
水虫(足白癬)とは
かゆくないタイプもあり感染に注意
水虫は、白癬という真菌(カビ)が足の角質層に寄生して起こる皮膚の感染症です。
爪に寄生すると、爪白癬(爪水虫)になります。
白癬菌は、髪の毛や爪、皮膚の角質などにあるケラチンというたんぱく質を栄養源にして増殖するカビで、体のどこにでも寄生します。足以外の体部に寄生するものをタムシ、特に股に寄生するものをインキンタムシ、頭部に寄生するものをシラクモといいます。
ひと言で水虫といっても、ジュクジュクするもの、ガサガサになるもの、皮がむけるもの、かゆいもの、かゆくないものと、いろいろです。
その症状に応じて、3つのタイプに分かれます。
(1)趾間型

足の指と指の間にできる趾間型
足指の間に感染するもので、足の第3指と第4指の間によくできます。
赤く腫れて水疱ができ、皮がむけたり、ジュクジュクしてふやけたりします。
また、指の間がむずがゆくなります。
(2)小水疱型

水疱を伴う小水疱型。強烈なかゆみがある
足指の間や指の腹、足裏、足裏の縁などにできる水疱を伴う水虫です。
水疱が集まって赤くなることもあり、強烈なかゆみがあります。
(3)角質増殖型

足裏が乾燥して厚い角質に覆われ、かかとが硬くガサガサになる角質増殖型
足裏が乾燥して厚い角質に覆われたり、かかとが硬くガサガサになったりします。
皮がむけたり、ひび割れて痛みを伴ったりすることがありますが、かゆみはありません。
対策は「白癬菌をうつされないこと」
水虫は一般にかゆいと思われていますが、角質増殖型のようにかゆみのないものもあります。
かゆみを伴うものでも、かゆいのは菌に反応して炎症反応が働いているときだけで、菌に慣れて慢性的な水虫になると、かゆみはなくなります。
したがって、水虫に気付かなかったり、治ったと思って知らずに人にうつしてしまったりすることがあります。
白癬菌は、温度20℃以上、湿度60%以上の高温多湿の環境を好みます。
また、汗や汚れが残っているアルカリ性の皮膚も、白癬菌が繁殖しやすい環境です。
伝染力は弱く、成長も遅い菌ですが、丈夫で、人の体から離れても6ヵ月以上生き延びるといわれています。
ですから、いったん皮膚に寄生するとなかなか離れません。
水虫が治りにくいのは、そのためです。
また、白癬菌は皮膚からはがれ落ちた角質のなかでも生きていますから、素足で踏んだりすると菌が付着します。
公共施設のスリッパ、温泉やスポーツジムの床、バスマット、じゅうたん、たたみなど、どこででも感染の可能性があります。
よく、ブーツを履いていると水虫になると思っている女性がいますが、ブーツを履いているだけでは水虫になりません。
水虫は白癬菌による感染症ですから、うつされないことが大事です。
また、菌が付着しても洗えば落ちますから、毎日足を洗って清潔にしていれば、水虫を防げます。

水虫の予防と対処法
水虫は、うつさない、うつされないことが大事です。
対処のポイント
・不特定多数の人が集まって靴を脱いだり素足になったりするところでは、素足にならないこと。
・そういうところに行ったら、その日のうちに足をきれいに洗うようにする
水虫になったら、薬物治療を行います。
1度水虫になると治らないと思っている人もいますが、今は薬で根治できるようになりました。
抗真菌薬の外用薬とは
・白癬菌を殺菌し、増殖を防ぎます。
・薬のタイプは症状に合わせたクリームタイプ、軟膏タイプ、液体タイプ、パウダースプレータイプなどがあります
・ひび割れやジュクジュクした水虫なら、液体タイプよりクリームや軟膏のほうが使いやすいようです。
外用薬の塗布について
皮膚に浸透しやすいお風呂上がりをおすすめします。
きれいに洗ってよく水分を拭き取り、患部を中心に広めに塗布します。
塗布したあと、手に薬剤が残っていたら、石けんで手をしっかり洗ってください。
水虫の治療は、根気が必要です。
症状が治まっても、白癬菌の一部が生きていることもあります。
角質層が完全に入れ替わるまでの1〜2ヵ月以上は薬を続けてください。
角質増殖型や爪白癬(爪水虫)は、さらに長い期間の治療が必要です。
市販の水虫薬は効く?
スイッチOTC医薬品で治る
最近では、医療機関で出す薬と同じ成分の薬(スイッチOTC医薬品)が市販されるようになりました。
そういう薬なら、確かに水虫には効果があります。
しかし、その症状は本当に水虫でしょうか。
水虫に似た症状の病気は、ほかにもあります。
似た症状の異汗性湿疹(汗疱)に注意
例えば、異汗性湿疹(汗疱)という手のひらや足の裏に水ぶくれのできる皮膚の病気があります。かゆみを伴い、水虫に似ています。
軽ければハンドクリームで治りますが、ひどくなるとステロイド軟膏などの治療が必要です。
こうした病気にスイッチOTC医薬品を使うと、効かないどころか、かぶれなどの副作用を起こしてしまいます。
ですから市販薬を使う場合は、確かに水虫であるという診断を受けてからにしてください。

水ぶくれができて、水虫に症状が似ている異汗性湿疹(汗疱)
解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。

【好評】
『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア (フットケア外来の医師がすすめる「足のトラブル」の治し方) 』高山かおる(著)