解説者のプロフィール

立花愛子(たちばな・あいこ)
●りゅうえい治療院
東京都三鷹市上連雀2-3-12 高橋ビル2F
0422-40-0222
http://ryueichiryoin.com/
りゅうえい治療院副院長。
日本大学卒業。東洋医学と栄養学を学び、鍼灸師免許および栄養士免許を取得。鍼灸治療とともに、東洋医学の薬膳を取り入れた栄養指導を行う。平成21年、管理栄養士国家資格取得。
大根が炎症をおさえハチミツで乾燥を防ぐ
寒さがいよいよやってきました。
この時季になると、インフルエンザやカゼによる発熱や、セキ、タン、鼻水といった、呼吸器系の症状に悩まされるかたが、多く見られます。
今回は、こうした諸症状を予防・改善するのに役立つ食材を、東洋医学の観点からご紹介し、管理栄養士として解説しましょう。
まずは、民間療法としてよく知られている、「大根アメ」です(作り方は下記を参照)。
大根アメは主に、セキやタン、のどの痛み、声がれなど、気管支の症状に効果があるとして、古くから用いられてきました。
漢方の考え方では、大根は体を冷やすとされ、抗炎症作用をもたらします。
つまり、カゼなどによって生じた炎症をおさえ、熱を冷ます効果が期待できるのです。
また、体力が落ちているときには胃の消化能力も低下しがちですが、大根には、食物の消化をよくする消化酵素が多く含まれます。
加えて、ビタミンCも豊富です。
これらの栄養素を、破壊することなく体に取り入れるには、加熱せず、生で摂取する必要があります。
その点でも、大根アメは、理にかなっているといえるのです。
また、ハチミツには、粘膜を潤す働きがあります。
のどや肺を乾燥から守るため、セキに有効です。
滋養強壮作用もあるため、消耗した体力の回復を、助けてくれるでしょう。
ちなみに、呼吸器系の症状を持つかたは、体調や体質によって、おおよそ三つのタイプに分けられます。
それぞれのタイプにより、大根アメに加えると症状改善になお効果的な、アレンジもお教えしましょう。
日常的に取り入れると体質改善にもつながる
タイプ① カゼをひき、明らかに、強い症状が出た場合
高熱を出し、体内では免疫とウイルスが闘っています。
こうした状態のかたは、大根アメのお湯割りに、発汗作用のあるショウガをプラスしましょう。
さらに、「葛根湯」など漢方薬の材料でもある、クズ粉を加えれば、解熱作用が高まります。
タイプ② タンはあまり出ないが、コンコンと乾いたセキが続く場合
体内の水分が不足し、生命エネルギーの低下が顕著です。
高齢者に多く見られます。
こうしたかたは、大根アメを滋養強壮作用のある黒ゴマといっしょに、ヨーグルトに混ぜて食べるのがお勧めです。
タイプ③ 鼻水や、タンが絡んだセキが出る場合
胸が、「ゼーゼー」「ゴロゴロ」と鳴ります。
体内の水分が過剰なため、むくみやすい体質でもあります。
こうしたかたには、利尿作用のあるリンゴがお勧め。
体を冷やさないよう、リンゴジュースを少し温めて、そこに大根アメを加えてください。
続いて、「イキ息食材」美味レシピでは、カゼ対策のお勧め食材として、
①レンコン、②カボチャ、③シソの、三つを紹介しています。
ほかにも、ニンジンや、少し手に入れにくいですが、ユリ根や白キクラゲも、セキやタンなどの症状が出るのを防いだり、和らげたりしてくれます。
呼吸器系が弱いかたは、こうした食材を、日常的に取り入れることも、体質改善の一助になります。
ぜひお試しください。

セキ止めやのどの痛みに効果的!大根アメの作り方

【材料】(2~3日で飲み切れる分量)
大根(輪切り)…厚さ3cm程度
ハチミツ…適宜

【作り方】
❶大根は皮をむき、水分を出しやすくするため、薄い短冊切りにする。

❷容器に入れ、ひたひたにかぶるまでハチミツを注ぐ。

❸容器にふたをして、2時間ほど待つと、水分が上がってくる。スプーンなどですくって、お湯割りにして飲む。のどのイガイガなどの不快症状には、薄めずにそのまま飲んだほうが効果的。
※冷蔵庫で保存。栄養成分が失われないうちに、2~3日で飲み切る。
※のどアメと同様、1日に取る目安は特になし。ただし、糖分なので、取りすぎには注意。
※残った大根は食べても可。酢やしょうゆを加えると、漬物のように食べられる。
イキ息食材①「レンコン」美味レシピ

レンコンは、カゼ症状の緩和に効果があるビタミンCが豊富。
ポリフェノール(色素成分)の一種であるタンニンには、炎症をおさえる働きがあります。
粘り成分は、気管の粘膜の、保護・修復に有効です。
ネバネバしたものは、滋養強壮作用が強いとされ、カゼなどで弱った体力の回復に役立ちます。
レンコンと白キクラゲの柿なます
甘すぎず、はし休めに最適! 上品な小鉢

カロリー:79kcal 塩分:0.5g(各1人分)
【材料】(2人分)
レンコン…100g、白キクラゲ…2個
甘ガキ…1/2個、ミツバの茎…少々(小口切り)
Ⓐ酢…大さじ1と1/2、みりん…小さじ1
砂糖…小さじ1、塩…小さじ1/6
【作り方】
❶レンコンは皮をむき、薄い輪切りにしたら、水洗いして、水気を切る。
❷白キクラゲは水で戻し、石づきを切り取り、一口大に切る。
❸鍋に湯を煮立て、②をゆで、ざるに上げる。レンコンを、色が透き通る程度にゆで、冷水に取り、手早く冷やし、しっかりと水気を切る。
❹カキはすりおろす。
❺Ⓐを混ぜ合わせて④を加えたもので、③を和える。器に盛り、ミツバの茎を散らす。
レンコンと牛ひき肉の黒コショウ炒め
黒コショウと牛肉が香り立ち、食欲をそそる!

カロリー:175kcal 塩分:0.6g(各1人分)
【材料】(2人分)
レンコン…100g、セリ…50g
牛ひき肉…100g、オリーブ油…大さじ1/2
塩…小さじ1/6、粗びき黒コショウ…少々
【作り方】
❶レンコンは皮をむき、2~3cm長さ、5~6mm幅に切り、水洗いし、水気を切る。
❷セリは4cm長さに切る。
❸フライパンにオリーブ油を中火で熱し、牛ひき肉を炒める。そぼろ状になったら、①を加えて炒め、塩・コショウを加えてから、②を加えてさらに炒め、器に盛る。
イキ息食材②「カボチャ」美味レシピ

カボチャに特に多く含まれるβカロテン(ビタミンA)にも、レンコンの粘り成分と同様に、弱った粘膜を保護・修復し、強化する作用があります。
各種の栄養素をバランスよく含むことから、滋養強壮に大変有用です。
東洋医学的には、"気"を補う作用があり、体を温める効果もあるとされます。
元気がなく、体力が落ちているとき、また、高齢のかたには最適の食材です。
カボチャとタラの酒粕煮
冬らしい組み合わせの妙!体が温まる香りが漂う

カロリー:143kcal 塩分:0.5g(各1人分)
【材料】(2人分)
カボチャ…150g、生タラ…100g(大1切れ)
酒粕…30g、湯…50
Ⓐ水…300、酒…大さじ2、コンブ…1枚(3×3cm)
塩…少々、ブロッコリー…少々(ゆでる)
【作り方】
❶カボチャは大きめの一口大に切る。
❷タラは一口大に切る。
❸酒粕は小さくちぎり、分量の湯に浸して戻す。
❹鍋にⒶを合わせ、20分おいて、コンブを戻す。中火にかけ、①を加える。カボチャがやわらかくなったら、②、③を加えて火を通し、塩で味を調える。器に盛り、ブロッコリーを添える。
カボチャのタラコ入りコロッケ
おかずになる、ほどよい塩気。何もつけずに召し上がれ

カロリー:152kcal 塩分:0.7g(各1人分)
【材料】(2人分)
カボチャ…100g(正味)、タラコ…20g
牛乳…小さじ2、塩・コショウ…各少々
小麦粉・溶き卵・パン粉・揚げ油…各適量
パセリ…少々
【作り方】
❶カボチャは皮をむき、一口大に切り、やわらかくゆでる。つぶして、牛乳、塩・コショウを混ぜる。
❷タラコは薄皮を取る。
❸①に②を加えて混ぜ、6等分し、丸める。小麦粉・溶き卵・パン粉を順につけ、170~180度に熱した揚げ油で、カラリと揚げる。
❹油を切って、器に盛り、パセリを添える。
イキ息食材③「シソ」美味レシピ

シソは、「薬味」といわれるように、多くの栄養素を豊富に含む、薬効の高い食材です。
カボチャ同様、βカロテン(ビタミンA)の含有量はトップクラス。
その香りが胃液の分泌を促し、胃腸の働きを活発にします。
東洋医学でいう気き(一種の生命エネルギー)を動かして、体内の余剰な水分を排出するため、タンや鼻水などの症状を改善してくれるでしょう。
シソとユリ根の鶏つくね
中に隠れたユリ根がホクホク!あっさり塩味で子供にも人気

カロリー:172kcal 塩分:0.6g(各1人分)
【材料】(2人分)
シソ…2束、ユリ根(生)…30g、鶏ひき肉…150g
Ⓐ塩…小さじ1/6、酒…小さじ1
ネギ…5cm(みじん切り)、ミニトマト…適宜
【作り方】
❶シソは細かく刻む。
❷ユリ根はやわらかく蒸す。
❸鶏ひき肉に、Ⓐと①を加え、よく練り混ぜ、②を加えてさらに混ぜる。
❹③を6等分し、握るようにして串くしにつける。
❺オーブントースターで7 〜8 分、こんがりと焼いて、火を通す。器に盛り、ミニトマトを添える。
シソの韓国風サラダ
いつもは名わき役。今日は主役だから、たっぷり食べられる!

カロリー:70kcal 塩分:0.7g(各1人分)
【材料】(2人分)
シソ…2束、サニーレタス…2枚
ニンジン…20g、ネギ…1/2 本
Ⓐゴマ油…大さじ1/2、しょうゆ…大さじ1/2
酢…大さじ1/2、レモン汁…小さじ1/2
砂糖…大さじ1/4、白いりゴマ…小さじ1
おろしニンニク・刻みトウガラシ…各少々
【作り方】
❶シソ、サニーレタスは一口大にちぎる。ニンジンはせん切り。ネギは縦半分に切り、芯しんを取り、斜め薄切りにする。合わせて冷水にさらし、パリッとさせたら、しっかり水気を切る。
❷Ⓐを混ぜ合わせ、①を加えて和え、器に盛る。