解説者のプロフィール

中野隆之(なかの・たかゆき)
鹿児島純心女子大学看護栄養学部健康栄養学科教授。医学博士。
鹿児島大学大学院農学研究科修士課程修了。
専門分野は食品機能学、食品化学、電気生理学。
老化防止機能や美肌機能、抗アレルギー機能など、食品を通じて人体のしくみや機能について研究を重ねている。
オクラのポリフェノール含有量はトマトの約5倍!

近年、機能性表示食品の広まりから、人体に及ぼす食品の機能について関心が高まっています。
私は、これまで多くの食材を研究しましたが、近年特に注目しているのが、オクラです。
私は、2015年からの2年間、指宿市からの依頼で、オクラの機能性評価の検証を行いました。
その成果をご紹介しましょう。
試験では、オクラを洗って乾燥させ、さやを種ごと微粒子に粉砕したオクラの粉末を用いました。
生のオクラだと収穫時期が限られるうえ個体差もあり、公平に調べられないためです。
オクラの粉末を分析してまず驚いたのは、ポリフェノールの含有量です。
ポリフェノールとは、ほとんどの植物に存在する苦みや色素の成分です。
細胞を傷つけ、病気や老化の原因となる物質である活性酸素を除去する作用があり、これを摂取することで、全身の若返りが期待できます。
そのポリフェノールが、オクラの粉末には、トマトの5倍近く含まれていることがわかったのです。
このオクラの粉末で得られる健康効果を、初年度は動物実験で調べました。
オクラの粉末を含んだエサを与えたグループと与えなかったグループに分け、食後の血糖値を測定しました。
すると、オクラの粉末を食べたグループは、食後の血糖値の上昇が抑えられることが確認できたのです。
また、60日間の実験終了後、各臓器も調べた結果、体重増加の抑制、便通の改善、肝機能の庇護作用、内臓脂肪の沈着抑制、脂質代謝ではLDL(悪玉)コレステロールの低下作用などの効果があることもわかりました。
この実験結果を踏まえ、次年度は、ヒトに対するオクラの機能性効果を検証しました。
ヒトへの安全性とデータの正確性を期するため、その年に収穫されたオクラで前年同様の動物実験を行い、食後の血糖値の上昇抑制効果があることを再確認したうえで、試験に臨みました。
食後血糖値の上昇が抑えられると実験で判明!

ヒトの試験では、オクラの粉末を飲みやすくするため、カプセルに入れた物を使いました。
飲んでもらうのは、低用量の7粒(オクラ粉末1.5g相当)と、高用量の14粒(オクラ粉末3g相当)の2セットです。
粉末3gは、生のオクラだと2〜3本に相当します。
被験者は、指宿市内に住む平均年齢55.3歳の男性7名、女性23名の合計30名です。
なお、試験の途中、糖尿病であることが判明した男性2名のデータは除いたので、結果的に28名になりました。
まずは採血を行い、空腹時の血糖値を測定します。
次に、7粒または14粒のオクラ粉末入りカプセル、もしくは同粒のプラセボ(偽薬)の4種類からランダムに選んだ物を飲んでもらいます。
そして、その10分後に200gの白飯を食べてもらいます。
そして30分おきに採血を行い、血糖値とインスリン濃度を測定しました。
すると、動物実験と同様、オクラの粉末を飲んだほうが、食後の血糖値の上昇が抑制されることが認められたのです。
また、血糖値を調節するホルモンであるインスリンも、オクラの粉末を摂取したほうが、食後の分泌量が有意に抑制されると確認されました。
これは、インスリンを分泌する膵臓の負担が減ることを意味します。
さらに、7粒よりも14粒を摂取したほうが、より効果が高いことも判明しました。

糖尿病を改善する食事療法に「オクラ」が有効
前年の動物実験で得た、血糖値改善以外の各健康効果については、今後、さらなる検討が必要です。
しかし、私は、ヒトに対しても同様の効果を得られると予想しています。
「オクラ水」は、ネバネバ成分である水溶性食物繊維が水に溶け出すのが特徴です。
一方、オクラの粉末は、果肉に含まれる不溶性(水に溶けにくい)食物繊維も豊富です。
ですから、オクラ水でより健康効果を得るなら、水に漬けたあとのオクラも食べることをお勧めします。
健康な人はもちろん、糖尿病を患っている人も、オクラの摂取は、食事療法の一助として非常に有効です。
オクラは少々食べ過ぎても安全で、副作用もありません。
毎日の健康のために、ぜひ活用してください。
「オクラ水」の作り方は↓の記事を参考にしてください。