爪の構造と4つの役割
爪は、皮膚の一番外側にある角質層が、ケラチンというたんぱく質に変わったものです。
つまり、表皮の角質層が変化したものが、爪です。
私たちが「爪」と呼んでいるところは、「爪甲(そうこう)」といいます。
爪甲は「爪母(そうぼ)」という、爪の生え際の部分でつくられ、指先のほうに成長していきます。
爪甲と接触している皮膚の部分は「爪床(そうしょう)」といいます。
ここには表皮はなく、代わりに爪甲が爪床を覆っています。爪甲は爪床から栄養や水分をもらっています。
爪は体のなかではとても小さなパーツですが、指の機能を高めるために、なくてはならないものです。その主な働きは、次の4点です。
(1)指を保護する
(2)指の力を強くする
(3)指の触覚を鋭くする
(4)指の動きのバランスを取る

もし、爪がなかったらどうなるでしょうか。
例えば、手の指に爪がなかったら、指先に力が入りません。物をつかむことや、細かい作業ができなくなります。
足の指に爪がなかったらどうでしょうか。
歩くときにつま先に力が入らず、足で地面をつかんだり、後ろに蹴ったりすることができません。
バランスも崩れて、転倒しやすくなるでしょう。
足の爪は小さくても、立ったり歩いたりするのに欠かせないとても大事なものなのです。
主な爪病変は巻き爪、陥入爪、爪白癬(爪水虫)、肥厚爪
爪病変は多い順に、巻き爪、陥入爪、爪白癬(爪水虫)、肥厚爪となります。
巻き爪や陥入爪は痛みがあるので、医療機関を受診する頻度が高くなります。
爪病変が起こる原因は、4つに大きく分類できます。
1つは、骨の異常に起因するものです。
開張足や外反母趾のような足の変形があると、足の第1指の爪が押されて、巻き爪や陥入爪、肥厚爪といった爪の異常をもたらします。
爪の切り方によって起こるトラブルもあります。
巻き爪や陥入爪は、深爪のような誤った爪の切り方がしばしば原因になります。
爪そのものの病気によって起こる爪病変もあります。
爪白癬に代表される感染症や、爪甲剥離症(爪甲〈爪〉が爪床から離れて浮き上がった状態。甲状腺の機能低下などによって起こる)などです。
以上の爪病変は、痛みや変形、炎症などが伴うので、基本的には医療機関での治療が必要です。
そうした明らかな爪病変ではなく、病気とはいえない爪のトラブルもあります。
例えば、二枚爪や縦線(爪に縦に線が入る状態)、緑色爪(爪が緑膿菌に感染し緑色に変色した状態)などは日常的に見かける爪のトラブルで、セルフケアだけでよくなることが多いものです。
解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。