MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【首の後ろのツボ】刺激すると視界がクリアに 緑内障になぜ効くのか

【首の後ろのツボ】刺激すると視界がクリアに 緑内障になぜ効くのか

私はこれまで、多くの緑内障の患者さんを鍼で治療してきました。十数年前、その経験の中で気づいたことがあります。緑内障の患者さんは、後頭部と首の境目辺りが非常にこっている人が多いのです。【解説】内田輝和(倉敷芸術科学大学生命科学部教授・鍼メディカルうちだ院長)

首の後ろのツボをこする「首こすり」とは

 私はこれまで、多くの緑内障の患者さんを鍼で治療してきました。
 十数年前、その経験の中で気づいたことがあります。緑内障の患者さんは、後頭部と首の境目辺りが非常にこっている人が多いのです。
 しかも、そのコリを鍼でほぐすと、高かった眼球内の圧力(眼圧)が下がったり、視界がクリアになったりする患者さんが相次ぎました。

 その経験から考案したのが、首の後ろのツボをこする「首こすり」です。
 それ以来、私は緑内障の患者さんに、必ず首こすりを自宅で行うように勧めています。それを実践された患者さんからは、緑内障の症状が軽減していると、大変喜ばれています。

 まずは、そういう患者さんの例をご紹介しましょう。
 Tさん(69歳・女性)は3年前、孫と遊んでいて転倒し、左目を強打しました。眼科で検査してもらうと、眼圧が30mmHg(基準値は10〜21mmHg)と高く、緑内障と診断されました。
 その眼科で手術を勧められたそうですが、手術はしたくないと、点眼薬で治療しながら当院の鍼治療を受けるようになりました。自宅でも首こすりを続けた結果、眼圧は18mmHgに低下。その後、緑内障が進行することはなく、目の状態も良好です。

緑内障が改善した症例報告

 首こすりは、眼圧は正常なのに緑内障の症状が現れる、正常眼圧緑内障にも有効です。
 ある日、目にピカッと閃光のような光を感じて眼科を受診したFさん(70歳代・女性)は、眼圧は15mmHgと高くないのに、緑内障と診断されました。Fさんにも、首こすりを勧めたところ、眼圧は11mmHgに下がり、10年たった今も、緑内障特有の視野狭窄は出ていません。

 Iさん(81歳・女性)も正常眼圧緑内障と診断された一人です。検査では、右目の上のほうにわずかに黒い影が認められました。2年前、ふだんは14mmHg前後だった眼圧が、突然30mmHgに跳ね上がってしまいました。原因は不明です。
 その後、点眼薬や漢方薬による治療で、眼圧は最も下がったときで15mmHg。以前のようには、もうひとつ安定しません。そこで、不安になったIさんは、当院を受診しました。
 鍼治療とともに、自宅では首こすりを行ったところ、翌日には眼圧が13mmHgに下がり、安定するようになりました。

 緑内障は、眼球の中を流れる房水という水が何らかの理由で滞り、眼圧が上がって視神経が障害を受ける病気です。進行すると視野が欠けていき、失明することもあります。しかも、障害を受けた視神経や欠けた視野は、現代の医学をもってしても元に戻らないといわれています。
 ところが、このように首こすりをすると、緑内障の進行がおさえられたり、目をよい状態に保ったりすることができる人もいるのです。

首こすりのやり方

首のツボが「目」に効く理由

 首こすりは、後頭部と首の境目にあるツボと、攅竹という目のツボの2ヵ所を刺激するものです。首のツボは、私が発見したツボで、「内田式脳点」と呼んでいます。

 目のツボが目によいことはわかりますが、なぜ首のツボに効果があるのか、不思議に思われる人も多いでしょう。しかし、発生学の観点から見ると、目と脳には密接な関係があるのです。

 発生学とは、簡単にいうと、受精卵が子宮に着床してから胎児になるまでの過程を研究する学問のことです。受精卵が分化する初期の段階では、子宮の中に皮膚があり、その中に脳と脊髄が浮かんでいます。脳からは細い糸のようなものが出ており、それが目になり、やがて脳の中に収まっていきます。
 つまり、目は脳の一部なのです。したがって、首の後ろ(脳)を刺激すれば、目の症状が改善することは、じゅうぶん考えられることなのです。

 この首こすりをすると、ほとんどの人が「目がスッキリして、視界が明るくなる」「目の疲れが取れる」といいます。これは、目の周囲の血流がよくなるからです。
 首から後頭部にかけて、太い動脈が走っています。後頭部と首の境目にある「内田式脳点」の2点をこすると、この動脈の流れがよくなり、脳血流が改善します。その結果、目の周囲の血流もよくなります。

 また、攅竹のツボは、疲れ目、視力の低下、飛蚊症、まぶたの腫れなどに効くツボです。ここを押すと脳の緊張がほぐれ、目がリラックスします。
 このように、首こすりをして目の周囲の血流がよくなり、目の緊張が取れれば、滞っていた房水の流れもよくなり、眼圧が下がる可能性があります。

 日本人は正常眼圧緑内障が多く、緑内障の約7割を占めるといわれています。正常眼圧緑内障は、数値は正常でもその人にとっては眼圧が高いということですから、その人の適正値まで下げる必要があります。眼圧が適正になれば、緑内障の進行もおさえられると思われます。
 ただし、緑内障は失明することもある怖い病気ですから、必ず眼科の検査を定期的に受け、点眼薬などの治療も続けてください。それを補助する家庭療法として、首こすりはとても有効だと思います。

解説者のプロフィール

内田輝和
 1970年、関西鍼灸柔整専門学校卒業。74年、東洋医学系教員養成課程修了後、普通科教員資格を得る。同年、鍼メディカルうちだ開業。87年、関西鍼灸短期大学非常勤講師として東洋医学系を担当。95年、鍼メディカルうちだ東京治療院開業。2013年、倉敷芸術科学大学生命科学部教授に就任。著書に『お尻美人になりたい』(マキノ出版)ほか多数。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
足の「光明」というツボは、昔から目の特効ツボと考えられてきました。そもそも光明という名前自体が、「目に光明をもたらす」という、その働きからきていると考えられます。なぜこのツボが目の機能を高めるのか、また、「光明」の場所を探す方法、その刺激方法をご紹介します。【解説】矢野忠(明治国際医療大学鍼灸学部教授)
緑内障に対し、私は生活改善を軸にする治療で成果をあげています。中でも重要なのが食事指導ですが、その一環として、あるスープをお勧めしています。それは「煮干しスープ」です。煮干し(粉末)を使って簡単に作れるスープで、緑内障の悪化防止や回復促進に役立ちます。【解説】山口康三(回生眼科院長)
緑内障は、眼圧が影響する急性緑内障と、眼圧の影響が少ない慢性緑内障に分けられます。眼圧が正常な「正常眼圧緑内障」も、これに含まれます。一般的に多いのは慢性緑内障で、特に正常眼圧緑内障は日本人の緑内障の約7割を占めます。【解説】富所敦男(東中野とみどころ眼科院長)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル