延髄と小脳が活性化!腰痛、便秘にも効く!
首が人間の急所であり、重要な部位であることは、皆さんご存じでしょう。
鍼灸の世界でも、首はツボや経絡(生命エネルギーである気の通り道)が密集する箇所として、重視されてきました。
今回は、私が治療に取り入れて効果を上げ、患者さんのセルフケアとしても人気の高い「首こすり」をご紹介しましょう。10円玉で、首の後ろをこするだけの簡単な方法です。
私は長年、患者さんの治療を行っています。腰が痛い人には腰痛のツボ、便秘の人には便通がよくなるツボを刺激して、症状改善を図ってきました。
ところが近年、ツボ刺激だけでは軽快しない患者さんがふえてきたのです。同時に、私はあることに気づきました。体調不良を訴えて来院する人は皆、体が冷えていて、呼吸が浅いのです。「免疫力が低い」「生命力が弱い」状態です。これでは、局所的に鍼を打ったり灸をすえたりしても、不調は取れません。
「どうしたものか」と悩んでいたとき、鍼灸師である息子がヒントをくれました。
息子は2歳のときに交通事故に遭い、左足にマヒが残っています。そんな彼が、「お父さん、首の後ろを金属でこすったら、足が軽くなって、動きがよくなったよ」というのです。
そこで、二人で解剖学の本を見て、どういうことなのか考察しました。
脳の下端にある延髄は、呼吸を調節し、体温を維持するという、生命活動を担っています。障害を受けると、生命の危機に陥る、重要な部位です。逆にいうと、延髄が活性化すれば、呼吸と体温の乱れが修正され、免疫力と生命力が向上することが予想されます。
延髄は、頸椎(背骨の首の部分)の中の脊髄とつながっています。つまり、首の後ろに位置するのです。
また、延髄の後方にある小脳は、体のバランスを保つ中枢です。息子の足の動きがよくなったのは、延髄と小脳が活性化したためではないか、という結論に達しました。
首こすり②のやり方

免疫力がアップ!夜間頻尿、精力に効いた!セキも解消
金属でこするという方法も、功を奏しました。「こする」という物理的な刺激とともに、金属を肌に接触させることで体内に発生する微弱電流が、体の奥に刺激を与えるからです。
金属が肌にふれると、金属が電子を放出してプラスの電気を帯び、皮膚表面はマイナスの電気が発生して、体内にはプラスの電気が起こります。こうして、体内でごく弱い電流が流れ、ツボや経絡、臓器に刺激を伝えるのです。
首の後ろを金属でこすると、延髄と小脳に刺激が伝わって活性化し、免疫力と生命力がアップして、痛みや不調が改善します。実際、首の後ろを刺激することで、長年悩んでいた症状から解放される患者さんが続出しています。
では、やり方を説明しましょう。
私が患者さんに施術するときは、専用の器具や機械を使いますが、セルフケアとして行う場合は、10円玉を用います。
10円玉を使うのには、理由があります。
まず、素材が銅を多く含む青銅(銅と錫の合金)であること。これは、微弱電流を起こすのに適しています。
また、肌にふれる部分(硬貨の側面)が滑らかなので、刺激がソフトです。さらに、10円玉は流通量が多いので、手もとにある確率が高いのもポイントです。
首こすりには、10円玉を3枚使います。10円玉は、よく洗って水分をふきましょう。10円玉を3枚重ねて、手に持ちます。3枚そろえて持っても、ずらして持ってもかまいません。
10円玉の側面を皮膚に垂直に当て、後頭部から首の後ろにかけて、「痛いけれど気持ちいい」程度の強さでこすります。少しずつ場所をずらしながら、上から下、下から上へ、20往復程度こすってください。これを、起床時と就寝前の1日2回行いましょう。それ以外に、適宜行ってもかまいません。
注意点として、頭痛のあるときや、皮膚に傷や炎症のあるときは、行わないでください。また、刺激後、肌に異常を感じた場合は、すぐにやめましょう。特に、金属アレルギーのあるかたは注意が必要です。
首こすりを行った患者さんのなかには、冷え症や夜間頻尿、長引くセキが改善した人や、性力がアップした人が、数多くいらっしゃいます。
解説者のプロフィール

留目昌明(とどめ・まさあき)
1948年、青森県生まれ。明治大学農学部、東京鍼灸柔整専門学校卒業。
治療と並行し、ミネラルが豊富な「薬になるリンゴ」を作る。
著書に『百姓として治療師として「体にいいこと」伝えたい』(かんき出版)がある。
●和楽堂医農塾
http://warakudo.net/