
足は意外と乾燥しやすいところです。
足裏が乾燥すると、かかとや指先を中心に角質層が異常に厚くなります。
これを「角質肥厚(角化)」といいます。
この角化が進むと足裏はさらに乾燥しやすくなり、ひび割れやあかぎれといった皮膚の亀裂を生じやすくなります。
(1)乾燥
足は顔や手に比べて乾燥しやすい
皮膚の乾燥とは、皮膚の水分が不足している状態のことです。
空気が乾いていたり、エアコンやストーブなどの冷暖房がきいている部屋に長くいたりすると、皮膚は乾燥しやすくなります。
特に、足は血液やリンパ液の流れが滞りやすく、新陳代謝が悪いため、顔や手に比べると乾燥しやすいのです。
皮膚が乾燥すると、少しの刺激でもかゆみが出たり、角質のバリア機能が低下したりして、皮膚のトラブルが起こりやすくなります。かかとの角化も、その1つです。
(2)角化
角質層が厚くなり乾燥が進む

乾燥がひどく、かかとが角化した状態
足裏は全体重を支えるところですから、もともと足裏の角質層は厚くできています。
さらに、歩くときは通常かかとで着地しますから、かかとは地面から常に衝撃を受けています。
ましてや、女性はパンプスのような足を圧迫する靴を長時間履くことが多いので、足は刺激を受けやすく、足裏が角化しやすくなります。
さらに、そこに開張足や扁平足があると、姿勢や歩き方のバランスが崩れて、足裏の一部分に体重がかかり、角質層が厚くなります。
体重が増えただけで、かかとや足指の盛り上がった部分が角化した人もいました。
角質層が厚くなると、角質層でつくられる水分や脂分が全体に行き渡りにくくなり、さらに乾燥が進んで角質は厚くなります。その状態を放置すると、角化した部分がすじ状にひび割れたり、亀の甲羅模様のような割れ目が入ったりしてきます。
(3)亀裂
ひび割れをしてあかぎれを起こす

角化が進んで亀裂が入った状態
糖尿病の人は特に乾燥・角化に気を付ける
硬くなった鏡餅がひび割れやすいように、乾燥して硬くなったものに衝撃を加えると、ひびが入りやすくなります。かかとも同じです。
足裏の中で特に角化しやすいのはかかとですが、かかとが硬くなって厚く角化し、そこに歩くたびに衝撃が加われば、かかとはひび割れしやすくなります。それがさらに進むと、あかぎれを起こしてしまいます。
あかぎれになると深く亀裂が入り、亀裂した部分から赤い内部が見えたり、出血や炎症を起こしたりすることがあります。こうなると歩くたびに痛みがあり、改善も容易ではありません。
糖尿病の人は、亀裂が深くなったところから感染症を発症すると、足の潰瘍や壊疽を起こします。
そうなると最終的には足の切断にいたることもあり、取り返しがつきません。普段から、足の乾燥や角化を防ぐ手入れが必要です。
足の乾燥・角化・亀裂の予防と対策
予防の第一は乾燥を防ぐこと
まずは足の乾燥を防ぐことが第一です。乾燥の軽いうちから、皮膚を保護、保湿するために、クリームをたっぷり塗ります。
足が冷えやすい人は、血流をよくして温める作用のあるビタミンD配合のクリームをつけるといいでしょう。
角化症の治療は角質溶解剤(尿素・サリチル酸)の外用
角化症の治療は、角質溶解剤(尿素軟膏10〜20%、サリチル酸5〜10%)を外用します。
尿素軟膏は水分保持量を増加させたり、角質を軟らかくして角化した角質層を取り除いたりして、皮膚をなめらかにします。
サリチル酸にも、皮膚の角化を軟化させる作用があります。
ひび割れや亀裂がある場合は、それに加えて亜鉛華単軟膏、ハイドロコロイドなどの創傷被服剤を処方することもあります。
かかとの角質ケアには、角質用ヤスリで角質を削り取る方法と、角質軟化剤などを皮膚表面に塗って角質をはがす方法があります。
こうしたセルフケアは誤った方法ですると、かえって皮膚を傷つけてしまうので注意が必要です。

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解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。
1995年、山形大学医学部卒。
日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。
難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。
フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。
専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。