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【糖尿病専門医】糖質制限のやりすぎに注意!血糖値を上げやすい食事・食べ合わせ

【糖尿病専門医】糖質制限のやりすぎに注意!血糖値を上げやすい食事・食べ合わせ

糖尿病の患者数は、年々増え続けています。一方、血糖のもととなる炭水化物(糖質+食物繊維)の摂取量は、減少傾向が続いています。そのかわりに増えているのが、脂質の割合です。糖質の摂取量は減っているのに、糖尿病は増えているのです。【解説】竹内雄一郎(メディカルプラザ小岩駅院長・日本糖尿病学会糖尿病専門医)

解説者のプロフィール

竹内雄一郎(たけうち・ゆういちろう)
●メディカルプラザ小岩駅
東京都江戸川区西小岩1-23-2 サンハイツグリーンヒル1階
03-5612-5182
http://mp-koiwa.com/

メディカルプラザ小岩駅院長・日本糖尿病学会糖尿病専門医。
信州大学医学部卒業後、同大学附属病院、江戸川病院内科などで糖尿病治療に従事。2012年、糖尿病外来を中心とした生活習慣病専門クリニックのメディカルプラザ小岩駅を開設。日本糖尿病学会糖尿病専門医。医学博士。著書に『肉体革命!超ポジティブ糖尿病ライフ』(幻冬舎)など。

自身の体験から糖質制限に疑問を感じるようになった

 私はこれまで糖尿病専門医として、多くの患者さんの診療に当たってきました。糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法です。その食事療法のなかで、最近よく話題に上るのが、糖質制限です。糖質制限は、血糖(ブドウ糖)のもとになる糖質(炭水化物)を制限するという、一見理にかなったかのように見える食事療法です。ダイエット目的で糖質制限をされている人もいます。

 そこで私も5年前、糖質制限を試してみました。当時の私は、身長178㎝で体重94㎏。どう見ても太り過ぎで、健康診断では、血糖値の異常こそ指摘されなかったものの、糖尿病発症のリスクが高い状態でした。
 なにより、糖尿病専門医がこんなに太っていたら、患者さんに対して説得力がありません。まずは自分がやせるために、糖質制限を始めたのです。

 私は何事につけ、徹底的にする性分です。糖質制限の方法も、かなり極端でした。例えば、朝食はご飯のかわりに油揚げ、昼食はサラダにナッツ、鶏肉、夕食は焼き魚に豆腐というぐあいです。
 すると、すぐに体重は数㎏落ちたものの、大きな問題にぶつかりました。昼食前になると疲れてしまい、診療中、頭が回らなくなってしまったのです。

 脳の主たるエネルギー源は、ブドウ糖です。糖質制限で体内の糖が減ると、脂肪が燃焼されたときに産生される「ケトン体」が、糖のかわりに脳のエネルギー源になるといわれています。しかし、ケトン体はあくまで緊急時のエネルギー源で、脳は最初からケトン体を使うようには設計されていないのです。

 頭が働かないと仕事にならないので、私は糖質制限を数ヵ月でやめました。このときの体験から、糖質制限に疑問を感じるようになったのです。

炭水化物+油の夕食は朝まで血糖値が高いまま

 糖尿病の患者数は、年々増え続けています。一方、血糖のもととなる炭水化物(糖質+食物繊維)の摂取量は、減少傾向が続いています。1946年には総エネルギーの8割以上を占めていたのに、1985年以降は約6割に落ち込んでいるのです。そのかわりに増えているのが、脂質の割合です。

 糖質の摂取量は減っているのに、糖尿病は増えている。ということは、単純に糖質をとり過ぎて糖尿病になっているわけではなく、糖尿病発症の主原因は脂質の過剰摂取と、その結果としての肥満だと、私は考えています。

 脂質をとり過ぎて肥満になると、脂肪細胞からインスリンの効きを悪くする物質が放出されます。それをカバーするために、膵臓はインスリンを一生懸命出そうとします。
 しかし、元来日本人はインスリンの分泌能が弱いため、だんだん血糖値をコントロールできなくなって、糖尿病を発症する傾向があるのです。

 私は患者さんに、自宅で測定した血糖値を記録してもらっています。それを見ると、朝食前の血糖値が明らかに高くなっている人がいます。その人にその前日の夕食の内容を聞くと、たいてい天丼やカツカレーなど、炭水化物と油を組み合わせた食事なのです。

 こうした「炭水化物+油」の夕食をとると、食後血糖値が高い状態が朝まで続き、朝食前の血糖値が高くなってしまうのです。しかし、夕食にそうした食べ方をしなければ、ピタッと朝食前の血糖値が下がります。
 この傾向は、多くの患者さんで確認することができました。

食物繊維の摂取不足は大腸ガンの発症を招く

 糖質(炭水化物)は、体にとって大切な三大栄養素の一つ。古来日本人は、主なエネルギー源として使ってきました。宮沢賢治の『雨ニモマケズ』に、「一日に玄米四合」と書かれているほど、お米を食べていたのです。

 炭水化物をとらない糖質制限で、私が危惧しているのは、食物繊維の不足です。糖質制限の対象となる米などの穀類、野菜には食物繊維が豊富に含まれていますが、魚や肉の可食部には食物繊維が含まれていません。

 食物繊維は、糖の吸収を緩やかにして血糖値の上昇を抑えたり、脂肪を吸着して排出したりする働きがあります。また、食物繊維は、腸内細菌の大事な栄養源になります。

 腸内細菌は、食物繊維を消化することで人にとって必要な短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)や、ビタミン、葉酸を産生し、私たちの体のために役立っているのです。最近では、腸内細菌とガンや心臓病、アレルギー性疾患などとの関連も注目されています。

 ガンとの関連でいえば、日本人の糖尿病患者では、肝臓ガン、膵臓ガン、大腸ガンの発症リスクが高くなることがわかっています。また、食物繊維の摂取量が非常に少ない人で、大腸ガン発症のリスクが高くなる可能性が指摘されています。

 これらの事実を考えると、糖尿病患者における極端な糖質制限は、食物繊維の摂取が減少することで、大腸ガンなど、ほかの疾患リスクを高める可能性もあるのです。ですから、食物繊維をしっかりとるためにも、過度の糖質制限を安易に行うべきではありません。

組み合わせ・調理法が重要

 食品には血糖値を急激に上昇させる物と、緩やかに上昇させる物があります。それを数値化したものがGI値(グリセミック・インデックス)で、GI値が高いほど食後血糖値が上昇しやすくなります。

 最近は、GL値(グリセミック・ロード)という指標も使います。これはGI値に炭水化物の量を掛けて算出します。実際の食事により近い、血糖値の変動しやすさを見るものです。

 GI値が高くても、含まれる炭水化物の量が少なければ、GL値はさほど高くなりません。GI値とGL値の両者を見て、食品それぞれの血糖値の上がりやすさを判断します。

 しかし、何か一つの食品をそのまま、しかも単品でとることはあまりありません。血糖上昇を来しやすい組み合わせもあります。特に揚げ物やカレーなど、油分の多い食品とご飯やパンなどの炭水化物が組み合わさると、血糖値は上昇しやすい傾向にあります。

 GI値やGL値は、あくまで一つの目安としてとらえ、どのような組み合わせ・調理法で食べるのかが重要になります。 

 そこで、私がお勧めしたいのが、和食ベースの食事です。
 ご飯にみそ汁、煮魚(焼き魚)や野菜のおかずをつけるといったメニューです。

 ご飯食は、パン食とは違い、おかずのバリエーションを多くしやすいので、栄養バランスが取りやすいのです。旬の食材を取り入れることで、食事を楽しむこともできます。

 おかずは、油を使うと高エネルギーになりますし、炭水化物との組み合わせで血糖値を上げやすいので、同じ素材でも、蒸したりゆでたりする調理法がお勧めです。
 食べる順番も、野菜などのおかずから先に食べれば、血糖値の上昇が抑えられ、ご飯が少なくても満足できます。

糖尿病を撃退するレシピは、↓の記事で詳しく紹介されています。

良質の糖質を適量とり運動で燃焼させよう

 私は、極端な糖質制限によるダイエットで苦しんだ経験から、糖質の質と量、全体の栄養バランス、摂取エネルギーを見直しました。さらに運動も加えて、トータルで20㎏の減量に成功しました。その食事は今も続けていますが、基本的には野菜中心の和食で、主食は主に玄米です。

 また、朝はしっかり食べて、夜は少なめ、を心がけています。朝食をしっかりとると、昼食後の血糖値が上がりにくくなります。夕食後は活動量が少ないので、たくさん食べると消費できず、食後血糖値の上昇や肥満の原因になります。本来、夕食時には、たくさん食べる必要がないのです。

 運動は、最寄り駅からクリニックまで、往復8㎞を歩いています。さらにボクシングジムに週2回通い、1時間半みっちり汗を流しています。
 しかし、もともと運動習慣のない人は、最初からそんなにがんばる必要はありません。まずは、1日20分のウォーキングから始めるといいでしょう。それを毎日続けて、少しずつ歩く時間を延ばしてください。

 私は、自分の経験から、そして糖尿病専門医として、毎日、たくさんの患者さんを診ている立場から、食事療法の一環として「糖質制限」には反対です。ほんとうに必要なのは「糖質制限」ではなく、「糖質制御」だと私は提唱しています。

 一人ひとりの活動量に見合った良質の糖質(急激な血糖上昇を来しにくい食品)を適量摂取し、それを運動できれいに燃焼させて、必要な分のブドウ糖は体にストックするという考え方です。そうすれば、無理な糖質制限に苦しむことなく、糖尿病の人でも血糖コントロールはうまくいくはずです。

 糖尿病の治療においても、糖尿病でない人の健康維持のためにも、食事と運動の両方に注意することが大事だと思います。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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