智章(新潟リハビリテーション病院院長)


ひじが痛くなったら

 野球大会に参加した小学生546名を対象に私たちが行った調査では、53%にあたる290名の子供が体のどこかに痛みを感じていました。そのうちひじに痛みがあると答えたのは、全体の24%、116名にのぼりました。

 野球ひじに関しては、医師と患者さんである子供との間で、以下のようなやり取りがよくされると聞きます。また実際に、私も同様のやり取りを数多く経験しています。

「どうしてこんなになるまでほうっておいたの?」
「少し休むと痛くなくなるんです」
「どれくらい休んだの?」
「1日くらい。サボってると思われるのがいやで……」
「病院に来ようと思わなかったの?」
「病院に行くと休めっていわれるし、休むと試合に出られなくなっちゃうから」

 この会話に子供たちの気持ちと、彼らを取り巻く環境が如実に現れています。大会期間中に痛みを抱えていた子供たちも、同じような気持ち、同じような環境にあったのではないでしょうか。

「病院へ行くと休めといわれる」は事実です。しかし、その半面、早く医療機関で診てもらえば休む期間も短くてすみます。医療に携わる人間として、「痛みが出たら休むことがいちばん大切な治療であり、早く診てもらえば休む期間も短くてすむ」という認識を子供たちに持ってもらえるよう、もっと努力が必要だと考えています。私たちだけでなく、保護者や指導者と連携した取り組みをしなくてはなりません。

 では、実際にひじに痛みを感じた場合、医療機関の受診を含め、どのような対処をすればよいのでしょうか。三つのケースを紹介します。

●ケース1:休めば治る

 野球ひじは強い力が加わって負ったねんざや骨折などのケガ(傷害)とは違い、使いすぎによって負荷が加わり続けることで、慢性的な疲労がたまって起こる故障(障害)です。ですから、痛みを感じたらまずは休んで、ひじ周辺の組織の回復を待つべきです。

 具体的には、痛みを感じたら、まず1週間は練習を休みます。「痛む」→「休む」→「治る」のパターンで、自然に野球ひじは治ります。まずはこの段階で休み、治ってからも徐々に復帰することが大切。投球数をへらすなどで治していくという方法は間違いです。休むことも練習メニューの一つなのです。

 小学生の場合、このように「休めば治る」ことをまず確認してください。

●ケース2:痛みが消えても復帰するとまた痛む

 1週間休んで痛みが取れても、復帰して徐々に投球数を戻していくうちに痛みがぶり返すこともあります。そこで、休む期間を延ばして10日間にして復帰したものの、また痛みがぶり返す。このように、じゅうぶんに休んだつもりでも痛みが再発するケースがあります。

 このような場合は、骨や軟骨になんらかの問題が起こっていることが考えられるので、ただちに医療機関を受診しましょう。骨や軟骨に問題がある場合、外見や通常の検査だけでは判断できません。X線検査を受けて、ひじの中の異常や問題をチェックし、医師の適切な判断を仰ぎます。

 また、医療機関での治療後、時間をおいて再発する場合は、投げ方の問題や体の機能が低下してひじに負担がかかりやすくなっていることも考えられます。野球肘を改善・予防するストレッチなどを日ごろから行いましょう。

●ケース3:痛みがない状態ながら、検診などで野球ひじが見つかった

 小学校高学年(5・6年生)では、X線検査や超音波検査で、利き腕のひじの内側の骨端になんらかの変化が出ることがあります。この場合、痛みがなく、ひじも正常に動けば投球を制限する必要はありません。しかし、ひじの外側(親指側)の変化が見つかった場合には、症状がなくても一定期間、投球を含めて野球を休んだほうがよい場合があります。

 外側型の野球ひじは「沈黙型」で、痛みを感じないままに密かに進行し、痛みが出たときには、ひじの外側の骨や軟骨に穴が開いたり、軟骨がはがれ落ちていたりすることも考えられます。医師の適切な判断を仰ぎ、おおむね月単位で治療と休養が必要になります。外側型野球ひじは、中学生や高校生で大人の骨になってから見つかった場合は、手術が必要な場合もあります。小学生の早期に見つけて、しっかり治すことが検診の目的になります。

外側型野球肘の発見は、野球肘検診を受けることが望ましい

 子供の立場に立つと、「痛いというと試合に出られないかも」と心配します。また、そもそもどれくらいの痛みが「痛い」ことなのか判断できません。痛みは本人にしかわからないので、保護者も指導者も見過ごしがちです。

 指導者は、指導しているすべての子供にはなかなか目が届かないのが現実です。子供のことをマンツーマンで見られる保護者のみなさんに、ぜひ自分のお子さんを注意深く観察されることを強くお願いします。

 とくに外側型野球ひじの場合、痛みがないまま進行するので、外側・内側(小指側)、痛みのある・なしにかかわらず、後述する野球ひじ検診を1年に1度は必ず受けてください。

解説者のプロフィール

山本智章(やまもと・のりあき)
1959年、長野市生まれ。76年、長野県屋代高校入学と同時に野球班に所属。79年、新潟大学医学部入学。準硬式野球部に入部。85年、新潟大学整形外科入局。93年、米国ユタ大学骨代謝研究室。2001年、新潟リハビリテーション病院整形外科勤務。10年、同病院院長。日本体育協会公認スポーツドクター、新潟アルビレックスベースボールクラブチームドクター、新潟市野球連盟副会長、新潟市少年硬式野球連盟医事顧問、野球障害ケア新潟ネットワーク代表。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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