文字どおりの「医者の不養生」
20代後半に結婚したころ、私は身長が172㎝、体重66㎏の中肉中背タイプでした。
その後、忙しさに追われて運動らしい運動もせず、飽食の日々を送っているうちに、どんどん太ってきたのです。「医者の不養生」という言葉がありますが、私の場合、文字どおりそれが当てはまります。
そして、54歳になったとき、体重はとうとう98㎏になっていました。極端な高血圧であるだけでなく、脂質異常症と脂肪肝もあり、治療薬を飲まなければなりませんでした。
その後は、さすがに食事制限に取り組み、体重を93㎏まで落としました。この時点では、これでなんとかやっていけると軽く考えていたのです。
転機は、57歳の健康診断でした。ヘモグロビンA1cも血糖値も、すでに境界型ではなく、本格的な糖尿病の兆候を示していたのです。
フルマラソン参加を宣言してやる気を高めた
そのころ、私は単身赴任をして独り暮らしを始めました。それをきっかけにして、積極的に生活改善に取り組もうと決意しました。
栄養のバランスなどを考えて自分で食事を作るようにしたほか、ウォーキングとジョギングを始めたのです。なにしろ、そのころの私は、横断歩道や踏切をちょっと小走りで渡るだけで、心臓が飛び出しそうなほどの動悸に襲われていました。
ウォーキングを始めると同時に、10ヵ月後にフルマラソンを走ることを周囲に宣言。そうしてしまったら、もうやらないわけにいきません。私は、このようにして自分を追い込むことにしたのです。
ウォーキングは、1.5㎞の距離を、週に3~4回歩くことから始めました。1ヵ月もすると、両ひざや筋肉に強い痛みが出ました。しかし、筋肉が痛むということは、筋肉が壊れて再生し、強くなっている証拠です。痛みが和らぐまでしばらく休むようにしたところ、以前より歩けるようになりました。その後は、とんとん拍子に距離が延びていったのです。
その後、ウォーキングからジョギングへと移行し、その距離も3㎞、5㎞と延びていったのです。ジョギングを始めて3ヵ月ほど経つと、10㎞走れるようになりました。
そして、ついにフルマラソンに挑戦。6時間かけて完走できたのです!
生活を改善すれば糖尿病は「消せる」!
運動を始める前の、2012年10月、体重は93.6㎏、BMIは32.0(肥満度を示す指数。25以上は肥満)、腹囲は111㎝という体形でした。また、食前血糖値は220㎎/㎗、ヘモグロビンA1cは7.3%と、正常値を大幅に上回っていたのです。
最初のころは、ジョギングのために家を出るときに「走り終えたら、ごほうびに焼き肉を食べよう」と考えていました。しかし、走り続けているうちに、そんな気持ちにはならなくなりました。みそ汁とご飯だけで十分に満足でき、野菜がおいしく感じられてたくさん食べるようになりました。
こうした生活を送っているうちに、私はどんどんやせていったのです。そして、1年後の2013年11月には、体重72.7㎏、BMI24.8、腹囲89.5㎝になったのです。体重は約21㎏も落ちました!
また、血糖値は99㎎/㎗、ヘモグロビンA1cは5.4%となり、完全に正常値の範囲に下がりました。見た目も中身も、すっかり理想的になり、そればかりか、高血圧が解消し、脂質異常症や肝機能の数値なども改善したのです。
糖尿病は「完治」はしないが、「消す」ことのできる病気
振り返れば、ジョギングをダイエットや糖尿病改善のために始めていたら、ここまで続かなかったでしょう。私の場合、「フルマラソンを走る」という究極の目標があったからこそ、がんばれたのだと思います。
糖尿病の治療において、食事と運動、両面での生活改善がどんなに大切か、そして、それを実現することがどんなに難しいか、私は身をもって知ることになりました。
かつて、不健康な体にもかかわらず、患者さんに健康の大事さを説いていたことを思い出すと、恥じ入るばかりです。これからは、胸を張って患者さんに寄り添う医療を実現していきたいと考えています。
糖尿病は「完治」はしませんが、「消す」ことのできる病気です。まず自分の生活をしっかり見つめ直し、改善点を見つけたら、あとは積極的に取り組めばいいのです。その際、私のように目標を立て、そこに向けてがんばると、成果も上げやすいでしょう。私の体験が、皆さんのヒントになるなら、これほど幸せなことはありません。
右の写真は、2012年10月前までの清水先生。体重は93.6㎏、腹囲は111㎝あった。そして、2013年11月には、体重は72.7㎏、腹囲は89.5㎝まで減少し、こんなにスリムに大変身!