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過剰な糖質制限食で老化が進む!5年以上の長期は避けよう

過剰な糖質制限食で老化が進む!5年以上の長期は避けよう

酸化・糖化による老化や心血管系の病気を防ぐために、糖尿病の患者さんが、適度な糖質制限を行うことは悪くないと思います。しかし、過剰な糖質制限を長く続けることは、全身や脳の老化を招く恐れがあります。【解説】都築毅(東北大学大学院農学研究科准教授)

解説者のプロフィール

都築毅(つづき・つよし)
東北大学大学院農学研究科准教授。
1975年生まれ。東北大学大学院農学研究科博士課程修了。宮城大学食産業学部助手、同助教を経て、2008年から現職。日本食の健康機能に関する研究者。著書に『昭和50年の食事で、その腹は引っ込む』(講談社+α新書)。

通常食群より30%速く老化が進んだ!

 近年、短期間で内臓脂肪を減らせることから、糖尿病やダイエットに有効と注目されている糖質制限食。しかし、長期にわたって続けた場合、安全性に問題はないのか、まだはっきりとは見定められていません。

 私たちは、長期に糖質制限食を行うと、どのような影響があるのか、次のような実験を行いました。
 老化促進モデルマウスを20匹ずつ、生後4週めから、「通常食群」と「高脂肪食群」、「糖質制限食群」の三つのグループに分けて飼育し、その生存率や老化度などを比較しました。

 通常食は、日本食に近い糖質が多めのエサ、高脂肪食は、糖質を減らし脂質を増やした(洋食に近い)エサ、糖質制限食は、糖質をかなり減らし、脂質とたんぱく質を増やしたエサとなります。

 なお、ここでいう糖質制限食は、ヒトの食事に置き換えると、主食となるご飯を3食抜くという、やや厳しい糖質制限とイメージしてください。

 その結果、最も長生きだったのが通常食群、次が高脂肪食群、そして最も短命だったのが糖質制限食群でした。

 糖質制限食群は、老化の進行が通常食群に比べ30%速くなり、平均寿命より20~25%短命だったのです。生後24週(ヒトの年齢で60歳ごろ)辺りから、皮膚の老化や脱毛などがひどくなり、毛並みの悪さも目立ちました。それに、背骨のゆがみまで見られたのです。

 さらに、54週(ヒトの年齢で70代後半)に行った学習記憶能力のテストでは、通常食群に比べて30%ほど機能低下が見られました。脳の老化を促進させる過酸化脂質の量を調べると、通常食群に比べ、46%多いと判明しました。

 この実験データから、厳しい糖質制限食を30年、40年と続けると、全身や脳の老化が進行すると考えられます。

 細胞には、「オートファジー」というしくみがあります。
 これは、2016年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が解明した理論で、細胞が不要になったたんぱく質を分解して再利用したり、細胞内をきれいに保ったりするしくみのことです。

 年を取ると、細胞内で機能しないたんぱく質(異常たんぱく質)が作られやすくなりますが、このオートファジーのしくみにより、通常は処理されます。

 ところが、糖質制限食によって、たんぱく質を大量に摂取していると、オートファジーを抑制するため、異常たんぱく質の処理をしきれなくなってきます。つまり、異常たんぱく質が細胞内にゴミとして蓄積され、それが細胞に過大なストレスとなり、老化を促進させるのです。

「少し洋食化した和食」がお勧め!

 では、糖質制限はやめたほうがいいのでしょうか。そんな単純な話ではありません。

 これまで、老化を進行させる主な原因として、「酸化」と「糖化」が考えられてきました。
 私たちは、生命活動に必要なエネルギーを産み出すために酸素と糖質を必要とします。しかし、体内に取り込んだ酸素の一部は活性酸素となり、体内のたんぱく質や脂質を酸化し、老化や病気の原因になります。

 また、余分な糖は、たんぱく質と結びつき、糖化という現象が起こります。糖化が起こるとき、終末糖化産物(AGEs)という悪玉物質が発生し、やはり多くの病気や老化現象を引き起こします。

 糖尿病は、高血糖状態が血管を傷つけ、動脈硬化や心血管系の病気を引き起こします。
 ですから、酸化・糖化による老化や心血管系の病気を防ぐために、糖尿病の患者さんが、適度な糖質制限を行うことは悪くないと思います。高血糖状態を改善することは、ある時点までは老化防止に役立つからです。

 しかし、私たちの実験でもわかるように、過剰な糖質制限を長く続けることは、前述のように、異常たんぱく質の細胞内への蓄積による老化を招く恐れがあります。

 では、糖質制限について、私たちはどのようにとらえればよいでしょうか。現時点では、次の三つが挙げられます。

❶糖質制限を行うときは、カロリー(エネルギー)制限を行う。
❷厳しい糖質制限は長期間(5年以上)続けない。
❸高齢者は糖質制限を控える。

 カロリー制限を行うと、たんぱく質の再利用機構が促進されます。よって、異常たんぱく質の蓄積が緩和され、老化の促進が抑制されます。

 一方、ふだんどんな食事をしたらよいかというと、私は「少し洋風化した和食」と答えています。私たちは、1960年代以降の、四つの年代の食事を選んでマウスに与え、遺伝子レベルで解析したことがあります。

 すると、1975年の食事が最も健康によいというデータが出ました。このころが、適度に洋風化された和食なのです。食事のポイントは次の5点です。

●ご飯とみそ汁のメニューを基本とする。
●多様な食材を少量ずつとる。
●卵やダイズ製品を積極的にとる。
●だしをしっかりとる。
●煮る・蒸す・ゆでる調理法で油を減らす。

 こうした食事のポイントを意識し、厳し過ぎない糖質制限を併せて行えば、糖尿病の改善や健康長寿に役立てることができると考えられます。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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