外反母趾とは
靴にぶつかっているときか進行しているときに痛む
外反母趾は、足の第1指のつけ根の関節(MP関節)が外側に飛び出し(外反)、第1指が第5指側に曲がってしまう足病変です。
開張足にしばしば合併します。
足の第1指の関節は、もともと少し外側に曲がっています。
その角度が15度未満なら正常範囲ですが、15度以上になると外反母趾と診断できます。
15〜25度未満なら軽度、25〜40度未満なら中等度、40度以上になると重度です。
外反母趾の重症度をチェック

重度になると、足の第1指が第2指の上に乗ったり、反対に下にもぐり込んだりします。
外反母趾は時間をかけて少しずつ進行しますが、曲がる角度が大きくなると、足の第1指だけでなく足全体の変形につながります。
骨格自体が複雑に変形して、足に無理なねじれが生じてきます。
すると、足の第1指に力が入らず、歩き方も不安定になります。
軽度のうちは気付きにくいですが、足裏の第1指のつけ根(母趾球)にタコができたり、親指の内側が角化して硬くなったりしていたら、外反母趾の可能性があります。
進行すると、曲がった部分が靴に当たってタコができたり、炎症を起こして赤くなったり、熱を持って腫れたりしてきます。
外反母趾で痛みがあるのは、このように靴にぶつかって足が圧迫されているときか、変形が進行している軽度から中等度の段階です。
この症状の進行中になんらかの対処をしておけば、痛みはなくなり、進行が抑えられて骨の変形も最小限ですみます。
放置して痛みがなくなった場合は、進行が止まり、変形が完了したということです。
痛みはなくなりますが、変形した足の第1指の矯正は困難になります。
また、痛みはなくても骨の変形が進んでいることもあります。
その場合は、歩くだけでも、自然に悪化していきます。
骨の変形が進むと、歩行が困難になるだけでなく、首や肩のこり、腰痛、ひざ痛といったふうに、その影響は全身に及びます。
外反母趾の原因は 歩き方や立ち方の悪い癖
外反母趾の原因は、歩き方や立ち方の悪いくせです。
X脚などで足が内側に倒れて重心が第1指側にかかると、第1指に負荷がかかり、外側に曲がっていきます。
また、ペタペタ歩きのように足の第1指で蹴り出さない歩き方をしていると、足の第1指の筋力が落ちて、靴に押される方向に動きやすくなります。
このように、使わないことで機能や筋力が落ちていくのです。
これを助長するのが、靴です。
つま先の狭い靴やハイヒールを履くと、指が圧迫されて足の第1指や第5指がますます曲がっていきます。それが足の変形をさらに増長します。
しかし、ハイヒールや窮屈な靴を履かない子どもや男性にも外反母趾があることから、靴だけのせいではないこともわかります。
やはりその根本にあるのは、足裏や足指の筋力が低下して靭帯などがゆるみ、横アーチの崩れが生じることです。その原因として、先ほど述べた歩きぐせや運動不足、肥満、加齢などが挙げられます。
女性は足が華奢で、骨格や靭帯、筋肉が男性のように強くありません。ですから、余計に外反母趾になりやすいのだと思います。

外反母趾の予防と対策
正しい歩き方・立ち方を身につけるとともに、軽度から中等度までの人なら、足の向きを矯正する「ゆるゆる屈伸」や、足の指を鍛える「足指ストレッチ」をおすすめします。
また、横アーチを補正・保護するサポーターやテーピングも効果があります。
重度の人には、運動療法はあまりおすすめしません。インソールやコンフォートシューズ(別記事参照:自分に合う靴選びのポイント)を導入して、足に負荷がかからないようにします。
外反母趾の運動療法
ゆるゆる屈伸
X脚やO脚は開張足の原因になり、足病変の発症につながります。
普通に屈伸すると、X脚の人はひざが内側に曲がり、O脚の人は外側に曲がります。
ゆるゆる屈伸は、ひざの筋肉をゆるめて、足の向きを正すエクササイズです。
これによってX脚やO脚を矯正し、正しい重心のかけ方を身につけます。

足指ストレッチ
狭い靴のなかに長い時間押し込められていた足は、指先の筋肉や腱が硬く緊張しています。
腱が緊張すると、周りの筋肉も動かなくなって、筋力の低下につながります。
足指をもんで足の緊張を取り、リラックスさせます。

ゴルフボール握り
開張足や外反母趾などのある人は足の裏が硬くなっています。
ゴルフボールで足の裏の前足部をもんだり、足指でゴルフボールをつかんだりすると、足裏や指の関節がゆるみ、指の筋力も鍛えられます。

外反母趾のセルフケア
テーピング法(包帯法)
整形外科では「包帯法」と呼ばれるものです。
落ちた横アーチを補正する効果があります。
足に少しアーチを作り、固定するような感じで巻くといいでしょう。
MP関節のあたりを巻くと痛い場合は、巻く位置を少し下げて、土踏まずのあたりを巻いてください。
サポーターや包帯、マジックテープ付きのバンドなどでも代用できます。

外反母趾と間違えやすい足病変「強剛母趾(きょうごうぼし)」とは
外反母趾と同じように、足の第1指が変形する病気に、「強剛母趾」(きょうごうぼし)があります。
一見、形が外反母趾と似ているので、外反母趾と自己診断しがちです。
しかし、強剛母趾は外反母趾とは違う病気で、対処法も異なります。
ですから、勝手な自己診断は禁物です。
強剛母趾は、足の変形だけでなく、痛みを伴います。
これは、関節の中の軟骨に炎症が起こっているからです。
また、背屈制限といって、足の第1指を反らしにくくなり、無理に反らすと痛みます。
外反母趾が痛むのは、基本的に骨が変形しているときか、足が靴に当たって圧迫されているときです。
ですから、足が靴に当たっていないのに強い痛みがある場合は、強剛母趾の疑いが強くなります。
外反母趾であれ強剛母趾であれ、足の第1指が変形していて痛みがあったら、まず整形外科を受診してください。
そこで強剛母趾と診断されたら、医師の指示に従って安静にします。
治そうと思ってエクササイズなどをすると、症状が悪化することがありますから気をつけてください。
強剛母趾には、インソールが有効です。
また、ローリングタイプの靴(靴底が丸く弯曲し体重移動がしやすいもの)を履くと、歩くときに足の第1指を蹴り出さなくても自然に足が出るので、歩くのが楽になります。

【好評】
『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア (フットケア外来の医師がすすめる「足のトラブル」の治し方) 』高山かおる(著)
解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。
足の第1指のつけ根の関節が外側に飛び出して第1指が第5指側に曲がってしまう状態