5本の指のつけ根を結ぶ横アーチが崩れて、足の指が横に広がってしまう状態が開張足です。
見た目ではわかりにくいため、「隠れ扁平足」とも呼ばれています。
浮き指は、その症状の1つとして現れます。
どちらも、これだけなら病気(足病変)とはいえません。
困るようなことはないので、これだけで医療機関を受診することはないでしょう。
しかし、放置するとさまざまな足病変を引き起こします。
開張足とは
足の指のつけ根を結ぶ横アーチが崩れて足の指が横に広がってしまう状態

自覚症状はないが女性のほぼ9割が抱えている
ハイヒールやパンプスを履く女性に多く、女性のほぼ9割は多かれ少なかれ開張足の傾向があります。
自覚症状がないため、自分が開張足であることに気付かず、ほかの症状が出て初めて開張足に気付くこともあります。
今まで履いていた靴の横幅がきつくなったり、足の甲が広がったりするような気がしたら、開張足を疑ってもいいでしょう。
開張足になると足の指が使えないので、どうしても「ペタペタ歩き」になりがちです。
このペタペタ歩きが横アーチを崩す原因になり、さらに開張足をひどくします。
開張足になると足が疲れやすくなります。
アーチが崩れているので、足裏に負担がかかりやすいのです。
外反母趾やハンマートゥ、足底腱膜炎の原因になる
また、足裏の指のつけ根に体重がかかるようになり、その部分にタコやウオノメができやすくなります。
さらに、ハイヒールのような窮屈な靴を履いて足に負荷をかけ続けると、外反母趾や内反小趾、ハンマートゥ(足の第1指以外の指の骨が「く」の字状に曲がって固まった状態)、足底筋膜炎を発症することがあります。
足底筋膜炎は、足の指のつけ根からかかとまでを膜のように張っている足底筋膜という組織が炎症を起こすものです。
かかとの骨の前方に激しい痛みが出て、特に起き抜けの第1歩が痛いのが特徴です。
激しい運動をする人にもよく見られます。
開張足の原因として、間違った歩きぐせ、運動不足による足裏の筋力の低下、肥満による負荷の増大、靴の問題などが挙げられます。
例えば、かかとの高い靴を履いていると、かかとが不安定になるために前足部でバランスを取ろうとして、重心が前に移動します。
すると、横アーチに無理な負担がかかるので、その疲労をそのままにしているとアーチが崩れていきます。
足のアーチについては、下記を参考にしてください。
浮き指とは
足のつけ根は床に着いているが、指先は浮いている状態

自覚しやすく開張足を見つける1つの指標
足指が地面にきちんと着かずに、浮き上がった状態が浮き指です。
横アーチが崩れているために、指のつけ根の部分がベタッと床に着いてしまい、指が浮いてしまいます。
インターネットの調査では、自分の足が浮き指であると自覚している人がとても多くいました。
開張足は自分でわからなくても、浮き指は自覚しやすいので、開張足を見つける1つの指標になります。
浮き指は、その人が指を使えていないということを意味します。
ですから、浮き指の人の姿勢や歩き方は崩れてしまっていると推測されます。
開張足と同様、タコやウオノメ、外反母趾、内反小趾、巻き爪などの原因になります。
また、地面からの衝撃を吸収できず、足首やひざを痛める原因にもなります。
浮き指かどうか自分でチェック

開張足・浮き指の予防と対策
開張足も浮き指も、症状が軽いうちなら、ひも靴をきちんと結んで履くだけでも改善します。
アーチをサポートするインソールを活用したり、アーチの崩れを防ぐテーピング法を行ったりすることも効果的です。
また、普段から、ゆるんでしまった腱や筋肉を鍛えるストレッチやエクササイズをするといいでしょう。
開張足・浮き指の運動療法
ゆるゆる屈伸
X脚やO脚は開張足の原因になり、足病変の発症につながります。
普通に屈伸すると、X脚の人はひざが内側に曲がり、O脚の人は外側に曲がります。
ゆるゆる屈伸は、ひざの筋肉をゆるめて、足の向きを正すエクササイズです。
これによってX脚やO脚を矯正し、正しい重心のかけ方を身につけます。

足指ストレッチ
狭い靴のなかに長い時間押し込められていた足は、指先の筋肉や腱が硬く緊張しています。
腱が緊張すると、周りの筋肉も動かなくなって、筋力の低下につながります。
足指をもんで足の緊張を取り、リラックスさせます。

浮き指エクササイズ
浮き指を改善するには、足指でしっかり地面をつかむように立ち、指のほうに体重を移し、指を鍛えることが大事です。
また、歩き出すときにこの体重移動を意識すると、歩き方も改善します。

ゴルフボール握り
開張足や外反母趾などのある人は足の裏が硬くなっています。
ゴルフボールで足の裏の前足部をもんだり、足指でゴルフボールをつかんだりすると、足裏や指の関節がゆるみ、指の筋力も鍛えられます。

骨の変形のセルフケア
テーピング法(包帯法)
整形外科では「包帯法」と呼ばれるものです。
落ちた横アーチを補正する効果があります。足に少しアーチを作り、固定するような感じで巻くといいでしょう。
MP関節のあたりを巻くと痛い場合は、巻く位置を少し下げて、土踏まずのあたりを巻いてください。
サポーターや包帯、マジックテープ付きのバンドなどでも代用できます。

解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。

【好評】
『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア (フットケア外来の医師がすすめる「足のトラブル」の治し方) 』高山かおる(著)