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簡単な動きでゴースト血管を防ぐ「血液循環体操」のやり方

簡単な動きでゴースト血管を防ぐ「血液循環体操」のやり方

体を動かさずにいると、どんどん血流は悪くなって筋肉はかたくなり、最終的には毛細血管の数が減少してしまいます。これが、昨今、問題になっている「ゴースト血管」です。血液循環体操は、そうしたゴースト血管を防ぎ、修復すると考えられます。【解説】二村ヤソ子(フタムラ式血液循環体操研究所主宰・理学博士)

解説者のプロフィール

二村ヤソ子(ふたむら・やそこ)
フタムラ式血液循環体操研究所主宰・理学博士。
1939年、東京都生まれ。日本女子体育短期大学卒業。1998年、米国の大学で理学博士取得。NHK新しい体操創作メンバー、八幡製鉄(現・新日鉄)勤務を経て、埼玉県下の中学校教諭、浦和市教育委員会などで勤務。陸上競技80mハードルで日本歴代3位(1964年:11秒3)の記録を保持。現在、JA共済連レインボー体操専任講師。著書に『ササッとできる 病気が逃げ出す「血液循環体操」』(講談社)など。

心臓に負担をかけない安心してできる体操

 私が考案した「血液循環体操」は、イスに座った状態で、手足をこする、たたく、足踏みするなどの、日常生活に基づいた簡単な動きから構成された体操です。心臓に負担をかけない動きですので、体力のない人、お年寄りでも、安心して行えます。

 ところが、そんな簡単な動きから構成された体操で、実践者の多くはさまざまな病気や不定愁訴が改善しています。例えば、肩こりや腰痛、ひざ痛、股関節痛、しびれ、高血圧、糖尿病、関節リウマチ、バネ指、不眠、便秘などです。

 そもそも、血液循環体操は私自身のリハビリ体験から生まれた体操です。
 私は、1964年に開催された東京オリンピックの候補選手でした。種目は80mハードルです。その練習中に転倒してしまい、ひざの靭帯を断裂。1年間の治療後に、ギプスを外したとき、足はやせ細り、棒のようにかたくなっていました。

 その後、苦しいリハビリが始まりました。温泉療法を行い、東洋医学や西洋医学の本を読みあさり、自分の体を使って筋肉や骨の動きを勉強しました。
 そうして編み出したのが、血液循環体操です。

体がポカポカ!顔色もよくなる!

 血液循環体操は、その名前のとおり、全身の血液循環をよくする体操です。
 運動とは、「骨を動かして筋肉を伸ばしたり縮めたりすること」と定義づけられています。血液循環体操では、さらに体中の関節をいろいろな方向に動かします。骨を動かすと筋肉もいっしょに動いて、骨の周りや筋肉の中に網の目のように張り巡らされている毛細血管の血流が促されます。

 血流がよくなれば、全身のいたるところの細胞に栄養と酸素が行き渡り、かわりに細胞の中の二酸化炭素や老廃物がスムーズに回収されて、細胞が活性化されます。

 ところが、体を動かさずにいると、どんどん血流は悪くなって筋肉はかたくなり、最終的には毛細血管の数が減少してしまいます。これが、昨今、問題になっている「ゴースト血管」です。

 ゴースト血管が増えると、認知症や骨粗鬆症、肝機能障害、腎機能障害、片頭痛、シワ、たるみ、薄毛などの原因になるといわれています。血流不足によって、老化や痛みが引き起こされるのでしょう。

 血液循環体操は、そうしたゴースト血管を防ぎ、修復すると考えられます。
 特に、心臓から離れた手足を動かすことによって、心臓に血液が戻りやすくなります。こうしたことが、全身の毛細血管の血流を促進するのです。

 血液循環体操を行うと、皆さん体がポカポカしてきたとおっしゃいます。顔色もよくなって、体が動かしやすくなったことを実感されています。これこそ、全身の血液の循環がよくなっている効果といえるでしょう。

教室は、毎日大盛況!

【症例】70代でも疲れ知らず血管年齢は30代!

 では、血液循環体操を行って体の不調が改善した例をご紹介しましょう。なお、いずれも医師より運動を勧められて、血液循環体操を続けている人たちです。皆さんも不調のあるときには、まず医師に相談のうえで、血液循環体操を行うようにしてください。

●Aさん(70歳・男性)
 Aさんは、典型的なメタボリック症候群でした。身長165㎝で体重89㎏、最大血圧は180㎜Hg、最小血圧は90㎜Hg(基準値は、最大血圧が140㎜Hg未満、最小血圧が90㎜Hg未満)。過去1~2ヵ月の血糖値の指標であるヘモグロビンA1cは6.8%(基準値は4.6〜6.2%)でした。
 ところが、血液循環体操を始めて半年後には、最大血圧は110㎜Hg前後、最小血圧は85㎜Hg前後、ヘモグロビンA1cは5.6%まで下がりました。体重も65㎏になり、別人のように健康的になられたのです。

●Bさん(75歳・女性)
 Bさんは、体操教室に初めて参加されたとき、めまいでフラフラしていました。気をつけながら血液循環体操を続けたところ、終わるころにはすっかりめまいが治ってシャキッとされていました。
 Bさんは40代のころ、動脈硬化があるといわれたそうです。しかし、血液循環体操を続けたことで、高かったコレステロール値が下がり、今では医師から「血管がやわらかくて弾力があるね」とほめられるそうです。血液循環がよくなれば、動脈硬化も改善するのかもしれません。

 私はこれまでに、さまざまな血液循環体操を考案してきました。ここでは、その基本となる手と足の体操(下記参照)のやり方と、そのポイントをお話ししましょう。

血液循環体操(手の体操)のやり方

 末梢神経や毛細血管が密集している手は「外側の脳」といわれるくらい、脳と密接な関係があります。手や指を刺激することで、全身の血流がよくなります。

 手首をねじる体操は、力を抜いて、ひじからねじるように意識して行いましょう。そうすることで、上腕の筋肉も使われ、血液が流れやすくなります。

◎いずれもイスに座って行います。手の体操を行うと、脳の血流が促進され、知覚の働きもよくなります。①〜③を行うのを1セットとして、1回2セット行いましょう。

①手のグーパー

❶力を入れて両手でにぎりこぶしをつくる。親指は中に入れる。
❷パッと手のひらを思いっきり開き、指先に力を入れる。
※❶~❷を4回くり返す。

②手をこする

❶両手のひらを合わせて、上下に4回こする。
❷両手の指を交差させ、手首の力を抜いて、上下に4回こする。
❸左手の甲を右手のひらで左右に4回こする。同様に右手の甲も左右に4回こする。

③手首をねじる

胸の前に両手を置き、手首を内側にゆっくり4回、早く4回ねじる。
次に、両手を頭上に上げ、手首を内側にゆっくり4回、早く4回ねじる。

血液循環体操(足の体操)のやり方

 足は「第2の心臓」いわれ、静脈血を心臓へ送り戻すポンプの働きを担っています。

 できるだけひざを高く上げて、足の裏全体で床をたたくように足踏みしてください。ふくらはぎの筋肉が収縮し、効率よくポンプ作用が働きます。足の裏の内側、外側などにも刺激を加えることで、足首がやわらかくなって、転倒防止にも役立ちます。

◎足の体操は、イスに座り足の裏で床をたたくように足踏みして、全身の血流を促す体操です。着地する足の裏の場所によって、血流が増える場所、鍛えられる足の筋肉の部位が異なります。いずれも、左右交互に4回ずつ①〜⑤を行うのを1セットとして、1回2セット行いましょう。

①足の裏全体 (全身の血流を促進)

つま先を正面に向け、ひざを高く上げ、足の裏全体で床をたたくように足踏みする。

②足の裏の内側 (体の前面の血流を促進)

足の親指(拇趾)側を内側に傾けて、足首をしっかり曲げて、足の裏の内側で床をたたくように足踏みする。

③足の裏の外側 (体の背面の血流を促進)

足の小指(第5趾)側を外側に傾けて、足の裏の外側で床をたたくように足踏みする。

④かかと(腰の周りの血流を促進)

つま先を上に向けて、かかとで床をたたくように足踏みする。

⑤つま先 (心臓から遠い手や足の血流を促進)

つま先を下に向けて、つま先で床をたたくように足踏みする。

 血液循環体操はどれも簡単な動きから構成されています。回数や速さは、ご自分の体力に合わせて行ってください。

 私は、78歳になる今も全国各地を駆け巡っていますが、血液循環体操を続けてきたおかげで全く疲れを感じません。病気とも無縁で、健康診断ではすべて異常なし。
 数年前、血管年齢を調べてもらったときには、30代と診断されたくらいです。

 現在、血液循環体操の指導を始めてから40数年が過ぎ、実践者も延べ100万人を優に超えています。実践者のなかには、私より年上の人もいますが、どなたもお元気で若々しく見えます。
 ぜひ、皆さんも血液循環体操を始めて、健康で元気な毎日をお過ごしください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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