解説者のプロフィール

鳴海理恵(なるみ・りえ)
●気血免疫療法会VE&BI治療院
東京都豊島区目白3-14-18 ヒカリハイツ3F
TEL 03-3953-1337
http://vebia.net/
一般社団法人気血免疫療法会理事。「爪もみ」療法などで知られる福田稔医師(故人)の長女であり、食事療法研究家としても活動。成城大学文芸学部英文学科卒業。アメリカのクシインスティテュートにてマクロビオティクスを修得。その後、鍼灸・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。体の自然治癒力を引き出す治療で効果を上げている。
頭にたまった熱が病気や不調につながる
私の治療院では、東洋医学を取り入れた施術を、積極的に行っています。
病気や不調を考えるとき、東洋医学で重視されるのが「気」「血」「水」の巡りです。
●気……全身を巡り組織の働きを活発にするエネルギー。血や水の循環を先導する。当院では気を「自律神経などの神経が体に及ぼす、見えない作用」としても捉えている
●血……組織の栄養になる
●水……体に潤いをもたらす。皮膚や粘膜として体を守る
東洋医学では、気、血、水がじゅうぶんに、滞りなく全身を流れてこそ、健康を保てると考えます。
気、血、水が足りなかったり、流れが悪くなったりするから、病気や不調になるというわけです。
近年、患者さんに増えているのが気が滞って、不調になっているケース。どこで流れが悪くなっているかといえば、「頭」です。
これは、体より頭(脳)を使うことが増えたからでしょう。体を動かさず、延々と考え事をしたり、スマートフォンやパソコンを長時間使ったりしていると、頭に気がのぼります。そのうち、頭は気でいっぱいになり、気が渋滞します。
気は、血や水もいっしょに連れていきますから、頭には、血や水も滞ります。頭が、気、血、水でパンパンになっている状態です。
頭に気が渋滞すると、そこには熱がこもりますから、頭がカッカしたり、ボーッとしたりします。
頭に気や血がのぼるということは、他のところには、気や血が不足するということですから、手足やおなかは冷たくなります。
これがいわゆる「頭熱足寒」です。一般に、「頭寒足熱」が健康であることはよく知られています。それとは正反対の状態が、今、非常に増えています。
そして、頭熱足寒が原因で病気や不調になっているかたが、ほんとうに多いのです(下記)。
頭熱状態の人の特徴

頭熱を取るにはつむじをグリグリほぐす!
頭にのぼった気をおろし、頭熱を取ることが、健康になる第一歩です。
頭熱を取るのに、私がお勧めするのが「つむじほぐし」という方法です(やり方は下記)。
その名のとおり、つむじを手でグリグリほぐすだけの簡単な方法です。これだけで頭の緊張をうまく取り、頭に渋滞している気を、下におろすことができます。
つむじには、気を全身に巡らせるための、スイッチの役割があります。
しかし、頭に気が滞ると、つむじがキュッと閉じてしまい、全身に気が行き渡りません。そこで、握りこぶしをつむじに当て、閉じた蛇口を開くイメージで、反時計回りにグリグリと回しほぐします。
つむじが開いて、頭にのぼった気、血、水が下がり、再び全身を巡るようになるので、病気や不調が改善に向かいます。
治療院の患者さんを見ても、つむじをほぐし、頭熱を取ることで、病気が改善した例がたくさんあります。

つむじは、全身に気を巡らせるスイッチのような場所。つむじを刺激すれば、頭にのぼった気が全身を巡り始める
【症例】メニエール病とパニック障害がみるみる改善した
ある30代前半の女性は、パニック障害(※1)に悩んで来院されました。
お話をうかがうと、突然発作が起こり苦しくなると、「電車やバスはおろか、自転車にも乗れない」といいます。
さらに、耳鼻科ではメニエール病(※2)と診断されていて、めまいや耳鳴りにも苦しんでいました。
彼女の体を触ってみると、頭はもちろん、首や背中までがガチガチに硬くなっています。
彼女につむじほぐしをやってあげると、かなりの痛みを訴えました。それだけ、頭熱がたまっていたということです。
施術と並んで、つむじほぐしを毎日こまめに続けていると、彼女の症状はみるみる改善。2〜3週間で、パニック症状が現れなくなり、電車やバス、自転車にも自由に乗れるようになるまで回復しました。
当初は週に1回の施術が必要でしたが、その後は月に1回の施術でも問題なく過ごせるようになりました。
今では、メニエール病によるめまいや耳鳴りに悩まされる頻度も、大幅に減っています。頭熱を取ることが、さまざまな不調を改善に向かわせる、わかりやすい例です。
※1 突然、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、生活に支障が出ている状態
※2 ぐるぐる回るような回転性の激しいめまいに、耳鳴り、難聴、耳の詰まりなどを伴う症状
【症例】頭熱を解消すると血圧が正常値にさがった
別の40代の女性は、自然と4㎏の減量に成功。最大血圧が140〜170㎜Hg(最大血圧の正常値は140㎜Hg未満)と高めでしたが、正常値に落ち着くようになりました。
このかたも、当初は頭から背中がガチガチにこっており、頭を触ると「熱ッ!」という言葉が出るくらい、カッカした状態でした。つむじほぐしで、頭熱を解消したことで、大きな効果が得られたのです。
病気や不調の大もとをたどると、気・血・水の滞りに行き着くことが、少なくありません。
今、悩んでいる症状の改善策としてはもちろん、毎日たまりがちな頭熱をリセットする方法として、「頭を使い過ぎた」と思ったら、つむじほぐしをこまめに行ってください。
「反時計回り」がポイント!「つむじほぐし」のやり方

中指、人さし指の第二関節など硬いところをつむじに当てる

手の関節など硬いところをつむじに当てたら、反時計回りに10周、つむじをほぐすように回す