解説者のプロフィール

白澤卓二(しらさわ・たくじ)
●白澤抗加齢医学研究所
https://www.shirasawa-acl.net/
白澤抗加齢医学研究所所長。
千葉大学医学部卒業。
同大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。
東京都老人総合研究所病理部門研究員、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー、順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授を経て、2015年より現職。
専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学など。
著書は『白澤卓二教授の朝りんごダイエット』(マキノ出版)など200冊以上。
テレビや雑誌などでのわかりやすい医学解説が好評。
「甘いものが欲しい」は砂糖中毒の証拠

「砂糖は体に悪い」
これはほとんどの人が、なんとなく理解していることだと思います。
特に恐ろしいのは、砂糖の持つ中毒性、依存性です。
ここ数年、空前のスイーツブームが起こっています。
コンビニやスーパーで売っているデザートやケーキ類、焼き菓子、菓子パン、スナック類なども以前よりもとてもおいしく作られていて、人気も売り上げも、うなぎ登りのようです。
しかし、それに比例して、日本人の砂糖摂取量も急増しています。
砂糖は一度摂取すると、しばらくしてまた欲しくなる中毒性を備えています。
「体が疲れたので、甘いものが食べたい」。
これは脳が栄養を欲しているからではなく、単に砂糖の中毒症状なのです。
「体に悪いことがわかっていても、つい手が出てしまう」「やめようと思ってもやめられない」というレベルになると、もう麻薬と一緒です。
麻薬に中毒性があり、危険なのは誰もが理解しています。
しかし、「甘いものが欲しくなる」のは自然なことだと思っています。
これがとても怖いところなのです。
病気の原因は肥満ではなく砂糖
砂糖の取りすぎが危険なのは、血糖値が急激に上がり、糖尿病のリスクが高まるからです。
人間は進化の過程で飢餓状態の歴史のほうが長かったので、現代の日本のように、砂糖が必要以上にあり、血糖値が急上昇するという状況は想定されていませんでした。
そのため私たちの体内には、血糖値を上げようと働くホルモンはたくさんありますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。
ところが、砂糖中毒に陥った現代人は、ことあるごとに砂糖を取り、常に血糖値が上がりやすい状態にあります。
しかし、血糖値を下げるためのホルモンは1つしかないので、血糖を下げるシステムが間に合わなくなり、糖尿病という病気を発症するわけです。
ここで、「糖尿病などの生活習慣病の原因は肥満だ」とよく言われます。
しかし、糖尿病や高血圧などの患者さんを見ると、太っていない人も多くいます。
砂糖中毒になると、太っていないかどうかに関係なく、生活習慣病になりやすくなります。
生活習慣病の原因は肥満ではありません。
砂糖こそが諸悪の根源なのです。
袋に入った加工食品は買わない!
この話を患者さんにすると、
「家で料理をするときに、そんなに白砂糖を使っていません」と言うかたがいます。
しかし、実は怖いのは、台所の砂糖ではありません。
「目に見えない砂糖」なのです。
先に挙げたコンビニやスーパーで売っている菓子やパン類などの加工食品には、大量の砂糖が含まれています。
レトルト食品やカップ麺、お弁当屋さんで売っているお弁当や総菜なども然りです。
そして、砂糖とともに気をつけたいのは、人工甘味料です。
最近では、一般家庭の調理では使われることのない香料や乳化剤、人工甘味料を多く使用している加工食品のことを「超加工食品(ウルトラ加工食品)」と呼ぶようになりました。
袋詰めされたパンや焼き菓子、スナック類、シリアルのほか、チキンナゲットなどの再構成肉、即席麺類、即席スープ、清涼飲料水など、日本のコンビニやスーパーに置かれている「袋入り」食品の多くは超加工食品と考えられます。

ブラジルのサンパウロ大学栄養学科の研究チームの報告によると、米国人が摂取する総カロリーのうち、これら超加工食品から摂取している割合は約58%に上るそうです。
また、人工甘味料などの添加糖は約90%が超加工食品から摂取されているというデータがあります。
日本において、このようなデータはまだ発表されていませんが、販売されている製品はほぼ同じなのですから、同様の結果が予測されるか、日本の加工食品のほうが精巧で美味なため、もっと悪いデータになるかもしれません。
つまり、家庭で料理に使う砂糖を減らすだけはあまり意味がなく、コンビニやスーパーなどで販売されている、袋に入った超加工食品をやめなければならないのです。
血糖値が上がり、糖尿病になると、血管が傷むため、万病・老化の原因になります。
「世の中の多くの病気の原因は砂糖だ」と言っても言い過ぎではありません。
砂糖をやめること、袋に詰められた超加工食品を買わないこと、これが健康長寿のための第一歩なのです。