解説者のプロフィール

横山淳一(よこやま・じゅんいち)
●オリーヴァ内科医院
東京都世田谷区駒沢4-17-1 パークサイド駒沢1階
03-5787-6833
http://www.oliva-clinic.jp/
オリーヴァ内科医院院長。医学博士。
日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医。日本内分泌学会認定内分泌代謝専門医。
専門は、糖尿病をはじめとする代謝・内分泌疾患。現役の医師として治療に当たるかたわら、地中海食の普及に積極的に取り組んでいる。
オリーブオイルを多用する地中海食は健康長寿の模範食
私が院長を務めるクリニックは、糖尿病や脂質異常症、メタボリック症候群など、代謝性疾患を専門に扱うクリニックです。院名の「オリーヴァ」とは、「オリーブの実」を意味します。
オリーブの実の恵みに代表されるような、食事の持つ力を有効活用することによって、多くの代謝性疾患を快方に導いていこうというのが、このクリニックの目指すところです。
クリニックには、多くの糖尿病の患者さんが訪れます。私は、そうした患者さんたちに対しても、単純に薬物療法を行うだけではありません。できるだけ薬に頼ることのないよう、食事療法を指導しています。
その食事指導の重要な点が、病院名にもなっている「オリーブの実」の活用です。
米国や北欧では、1990年代後半に心疾患での死亡率が高くなりました。これは、動物性脂肪を中心に摂取している影響だと考えられたのです。
これに対し、地中海沿岸の地域では、脂質のトータルの摂取量は変わらないにもかかわらず、心疾患による死亡率が低いことが判明しました。その差をもたらすものとして、いわゆる「地中海食」、特にそれに多用されているオリーブオイルが注目されるようになったのです。
その後、地中海食は、健康長寿の模範食の一つと考えられるようになり、2010年には、ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されています。
私のクリニックには、キッチンを備えています。ここでは、糖尿病の患者さんたちと地中海食の食事会を開催しています。その際、地中海食が、食後の血糖値の上昇を抑える効果があること、そして、おいしくて満腹感が得られることを実感してもらっています。
このように、糖尿病を改善するための質の高い食事療法を知っていただき、日ごろの食生活に取り入れることで効果を上げているのです。
オリーブオイルは和食にもよく合う!
地中海食と並んで、糖尿病の患者さんにお勧めしているのが、「和食+オリーブオイル」の組み合わせです。
地中海食は、魚、野菜、豆が中心の食事です。食事のスタイルとしては、和食と似た食事といえるでしょう。オリーブオイルは、和食にもよく合うのです。
そこで、私が朝食にお勧めしている「卵かけオリーブオイル玄米ご飯」をご紹介しましょう(下記参照)。最大の特長は、これが白米ではなく、玄米であることです。
糖尿病の患者さんにお勧め!卵かけオリーブオイル玄米ご飯の作り方

【材料】
玄米(発芽玄米であればなお好適)…茶碗1杯分、卵…1個
オリーブオイル…大さじ1 ミニトマト…5個 しょうゆ…適量
【作り方】
❶ミニトマトのヘタを取り、半分に切る。
❷フライパンにオリーブオイル、卵、ミニトマトをのせてから、コンロに置いて弱火で加熱する。

❸卵の白身が固まってきたら火を止める。
❹丼に盛った玄米ご飯の上に、③をのせる。しょうゆを適量かける。

玄米にオリーブオイルを加えると血糖値をあげにくい
食事によって糖尿病を改善するうえで、最も重要なポイントは、糖質の「量」ではなく、「質」です。
その質を測るうえで一つの基準となるのが、GI(グリセミック・インデックス)値です。これは、食後血糖値の上昇度を示す指標で、高い食品ほど、摂取したあとに血糖値が急上昇します。
血糖値が急上昇すれば、それだけインスリンの分泌を強いられることになり、膵臓に負担がかかります。血糖値が気になるかたは、できるだけGI値の低い食品を選ぶことが重要です。
例えば、白米のGI値は80台であるのに対し、玄米は50台なので大きな差があります。しかも、玄米をオリーブオイルといっしょにとることで、血糖値の上昇がいっそう抑制されることがわかっているのです。
つまり、玄米だけを食べるよりも、玄米+オリーブオイルの組み合わせのほうが、血糖値を上げにくいのです。
また、白米は食べやすくつい食べ過ぎてしまいます。その点、玄米はかみごたえがあるので、よくかむうちに白米よりも満腹感が得られます。
一方、オリーブオイルのメリットとしては、オレイン酸という不飽和脂肪酸の効能が挙げられます。オレイン酸は、悪玉コレステロールを増やさない脂肪酸なのです。
豊富な抗酸化物質が血管の病変を防ぐ!
さらに強調したいのが、オリーブオイルも玄米も、「全体食」である点です。全体食とは、丸ごと使う食材を指します。
オリーブオイルは、オリーブの実の皮も種もいっしょにつぶしてしぼっています。これが、ほかの油にはないオリーブオイルの特長です。その結果、オリーブオイルには、多種多様な抗酸化物質が含まれることになります。
また、玄米も全体食です。白米は、試しに地面にまいても芽が出ませんが、玄米は芽が出てきます。つまり、玄米には、芽吹くための栄養素が備えられているのです。
玄米とオリーブオイルをいっしょにとると、より多くの抗酸化物質や、ビタミン・ミネラルを摂取できます。
糖尿病で高血糖状態になると、血管が傷んで血管の病変が進行しやすくなります。そこで、豊富な抗酸化物質が、血管の病変を防ぐ働きをしてくれるのです。
これほどまでに糖尿病の改善に役立つ玄米ですが、難点は、粘りけがなくゴワゴワして、人によっては食べにくいと感じることでしょう。しかし、その欠点も、オリーブオイルと組み合わせれば、食べやすく、おいしくなります。
今回ご紹介した、卵かけオリーブオイル玄米ご飯を試していただければ、すぐにわかりますが、白米より、玄米のほうがはるかにおいしくなるのです。
私はこれまでに、和食とオリーブオイルを組み合わせた料理をたくさんの患者さんたちにお勧めして、糖尿病の改善に役立ててもらっています。食事療法をきちんと続ければ、血糖値がしだいに下がり、薬を減らすこともできるのです。
朝食にはぴったりのメニューですから、皆さんも早速お試しください。
和食とオリーブオイルを組み合わせたレシピについては、↓の記事で詳しく紹介されています。