認知症の母に砂糖抜きのおやつを食べさせたい
私は、85歳になる母と暮らしています。
母も私も「発酵あんこ」が大好き。
「あんこトースト」や「あんこサンド」でよく食べますし、発酵あんこの「ぼたもち」は、母の大のお気に入り。
ほかにもアイスクリームに添えたり、手作り蒸しパンのあんにしたりと、甘いもの好きな母のおやつに、発酵あんこは大活躍しています。
母は、アルツハイマー型認知症を患っています。
以前は京都で暮らしていましたが、3年前に様子がおかしいことに気づき、かけつけると、腰を骨折して家の中を這いずり回るような状態でした。
もう独居は無理と思い、私が住む長崎の病院に入院させ、退院後から同居を始めたのです。
母と暮らし始めた最初の1年は、「介護ってこんなにもつらく厳しいものなのか……」と、打ちのめされる日々でした。
特に大変だったのが、排泄物の掃除です。
母はトイレを我慢できず、もらしてしまうのです。
紙パンツで補いきれないこともあり、そんなときは臭いがすごくて掃除も大変です。
母にそれを指摘すると、羞恥心からか「私がそんなことをするわけがない!」と怒ってしまうこともありました。
食べたものを覚えていないこともつらかったです。
私の留守中、母は家にあるものを、手当たり次第に食べてしまうのです。
健康面でも不安がたくさんありました。
もともと骨粗鬆症があるうえ、入院中に受けた検査で、血糖値や血圧が高いことが判明しました。
とりわけ気がかりだったのが、母の両足のひざ下が、パンパンに腫れていたこと。
まるで長靴をはいたように太く、「こんな足はあり得ない……」と恐ろしくなりました。
医師は「同じ姿勢でいるからむくみが取れないのか、たんぱく質の合成に問題があるのか……」と言っていましたが、原因は不明のまま。
利尿剤や降圧剤も試しましたが、足の腫れは改善しませんでした。
おもらしをしなくなり介護ストレスが激減!
初めて発酵あんこのぼたもちを母に出したときは、口に合うか心配でした。
というのも以前、私が作った甘酒を、母は残していたからです。
発酵あんこも、甘酒と同じ糀を使っているので、もしかしたら嫌いかもしれないと不安になりました。
ところが、母は「このぼたもち、おいしいね!」と喜んで食べてくれたので、心底ホッとしました。
以来、わが家では、発酵あんこのおやつが定番になっています。
食べ物はすべて、母の手の届かないところにしまい、私の留守中に食べていいのは発酵あんこのお菓子だけ、というルールにしたので、盗み食いの問題はなくなりました。
母の体調も驚くほどよくなりました。
まず、原因不明だったひざ下の腫れやむくみが、今ではかなり少なくなっています。
おなかの調子もよくなりました。
排泄のサイクルが安定したので、トイレを促すとその時に用を足せるようになり、おもらしが激減。
前と比べて、負担やストレスが減ったどころか、「天国」と言っていいほど介護が楽になっています。
さらに、血糖値や血圧も改善。
2017年1月に122㎎/㎗だった空腹時血糖が、同年6月には99㎎/㎗と正常化し、160㎜Hgあった最大血圧も140㎜Hgまで下がりました。
医師は「薬が効いているのかな」と言っていましたが、薬は飲ませていないので、発酵あんこをはじめとする食事の成果だと確信しています。
湿疹や皮膚炎が治まり85歳に見られない肌ツヤに
長崎に移った3年前、母は、鬼のような険しい顔つきをしていました。
自分が認知症になったショックや骨折の痛み、生活環境の変化などで、「自分の周りはすべて敵」という感覚だったのだと思います。
ところが、いまは別人のように表情が穏やかで、笑顔を見せることが増え、言葉遣いもやさしくなりました。
好きな甘いものを毎日食べられる満足感に加え、私も介護でイライラして母を叱ってしまうことがなくなったので、精神的に安定しているのでしょう。
心の安定が、表情に現れていると感じます。
以前はひどかった湿疹や皮膚炎も治まり、肌のツヤもよくなりました。
年齢を明かすと、看護師さんや近所の人から「85歳には見えない」と、驚かれるほどです。
私自身も、発酵あんこの効果を実感しています。
もともと軟便ぎみでしたが、毎日しっかりした便がたくさん出るようになりました。
また、まぶたのむくみが取れて、クッキリとした二重が復活しました。
太古の昔から、日本人が食べ続けてきたアズキには、邪気払いや魔除けに使われるなど、不思議なチカラがあるそうです。
また、利尿作用や毒出しの効果も高いと聞いてましたが、その通りだと実感しています。
いま、母と落ち着いた生活が送れるのは、「発酵あんこさま」のおかげ。
これからも愛食していくつもりです。
福島さんの発酵あんこの作り方
【材料】
アズキ…200g、乾燥糀…200g、自然塩…適量
【作り方】
❶たっぷりの水にアズキをつけて一晩置く(このときの水は捨てる)
❷たっぷりの水で1時間ほどアズキを煮る
❸アズキが柔らかくなったら自然塩を加え、残りの水分を煮詰めてとばす
❹ヨーグルトメーカーにアズキ、ほぐした乾燥糀、水1/2~1カップを入れて混ぜる。ドロッとした状態になるといい具合(下写真)。水分量が少なすぎると発酵しづらく、多すぎると薄いあんこになる
❺60℃の温度設定で6時間置いて完成。保温中、水分が足りない場合は60℃のお湯を足す

アズキ、糀、水を混ぜたところ
福島さんの発酵あんこ活用法

朝食によく食べる「あんこトースト」

あんこの「ぼたもち」に好物のきな粉をまぶして

時間がないとき重宝する「あんサンド」

パンケーキに生クリームとあんこを添えて
私は母に、薬をたくさん飲ませたくありませんでした。
数値を改善させるのも、心を安定させるのも、すべては食べ物だと思ったので、素材にこだわった食事(和食)を作るようにしました。
特に、腸がいちばん大事と聞いたので、腸内環境がよくなる発酵食品を、積極的に食卓に出すようにしました。
「母のおなかの調子を安定させて、排泄の問題をなんとかしたい」という思いもありました。
困ったのはおやつです。
母に、砂糖たっぷりのお菓子を毎日あげることには、抵抗がありました。
甘いものを食べた満足感があり、簡単に手作りできる、砂糖抜きのおやつはないか。
試行錯誤した末、2年ほど前にたどり着いたのが、発酵あんこだったのです。