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【更年期の高血圧】血圧急上昇に慌てるな!降圧剤に頼らず改善も可能

【更年期の高血圧】血圧急上昇に慌てるな!降圧剤に頼らず改善も可能

更年期女性の高血圧に対する治療でいちばん重要なのは、生活指導です。更年期の患者さんの多くは、ホルモンバランスが不安定になっていることに加え、子供の自立、親の介護、夫の定年退職など、環境が激変する中で、自律神経の失調状態が起こっているケースが少なくありません。【解説】天野惠子(静風荘病院女性外来特別顧問・循環器内科医師)

解説者のプロフィール

天野惠子(あまの・けいこ)
●静風荘病院
埼玉県新座市堀ノ内1-9-28
048-477-7300(代表)
http://www.seifuso.or.jp/

静風荘病院女性外来特別顧問・循環器内科医師。医学博士。
東京大学医学部卒業。東京水産大学(現・東京海洋大学)保健管理センター教授・所長、千葉県衛生研究所長、千葉県立東金病院副院長を歴任後、静風荘病院特別顧問。
女性専門外来を日本で最初に立ち上げた性差医療研究・実践の第一人者で「NPO法人性差医療ネットワーク」や「性差医療・医学研究会」(現・「日本性差医学・医療学会」)の創設をリード。

男性と女性では適正な血圧の値も違う

私は長年にわたって、性差医療の研究や臨床に携わってきました。
男性と女性では、体の構造や機能に違いがあります。

かかりやすい病気も違いますし、治療法も異なるべきです。
しかしながら、日本の従来の医療・保健指導は、ほとんどが男性における治験・健診のデータをもとに、なされてきました。

例えば、高血圧の治療ガイドライン(指針)には、至適血圧は120mmHgと書いてあります。
しかし、これは若い男性にとっての数値であり、閉経前の女性の血圧は110mmHgを下回るくらいが適正です。

120mmHgもあったら、その年齢の女性としては高いといえます。
そうした現状に対し、「これではいけない」と思った私は、日本で初めて、女性専用の外来を立ち上げました。

男性と女性の健康に大きな違いをもたらしているのは、性ホルモンです。
女性の場合は、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが、体をあらゆる病気から守っています。

しかし、40歳を超えるころから、卵巣機能の衰えとともに、女性ホルモンが急激に減少していきます。
そして、エストロゲンの分泌がゼロになり、排卵がなくなって閉経を迎えるころになると、女性ホルモンの欠落によってさまざまな症状が現れます。

これがいわゆる更年期症状です。
ちなみに、男性の場合、男性ホルモンのアンドロゲンは、70歳くらいまで減少することはありません。

そのため、男性は女性のような更年期症状に悩むことが少ないのです。
女性ホルモンの低下や欠落は、内臓をコントロールする自律神経にも影響します。

卵巣機能が衰えると、ホルモン分泌をつかさどる、脳の視床下部が命令しても、女性ホルモンは出なくなります。
視床下部の性ホルモン中枢が異常をとらえると同時に、隣の自律神経中枢も混乱するのです。

女性ホルモンは、そのほかの脳機能もコントロールしています。
そのため、更年期には、心身にさまざまな症状が生じます。

のぼせ、ほてり、発汗、冷え、動悸 、不眠、憂うつ感、イライラ、思考力の低下、めまい、耳鳴りなど、個人差はあるものの、多岐にわたる症状を抱えることになるのです。

更年期の女性の高血圧は、男性の高血圧と異なる

女性の更年期には、血圧の変動も大きくなります。
女性の血圧は、エストロゲンの血管拡張作用によって、男性よりも低めに保たれています。

ところが、更年期になると、エストロゲンの欠落とともに血管が拡張しにくくなり、加えて自律神経も乱れるため、血圧が上がりやすくなるのです。
でも、この場合、原因となる病気があって血圧が上がっているわけではありません。

女性の体のサイクルを考えれば、血圧が上がっても、すぐに降圧剤を飲む必要はないのです。
更年期の女性患者さんに多いのが、血圧が突然200mmHg近くまで急上昇するケースです。

慌てて私のところに電話をしてきた患者さんには、「腹式呼吸をして、30分ほど休んでみて。
それでも下がらなかったら、また電話をください」といいます。

それで再度電話をかけてきた患者さんは、1人もいません。
しかし、その患者さんが、女性の血圧変動を知らない医師にかかったら、どうなるでしょう。

降圧剤を処方され、血圧が下がりすぎてふらふらになったり、血行不良による体調不良を抱え込んだりすることになります。
このように、更年期の女性の血圧上昇は、男性の高血圧とは異なるので、すぐに薬で治療するのは間違いです。

更年期高血圧の治療の流れ

では、どのような治療が適しているのでしょうか。
更年期高血圧の治療は、腎臓の病気などがないか調べたうえで、血圧の変動をコントロールすることがメインとなります。

生活指導やホルモン補充療法、漢方薬などを順次適用していきます。
降圧剤による薬物療法は、最終手段です。

更年期女性の高血圧に対する治療でいちばん重要なのは、生活指導です。
更年期の患者さんの多くは、ホルモンバランスが不安定になっていることに加え、子供の自立、親の介護、夫の定年退職など、環境が激変する中で、自律神経の失調状態が起こっているケースが少なくありません。

実際、患者さんの悩みを聞いてあげるだけで、高血圧の症状が緩和されることが多いのです。
そして、生活の中の問題点を見つけながら、減塩、減量、運動、節酒、禁煙などの生活指導をしていきます。

これで改善しなければ、エストロゲンの欠落を補うために、ホルモン補充療法をお勧めします。
また、漢方薬が功を奏することもあります。

更年期には、生命エネルギーである「気」の逆流が起こりやすくなります。
気逆がもたらす症状は、冷え、のぼせ、動悸などのほか、急な血圧の上昇もあります。

気逆を改善する加味逍遥散などの漢方薬で気を落ち着かせると、血圧が下がるのです。

降圧剤による治療は最終手段

こうした一連の治療を行っても血圧が下がらなければ、最後に薬物療法を行います。

以上のように、更年期女性の高血圧は、体の変化をよく見きわめたうえで治療をすべきです。
すぐに薬物療法を開始する必要はありません。

これから寒くなりますが、体を温めることも、更年期症状の緩和に重要です。
このことも念頭に置いて、ぜひ健やかにお過ごしください。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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