解説者のプロフィール

池川明(いけがわ・あきら)
池川クリニック院長。産婦人科医。
1954年、東京都生まれ。89年、横浜市に産婦人科の池川クリニックを開設。年間約100件の出産を扱う(現在、分娩の扱いはしていない)。2001年、全国の保険医で構成する団体連合医療研究集会で「胎内記憶」について発表し、新聞などで紹介されて話題となる。現在は、産婦人科医のかたわら、胎内記憶にもとづく子育て観や人生観を全国で講演、好評を博す。著書は『赤ちゃんが泣きやむ!すぐ眠る!「ママの心音」CDブック』(マキノ出版)など多数。
●池川明公式サイト
http://ikegawaclinic.net/sites
心音は胎内の記憶とつながる音
「心音のCDを聴かせると、泣き叫んでいた赤ちゃんが落ち着き、寝かしつけに効果があった」、
「赤ちゃんだけでなく、いっしょに聴いていたお母さんなど、大人も癒され、よく眠れるようになった」
という事例が多く報告されています。
なぜ、心臓が鼓動する音=心音にこうした癒しの力があるのでしょうか。
私のこれまでの研究から、その理由を考察してみたいと思います。
私は産婦人科医として、これまで子育てに悩むたくさんのお母さんたちと向きあい、新生児や胎児の心理についても研究をしてきました。
その中で気づいたのは、「胎内の赤ちゃんには意識がある」ということです。
2000年からは「胎内記憶」に関する調査を行い、胎内にいたときの様子や、生まれてくるときのことを覚えている子どもたちが数多くいることがわかりました。
子宮という安心できる空間で守られ、胎児は母親の心音を聴きながら育ちます。
胎児は音に敏感で、妊娠20週で音に反応し始め、妊娠28週目頃にはほぼ聴覚が完成して、外部の音も聴きわけられるようになります。
フランスの耳鼻咽喉科医、アルフレッド・トマチスは、耳で音を感じるコルチ器と似たような組織が全身の皮膚の下にもあるとし、「皮膚は巨大な耳である」と唱えています。
この説が正しいなら、胎児の聴覚が完成する前、妊娠10週目、またはそれより早い時期から羊水を通じて皮膚で音を感じ取っている可能性があることになるでしょう。
おなかの中で聴きなれたお母さんの心音は、おそらく「究極の安心音」として赤ちゃんにインプットされているはずだと思います。
子どもたちの胎内記憶を調べると、その95%はポジティブな記憶で、「お母さんのおなかの中は居心地がよかった」「楽しかった」という言葉が出てきます。
心音は、赤ちゃんにとって、ただ聴きなじみのある音というだけでなく、「おなかの中で心地よく過ごした記憶とつながれる音」なのではないかと思います。
妊娠中にお母さんがイライラして、その影響を赤ちゃんが受けることもあるでしょう。
しかし、先に挙げた胎内記憶を見れば、全体的には居心地のいい時間が多いようです。
心音を聴いて心地よく感じるのは、赤ちゃんだけではありません。
心音を収録したCDを聴いたお母さんの84%が、「リラックスできた」と答えています。
おそらく、大人であっても心音を聴くことで、心地よかったおなかの中を思い出すのでしょう。
記憶のトリガー(きっかけ)として心音が働いて、やすらぐ感覚を自然と持つのだと考えられます。

眠気を誘う1/fゆらぎ
川のせせらぎやそよ風の音など、自然界の音には、規則的ではない「1/f(エフ分の1)ゆらぎ」という、心地よさを感じさせる「ゆらぎ」が含まれています。
実は、この1/fゆらぎは、人間の心音にも含まれているのです。
電車やバスに揺られていると、眠くなるかたが多いでしょう。
それは、ガタンゴトンという一定のリズムに、1/fゆらぎが加わっているからです。
心音を聴いて、よく眠れるようになった、という声があるのは、この1/fゆらぎの効果によるものだと思います。
緊張状態にあるとき、私たちの体では内臓や血管の働きを調整する自律神経のうち、全身の活動力を高める交感神経が優位になっています。
逆に、リラックスしているときには副交感神経が優位になります。
心音を聴いて、気持ちがやすらいだり、眠くなったりするのは、副交感神経の働きによるものだと考えられます。

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3000人の中から理想の心音を収録
心音は声と同じように一人ひとり個性があり、そのときの心身の状態によって変化します。
例えば、緊張したり走ったりしたときは心臓がバクバクしますし、リラックスしているときは脈もゆっくりで、心臓がゆったりしたリズムを刻んでいるのがわかるはずです。
癒しの効果を得るには、ゆったりと心地よい状態に導いてくれる心音を聴くことが、重要なポイントです。
付録のCDは、3000人に及ぶお母さんの心音の心拍数と周波数を分析し、リラックス効果の高い心音だけを収録しています。
言うなれば「理想の心音」です。
現代の生活は刺激が多く、交感神経の働きが過剰になりがちです。
その結果心身の緊張が続き、不安や不眠などを引き起こしやすくなります。
ゆったりした心音を聴くことは、副交感神経の活動を助け、私たちの心と体に平安をもたらす、有効な方法だと考えられます。
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池川明(池川クリニック院長・産婦人科医) 著