解説者のプロフィール

松岡佳余子(まつおか・かよこ)
アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師。
1948年、和歌山県生まれ。電気鍼による治療「良導絡」の開発者・中谷義雄医師の内弟子として、鍼灸修行をスタート。中国各地(上海、北京、瀋陽、鞍山)の中医薬大学、中医学院にて研修を行う。鍼灸をさらに発展させた手指鍼で、高い効果を上げる。『巻けば即やせ! 手のひらバンドダイエット』(マキノ出版)など著書多数。現在は、最新療法の研究と後進の指導に当たっている。
●アジアンハンドセラピー協会
http://asian-hand.jp/
実年齢よりも10歳若く見られる
皆さんはふだん、耳の穴に指を入れることがありますか? 「かゆいときにちょっと入れるくらい」という人が、ほとんどではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、「耳の穴もみ」といって、耳の穴に指を入れて押し広げる健康法です。その場ですぐ、耳の聞こえがよくなったり、視界が明るくなって視力が上がったりする人が少なくありません。
また、顔のたるみを改善する効果も高く、その場で顔が小さく引き締まったり、ほうれい線が薄くなったりしたという声も多く聞かれます。毎日行うことで、長年悩まされていた耳鳴りが半減した人や、高血圧の薬が減ったという人もいます。
私自身も毎朝、起床後に行っています。すぐに頭がスッキリし、目がパッチリ開くので、起き抜けの顔には見えません。いわゆる「目力」が出るのです。私は現在70歳ですが、耳の穴もみなどのセルフケアのおかげで、最近、実年齢よりも10歳くらい若く見られることが多くなりました。
朝、顔がむくんだり、まぶたが重くなったりする人は、ぜひ試してください。口もとやほおも上がって若返ります。
不調を抱える人は耳の穴が小さい!

なぜ、耳の穴を刺激するだけで、このような変化が現れるのでしょうか。
耳の近くには、脳につながる動脈が通っています。動脈は細い血管に枝分かれし、ほおや口、鼻、目まで到達しています。また、耳の周りには多くのリンパ節があり、いずれも体の表面近くに分布しています。
そのため、耳をもみほぐすと、頭部全体の血液とリンパの流れが改善し、さまざまな効果が得られるのです(図を参照)。
私も、施術の効果を持続させるセルフケアとして、また、病気予防の健康法として、耳への刺激を患者さんに勧めてきました。
一般には、耳たぶや耳介(耳の穴の周囲の出っ張った部分)をもみほぐす方法が知られていますが、今回ご紹介する耳の穴もみのほうが、簡単にまんべんなく刺激することができるので、効率的です。
耳の穴の表面にも、毛細血管が網目のように走っています。しかも耳の穴は、指を入れるだけで、周囲の皮膚を刺激することができます。耳の穴に指を入れて押し広げるだけで、耳全体をもみほぐすのと同様の効果が得られます。
患者さんの耳を見たり触ったりしているうちに、私はあることに気づきました。不調やトラブルを抱えている人は、耳の穴が小さい傾向にあるのです。これは生まれつきではなく、血液やリンパの流れが滞り、耳の穴の内壁がむくんでいることの現れと考えられます。
耳の穴をもむというのは、「耳の穴の内壁をマッサージして血液とリンパ液の流れを改善し、むくみを解消する」ということなのです。
患者さんによっては皮膚がかたく、耳の穴が広がりにくい人もいます。かたくなっている部分は、血液やリンパが滞っているため、押すと痛みや違和感があります。毎日もみほぐすことで徐々にやわらかくなり、それに伴って不調も回復します。根気よく続けましょう。
耳は全身に対応する

また、ご存じのように、耳にはたくさんのツボがあります。ツボを刺激すると、経絡という気(生命エネルギー)の通り道を通じて、離れた部位にも影響を与えます。
フランス人の医師、ポール・ノジェが体系化した耳介療法は、耳に全身の縮図を投影したものです。東洋医学にも、耳は全身に対応するという考え方があります。耳に刺激を与え、離れた部位の機能回復を図る治療は、昔から行われていました。
耳の穴の皮膚にも同じように、体の不調と対応する領域があります。図に示しました。これは、中国の古い文献と、私が患者さんに施術した際のデータを併せて作成した物です。基本的には、触ってみて痛いところを押し広げますが、図を参考にすると、不調の予防や予知にも役立つでしょう。
やり方は、記事下の写真図解をご覧ください。
注意点として、まず、耳を傷つけないように、爪を短く切ることと、もむ時間を1日1分以内にすること。耳の穴の皮膚は薄くて傷つけやすいのです。
また、耳の穴もみを行う前に、目の見え方や体の柔軟性を確認してください。「壁のカレンダーの数字が見えるか」「前屈して手の指先が床につくか」「首を回したとき違和感はあるか」など、あとで体の変化がわかるものがよいでしょう。
耳の穴もみを行ったあと、見え方や柔軟性を確認します。セミナーでは、「視界が明るくなって文字がハッキリ見える」「体がやわらかくなった」「肩こりが消えた」といった声が続出します。
また、顔の前後写真を撮ると、皆さん「目が大きくなった」「ほおのたるみが引き締まった」「ほうれい線が薄くなった」と喜ばれるのです。
異常な食欲が消えた!身長が伸びた!
セミナー参加者の声を、いくつかご紹介しましょう。
40代の女性Aさんは、耳の穴もみを始めたころから高血圧が改善し、降圧剤を飲まなくてもいい数値になりました。また、食欲のコントロールにも効果があり、突発的に起こる異常な食欲がなくなったといいます。
その場で、視力の改善を実感する人も少なくありません。セミナー室には、視力測定器を備えていて、必ず最初に視力を測ります。そして、耳の穴もみのあとに、再度検眼するのです。
60代の女性Bさんは、耳の穴もみを行う前の視力は0.7でしたが、実践後は0.9に向上。視界が明るくなって、視力表が見やすくなったとのこと。
40代の女性Cさんも、0.2だった視力が、0.3になり、0.4がもう少しで見えそうだったといいます。
40代の女性Dさんも、その場で1.0から1.2に視力アップして、驚いていました。
視力改善効果は一時的なもので、時間が経つと元に戻ってしまいます。しかし、毎日行うことで、上がった視力が定着することも期待できます。
首や肩の柔軟性も、その場で実感する人が多い症状です。普通の肩こりなら、耳の穴もみを1分行うだけで軽くなります。交通事故で鎖骨を折った女性が、耳の穴もみを行ったところ、格段に腕を回しやすくなったと報告してくれました。
首や肩の筋肉のこわばりが緩むため、身長が伸びる人も少なくありません。姿勢がよくなるので、腰や股関節、ひざの痛みまで緩和する例もあります。
耳は全身の縮図だと、日々実感しています。皆さんもぜひ、美と健康のために耳の穴もみを習慣にしてください。
耳の穴もみのやり方
【準備】
⃝爪を短く切っておく。クリームやオイルを塗ると滑りがよくなる。
⃝遠くのカレンダーの見え方、体のやわらかさなどを確認する。

❶耳の穴の前にあるかたい出っ張り(点線で囲んだ部分)の内側に、手の親指の腹を当て、奥まで入れる。これ以上入らないというところまで入れる。

❷耳の穴の周囲を押し広げながら、親指を360度移動させ、痛いところが見つかったら親指を止め、10秒程度押し続ける。

❸親指を耳の穴から出し、手の小指を入れる。これ以上入らないというところまで入れたら、周囲を押し広げながら、小指を360度移動させる。痛いところが見つかったら小指を止め、10秒程度押し続ける。

❹小指を耳の穴から出し、耳の根もとを親指と人差し指で強く握る。側頭部に耳を押しつけるように、ゆっくり、しっかり、後ろに10回、回す。
※片方ずつでも両耳いっぺんでも、どちらでもよい。
※①~④を1日1回行う。耳の穴の皮膚は薄いので、多くても1日2回までにする。
※遠くのカレンダーの見え方、体のやわらかさなどの変化を確認する。