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【猫に癒される3つの理由】精神科医が見つけた癒しのメカニズム

【猫に癒される3つの理由】精神科医が見つけた癒しのメカニズム

猫から癒しを得ているとき、あなたはきっと、猫の存在をそのまま丸ごと無条件に受け入れ、猫の気持ちを想像、共有しているはずです。なにかを心から受け入れているとき、そこには、普段はなかなか感じることのない「穏やかな解放感」と「深い平安」がもたらされています。【解説】萩原優(イーハトーヴクリニック院長・医学博士)

解説者のプロフィール

萩原優(はぎわら・まさる)
●イーハトーヴクリニック
横浜市青葉区美しが丘 2-18-9ニューライフビル202
TEL 045-902-7240
http://ihatovo-clinic.com/

イーハトーヴクリニック院長。医学博士。
1945年、東京都生まれ。
広島大学医学部卒業後、聖マリアンナ医科大学の消化器外科に30年勤務。
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院外科部長、森の診療所院長などを経て、2007年より現職。聖マリアンナ医大客員教授。
米国催眠士協会インストラクター。
日本メンタルヘルス協会カウンセラー。

健康の土台は心の平安

近年の猫ブームの勢いは、とどまるところを知りません。
テレビや雑誌で猫特集を目にすることはしょっちゅう。
インターネットで、かわいい猫の写真や動画を楽しんでいるかたも多いと聞きます。

一般社団法人ペットフード協会(東京都)が毎年実施している「犬と猫の飼育数調査」では、昨年は猫の頭数が犬を上回りました。
調査開始からの二十余年で初めてだそうです。

動物とのふれあいが、心身へのさまざまな健康効果を生むことは、多くの研究で明らかになっています。
例えば、高血圧、うつ病、自閉症が改善したとの研究報告もあります。
動物を見たり触ったりすると、副交感神経(※)が優位になり、心身がリラックスして、こうした効果が得られるのでしょう。
※ 疲れた体を修復し、リラックスを促す神経。 正反対の働きをする交感神経とともに、心身の機能を維持・調節する

また、脳にオキシトシンが分泌される可能性にも注目が集まっています。
オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、ストレスを緩和して幸せな気分をもたらす作用がある神経伝達物質です。

私は、健康の土台は心の平安にあると考えます。
動物に、それをもたらす癒しの力があるのは確かでしょう。でも、なぜ今とりわけ猫なのか。 

この猫ブームは、精神科医の立場から見ても、非常に興味深いものがありますが、私なりに考えたことをお話しいたします。


猫への共感、憧れが癒しを導くのでは

猫が私たちを癒してくれるポイントとして、私は以下の3つの要素に注目しています。

1つは、猫の姿からの視覚的な刺激。
一般的に人は、丸いものを見ていると安心感を得るのですが、猫の顔も大きな目も、真ん丸です。
さらに、丸顔の中には両目と鼻を結ぶ逆三角形があります。
これは人間の赤ちゃんとも共通する特徴ですが、見る者の心を一瞬で和ませる、言わば「ハッピートライアングル」です。

すさんだ心も一瞬で和む!丸い輪郭と「ハッピートライアングル」

猫の顔の丸い形を見ると安心感が得られる。また目と鼻が逆三角形を描いているのも、心が和むポイント

2つ目は、猫の喉から聞こえる「ゴロゴロ音」による、聴覚的刺激です。
猫のゴロゴロ音の周波数(音が1秒間に起こす振動の回数)は20~50㎐。
この低周波音に、副交感神経を優位にしたり、自己治癒力を活性化したりする力があるとして、欧米を中心に治療への活用事例が増えています。
今後、ゴロゴロ音に関する研究が進むことに、私もおおいに期待します。

3つ目は、猫への感情移入や羨望による癒しです。
猫はやたらと人に媚びません。
気が向けば甘え、向かなければ距離を置く。
マイペースで自由、孤高とも言えるかもしれません。
そうした猫の生き方に対する共感、あるいは憧れが、不思議と、心を落ち着かせてくれるのではないでしょうか。

ところで、私は以前「タマちゃん」の追っかけをしていました。
多摩川流域に突然現れて話題になった、野生のアザラシです。

タマちゃんに気づかされた癒しのメカニズム

多忙な中、時間をやりくりして川辺に足繁く通った理由はただ1つ。
タマちゃんと同じ時間と空間を共有しているだけで、日々の疲労やストレスを忘れ、子どものように無邪気で純粋な気持ちになっているのを実感したからです。

いっしょにおっかけをしているかたには、やさしそうな、繊細そうな女性が多かったと記憶しています。
皆さん、タマちゃんを応援しながら、無意識のうちにタマちゃんに感情移入し、いろいろなことを想像されていたでしょう。
そうすることで、心の平安を取り戻していたのではないかと考えます。

猫が好きで、本やスマホで猫を眺めたり、猫を飼って実際に触れ合ったりしているかたも、そうではありませんか?

猫から癒しを得ているとき、あなたはきっと、猫の存在をそのまま丸ごと無条件に受け入れ、猫の気持ちを想像、共有しているはずです。

なにかを心から受け入れているとき、そこには、普段はなかなか感じることのない「穏やかな解放感」と「深い平安」がもたらされています。
だから猫が好きなかたは、いつも猫といっしょにいたくなるのです。

もちろん他のペットからも、ある程度は、そういった作用が得られるでしょう。
しかし、神秘的なまでに深い静寂をたたえた猫の目を見ていると、ほかのどんな動物よりも、強く感情移入を促されてしまいます。猫とは、精神世界のかなり遠いところまでつながれるように思えてなりません。

どんな表情の猫に感情を動かされ、癒しを得られるかは、そのときのあなたの心の状態しだいです。

深い静寂をたたえる猫の目を見ていると、猫を無条件に受け入れ、感情移入してしまう

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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